2010年04月02日

ブノワ(10):荘厳ミサ[4]

〜Hoogmis(荘厳ミサ)のつづき〜

[クレード(つづき)]
Matig(中庸の速さで) ニ長調 4/2拍子

第三の部分「三日目によみがえり」は全合唱と管弦楽のユニゾンで晴れやかに始まる。
その表情には一点の迷いも苦しみも無いかのようだ。
「その王国に終わりはありません」の部分では、小合唱に「十字架音型」が幾度となく現れる。
これは「シ-ソ-シ♭-ラ」「ラ♭-ファ-ソ-ミ」のようにジグザグに動く音型のことであり、多くの作曲家によって宗教曲などで象徴的に使用されているものだ。
これと並行して、大合唱はオクターヴ跳躍で「生きる者と死者は裁かれる」と叫ぶ。
全管弦楽による二つの力強い和音が響き、第四の部分へ進む。


Matig snel(程よく快速に) ニ長調 3/2拍子

「主なる聖霊を」で始まる第四の部分は、様々な素材やモティーフが縦横に組み合わされた巨大な音の建造物である。

まず、それらの素材を列挙する。

・フーガ主題(これを【A】とする)
「ドーー|ーレド|シドレ|ミーー|ーファ#ミ|レ#ミファ#|ソ〜」
これは言うまでもなく、第一の部分に出てきた「じわりじわりと高みへ昇る音型」の変形である。
・分散和音+上行音型のモティーフ【B】
主に弦楽器によって奏されるが、合唱でも歌われる。
・【A】から派生した新しい音型【C】
「ラーー|ソ#ラシ|ドーー|シドレ|ミーー|レ#ミファ#|ソ〜」
と、これも次第に上昇してゆく音型である。
・十字架音型【D】
「・・ド|シソシ♭|ラファラ♭|ソミソ|ファラ♭ソ|ド〜」

はじめに主題【A】が大合唱にて、各声部ごとに(計4回)提示・応答される。
次いで【B】が現れ、6回にわたって調性的に発展していく。
再度【A】がイ長調、ニ長調で歌われ、音楽はいったん解決へと向かうが、偽終止(ニ長調で終わらずにロ短調に転ずる)によってさらなる展開へと進む。

次の【C】は調性的には不安定で、ロ短調、イ長調を経てさらにハ→変ホ→変ト長調と目まぐるしく移ってゆき、最後は変ハ短調という滅多にみられない調に落ち着く。
これが異名同音的に扱われ、ロ短調で三たび【A】が歌われた後、【D】がロ長調で現れる。
この【D】は例の「十字架音型」の後ろに主題【A】(「ドレド|シドレ|ミ〜」)が加えられたもので、信仰への揺るぎない確信を表している。
音楽の圧倒的な「力」を感じる部分だ。

再び【B】による展開、主題【A】の四たびの登場(ト長調→ニ長調)を経て、【D】がいよいよ満を持して主調(ニ長調)での再現となる。
そして、a音の保続低音の上でテンポを増し、「死者の復活と来世の命を待ち望む」と大小合唱が一体となって歌い切ると、そこにはようやく頂上が…
Langzamer(よりゆっくりと)、さらにはBreed(幅広く)の大団円で「アーメン」が三唱され、この長大なクレードは幕を閉じる。


音楽を文章で表すことの難しさ、そして虚しさ…
それでも、敢えて書いてみた。
この「クレード」は正に桁外れのスケールである。
稽古中、特にこのフーガ部は「終わりそうで終わらない」「(スコアを)めくってもめくっても終わらない…」
そんな印象だったことを書きながら思い出した。

(つづく)
posted by 小澤和也 at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽雑記帳