§シューマン/交響曲第4番
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリンフィル('53年録音)
これはあまりにも有名な指揮者による有名な演奏なので、挙げるのをやや躊躇ったのだけれど…
やはり「好きなモノは好き」ということで。
音楽は「再現芸術」である、とよく言われる。
以前、ある人の言葉として
「作曲が "創造" 芸術だとすれば、演奏は "追創造" である」
といった意味合いの文章を本で読んだ。
単なる「楽譜の機械的再現」では決してないのだ、と…
その時は、改めて「目から鱗」の思いであった。
フルトヴェングラーのこのシューマンは、まさに「追創造」そのものだと思う。
これは僕の勝手な想像だが、おそらく作曲家が考えた以上に暗く、激しく、そして甘美な演奏がここに繰り広げられているように感じる。
このうえなくドラマティック、かつチャーミングなシューマンだ。
冒頭、序奏から主部へ流れ込む際のうねるような弦楽器。
憧れをもって、あるいは救いを求めるかのようにこの楽章が力強く終わると…
次に待っているのはオーボエとチェロの静かな、涙の無い悲しみ…その後は独奏ヴァイオリンによる甘い慰め。
第三→第四楽章のブリッヂではトロンボーン、ホルン、そしてトランペットが天からのお告げのように響き渡る…
一人の指揮者が、自身の透徹した音楽的意図をオーケストラに余すところ無く伝える。
オーケストラは一体となって、最大限の力をもってそれに応えていく。
僕にとっての理想であり、究極の目標なのである。
追記)
このレコードはフルトヴェングラーの、さほど多くないスタジオ録音であるが、中断なしの通し演奏、一切の切り貼り編集なしということだ。