2018年05月22日

拙編 ゲーテ/エグモント あらすじ

 
 
 
ゲーテの「エグモント」を内垣啓一の訳で読む。
(ゲーテ全集4、潮出版社刊)
一瞥しただけでは甚だ難解な文章、戯曲ならではの勿体をつけた言い回し、そして史実を熟知したうえで初めて読み解くことのできる文脈の多さ...
それでも根気よく進む、否、行きつ戻りつするうちに少しずつ、おぼろげながら作品の全体像が見えてきた。
以下、自らの備忘のため各場ごとに要約を試みたものを記すこととする。
 
 
ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ
エグモント
五幕の悲劇
 
 
【主な登場人物】
 
§マルガリータ・パルマ公女 
(ネーデルラント総督、カール5世の娘、フェリペ2世の異母姉)
§ハインリヒ・エグモント伯爵 
(ネーデルラントの貴族)
§ウィレム・オラニエ伯爵 
(ネーデルラントの貴族、ドイツ出身)
§フェルディナンド・アルバレス公爵 
(スペインの貴族)
§フェルディナンド 
(その庶子)
§クレールヒェン 
(市民の娘、エグモントの恋人)
§ブラッケンブルク 
(市民の息子)
 
 
【時と場所】
 
1567年、スペイン統治下におけるネーデルラントの首都ブリュッセル。
 
 
【第1幕】
 
・第1場
弓鉄砲のゲームに興ずる市民たち。彼らは人望厚かった先代スペイン王カール5世や陽気で自由な精神の持ち主であるネーデルラント貴族エグモント伯爵らを称えて盃を交わしながら政治談義に花を咲かせている。
 
・第2場
マルガリータ総督の宮殿。総督は着任以来節度と寛容をもってネーデルラントの統治にあたっていたが、激化の一途をたどるカルヴァン派勢力の蜂起への対応に苦慮している。彼女を総督に任命した異母弟・スペイン王フェリペ2世は異端不寛容主義者であった。
 
・第3場
ブリュッセルの市民、クレールヒェンとその母親の暮らす住居。彼女はしばしばお忍びで姿を見せるエグモントを崇拝し、熱烈に愛している。
クレールヒェンに強い愛慕の念を寄せる誠実な青年ブラッケンブルクに対し、クレールヒェンは時に優しく接しつつも彼の気持ちを受け入れることはない...苦悩するブラッケンブルク。
 
 
【第2幕】
 
・第1場
ブリュッセルの広場。市民たちは街で起きている暴動の噂について話していたが、ふとしたことから口論、そして小競り合いとなる。
そこへエグモントが従者を引き連れて登場、騒ぎに割って入りそれを鎮める。彼は市民たちに援助を約束し、暴力的な偶像破壊運動に対し動揺しないよう呼びかける。
 
・第2場
エグモントの邸。彼とともにマルガリータ総督との会談に臨んでいたオラニエ公ウィレムが訪れる。フェリペ2世によるネーデルラントへのさらなる圧政を予感し、一時的にこの地を離れ武力を蓄えつつスペインとの戦いに備えようと提案するオラニエ公。
それに対しエグモントは、国王への反逆こそがネーデルラント弾圧の口実となってしまう、ゆえに自重すべきと主張する。オラニエ公は説得を諦め邸を後にする。
 
 
【第3幕】
 
・第1場
マルガリータ総督の宮殿。総督はフェリペ2世からの手紙の内容を秘書マキャベルリに伝える。マルガリータの穏健な姿勢を失政と見なしたフェリペ2世はアルバレス公爵およびスペイン軍をネーデルラントへ派遣したのだった。マルガリータは総督の座を退くことを決意する。
 
・第2場
クレールヒェンの住居。彼女とその母親がブラッケンブルクについて話している。「やがて時期がくれば...」と、娘と青年の結婚を望む母親。エグモントのことしか考えられないと訴えるクレールヒェン。
そこへエグモントが現れる...ほどなくして母親は退場、二人の愛の会話が続く。
「世間の人々の知る大将軍は堅苦しく冷淡なエグモントだ...でも、ここにいるのは平穏で、開けっぴろげで、しあわせな...これが君のエグモントだよ!」
「この世にもうこれ以上の喜びはないわ!」
 
 
【第4幕】
 
・第1場
街頭にて。市民たちがひそひそと話をしている。マルガリータ総督はネーデルラントを去り、代わって着任したアルバレス公爵はさっそく集会や政府批判を禁ずる政令を公布し、巡察の衛兵を街なかに置いたという。
 
・第2場
アルバレス公爵邸。公爵は家臣たちにエグモントの秘書らの逮捕と回廊の封鎖を命じ、息子フェルディナンドには召喚したエグモントを拘留する旨の計画を告げる。
エグモントがやってくる。彼はアルバレスに対し、ネーデルラント人を無条件に屈従させ古来からの権利を剥奪するような政策はスペイン国王への忠誠をもたらさないと説くが、公爵は聞く耳を持たない。さらに「国王は誤った道へ踏み出し始めている」と述べたことにより、エグモントは逮捕される。
 
 
【第5幕】
 
・第1場
夕刻の街頭。愛するエグモントを救い出すため、クレールヒェンは市民たちに武器を手に取って集まるように呼びかけている。しかし彼らは当局による締め付けを恐れ隠れてしまう。一緒にいたブラッケンブルクに説得され、クレールヒェンは失意のうちに帰路につく。
 
・第2場
牢獄。エグモントの独白。
昔からの友!つねに忠実な眠りよ、お前も私を見捨てるのか〜
〜おお、不安よ!時を待たずして人を死に追い込もうとする不安よ、放っておいてくれ!一体いつからエグモントはひとりぼっちに、この世界でこんなにも孤独になってしまったのだ?〜
〜よし、彼らが何千人と集まり、私のところへやって来て力を貸してくれるのだ。彼らの敬虔な願いはたちまちに天へと届き、奇蹟を起こしたまえと請い願う〜
 
・第3場
クレールヒェンの家。彼女はランプを窓際に置きブラッケンブルクの到着を待っている。そこへ戻ってきた彼によって中央広場でエグモントの処刑の準備が進められていることを知らされたクレールヒェンは絶望、毒薬の入った小瓶を取り出す。思いとどまるように、そうでなければ一緒に死なせてくれというブラッケンブルクの懇願はもはや彼女の耳には入らない。一人で半量の毒をあおり、ブラッケンブルクに家を出るよう促し、彼女自身は小部屋へと去ってゆく。最後も結局置き去りにされたブラッケンブルク。
「この地上にもうぼくの足場はない。そして地獄も天国もひとしい苦痛を与えるのだ」
 
・第4場
牢獄の中。アルバレスの家臣がエグモントに判決結果を告げる。「大逆罪により民衆の面前において斬首刑に処す」
しばらく物思いに沈んでいたエグモントはそこに公爵の庶子フェルディナンドの姿を認める。幼い頃からエグモントが尊敬と憧憬の対象であったと嘆き悲しむフェルディナンドにエグモントは言葉をかけ、残してゆく彼の部下たち、そして愛するクレールヒェンを託す。
苦悩から解放されまどろむエグモント...そこへクレールヒェンの顔立ちをした女神が姿を見せる。女神はエグモントの死がネーデルラントに自由を与えるだろうと告げ、彼に月桂樹の花冠を授ける...
エグモントは目を覚ます。太鼓の音が近づいてくる。
「おれは自由のために死ぬのだ〜自分をいま受難のうちに犠牲とするのだ」
エグモントは戸口に向かって歩いてゆく。
 
(完)
posted by 小澤和也 at 01:37| Comment(0) | 音楽雑記帳

2018年05月08日

演奏会のごあんない

 
これから出演予定のコンサートのごあんないです。
 
 
§東京農工大学グリークラブ
§第38回演奏会
 
2018年8月12日(日) 15時開演
府中市市民活動センタープラッツ バルトホール
(京王線府中駅下車すぐ)
入場無料、全席自由

多田武彦/木下杢太郎
男声合唱組曲「木下杢太郎の詩から」
上田真樹/谷川俊太郎
男声合唱組曲「そのあと」
大田桜子編
「アカペラコーラスセレクション〜花は咲く」より

小澤和也 (指揮)
金主安、平野菜奈美 (学生指揮者)
 
 
§湘南アマデウス合唱団・合奏団
§第20回定期演奏会
 
藤沢市民会館 大ホール
モーツァルト/戴冠ミサK.317
ハイドン/交響曲第82番ハ長調「熊」
ベートーヴェン/劇音楽「エグモント」序曲
 
堀部隆二、小澤和也(指揮)
 
4年ぶりの客演です。
私はベートーヴェンとハイドンを指揮します。
 
みなさま、どうぞおはこびください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 22:03| Comment(0) | 演奏会情報

2018年05月04日

多田武彦『木下杢太郎の詩から』の詩たち〈2〉

 
 
こほろぎ
 
こほろこほろと鳴く虫の
秋の夜のさびしさよ。
日ごろわすれし愁(うれひ)さへ
思ひ出さるるはかなさに
袋戸棚かきさがし、
箱の塵はらひ落して、
棹もついて見たれども、
あはれ思へば、隣の人もきくやらむ、
つたなき音は立てじとて、その儘におく。
月はいよいよ冱(さ)えわたり
悲みいとど加はんぬ。
昼はかくれて夜は鳴く
蟋蟀(こほろぎ)の虫のあはれさよ、
しばしとぎれてまた低く
こほろこほろと夜もすがら。
 
 
【第一書房版『木下杢太カ詩集』(昭和5年刊) より引用。原文においてはほぼすべての漢字にルビが振られているが、ここではその大半を省略。また旧漢字は現行のものに改めた】
 
・袋戸棚...床の間、書院などの脇の上部に設けた戸棚。
・棹...三味線。
・いとど...いよいよ。ますます。さらにいっそう。
 
初出は明治43年12月『昴』。
「竹枝集」の総題のもとに別の詩とともに発表されている。
このときの署名は彼の別号である「きしのあかしや」。
 
明るく活気に満ちた前掲の作「両国」から一転、静かな秋の夜のおもむきを歌った哀愁漂う詩である。
全15行のうちの大半が 7+5、またはそれに近い言葉のリズムを持っているが、その単調な繰り返しがしっとりとした “重さ” を醸しているように思える。
虫の音を聞きながらふと思い立って三味線を手に取る...
何とも風雅な趣味、時の流れである。
(でもあまり上手ではなかったのかしら)
 
詩の味わいからは少し離れるが...
「冱える」という字を今回初めて知った。
我々がふだんよく目にする「冴」は「冱」の俗字であるとのこと。
また「となり」という字も「隣」ではなく「鄰」が正字なのだそうだ。
 
漢字の世界も奥が深い。
 
 
(つづく)
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 14:07| Comment(0) | 音楽雑記帳

2018年04月27日

今月の #ダバダー その4

 
 
今月も引き続き、飲んだ珈琲についてのメモを。
ボキャブラリーに乏しいので、書いているうちにどれも同じような表現になってしまい結局区別がつかない...となりそうな気もするが。
(これまで同様、星の数はあくまで主観的かつ気まぐれな指標である)
 
 
【パナマ/ドンパチ農園 ティピカ】
パナマ西部、コスタリカとの国境に近いボケテ (Boquete) 渓谷のカジェホンセコ地区にある農園。
ドンパチとは、創業者の愛称ドン・フランシスコの短縮形なのだとか。
 
封を開けた瞬間に漂う柔らかく心地良い香りに魅了される。
味は思いのほかやや強め...苦みと甘みとが同時に到達。
木の実を思わせるような独特の後味。
★★★★☆
 
 
【ブラジル/シティオ・ド・ヴァルディール】
Sitio do Valdir、直訳すると「ヴァルディールさんの農園」。
調べたのだがほとんど分からなかった。
それらしき場所がミナスジェライス州レゼンデコスタという所にあるらしい。
(地図上でRJ=リオデジャネイロ州、その北のMGがミナスジェライスのようだ)
 
舌の上に広がるナッツのような香ばしさとコク、そのあとにほんのりと甘みも感じられる...すっきりとした味。
(はじめ、いつものやり方で淹れたらどことなくボンヤリとした味になってしまった。そこで豆を10→12gに増やし、湯温も普段より2℃上げて再度試したところ劇的に美味しくなったのだった)
★★★☆☆
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 22:25| Comment(0) | 日記

2018年04月21日

ペーテル・ブノワ『盛儀のミサ』から10年

 
今年の4月20日は
僕にとっての記念日である。
 
 
10年前のこの日、我がペーテル・ブノワの “Hoogmis” (盛儀のミサ) 日本初演が行われた。
 
2008年4月20日(日) 長岡市立劇場大ホール
テノール:小原啓楼
合唱:長岡市民合唱団、法政大学アカデミーOB合唱団
管弦楽:東京シティフィル
指揮:船橋洋介
 
僕は合唱団トレーナーおよび副指揮者としてこの公演に携わった。
 
 
この作品との出会いが、僕がペーテル・ブノワという作曲家を知るきっかけであった。
以来、彼の生涯そして音楽を究めることが僕にとってのライフワークとなっている。
 
 
この”Hoogmis”、本国ベルギー以外ではほとんど知られていない。 
そんな ”秘曲“ の楽譜を入手するにあたっては、合唱団メンバーの並々ならぬ努力があった。
 
ともかくアントウェルペンからスコアが届く。
しかし合唱譜 (ヴォーカルスコア) は無い。
無ければ作るしかない。
「では私が作りましょう」
何かに導かれるように手を挙げた。
 
 
気の遠くなるような作業。
だが今となって思えば...
なんと楽しく、幸福な時間であったことだろう。
 
 
ヤン・デウィルデさん。
ペーテル・ブノワが設立した王立音楽院の音楽資料館長。
(楽譜を探していた合唱団メンバーが最終的にたどり着いたのがヤンさんだった)
“Hoogmis” 日本初演にあたって合唱団が彼をアントウェルペンより招聘、リハーサルから公演まで立ち会っていただいたのだった。
 
...思い出は尽きない。
 
 
ペーテル・ブノワの音楽を
日本にもっと響かせたい!
これが僕の、これからの音楽人生における目標である。
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 01:56| Comment(0) | 日記