2010年04月11日

ブノワ(12):荘厳ミサ[6]

〜Hoogmis(荘厳ミサ)のつづき〜

[アニュス・デイ]
Gaande(アンダンテ) ニ短調 3/4拍子

いよいよ終章だ。
このアニュス・デイにおける響き・曲想は、キリエのそれに還って来たような印象を僕は持つ。
(ニ短調、3拍子、そして半音階を多様したうねるような旋律線…)
構成は明快で、三部形式の後に独立した終結部が続く形をとっている。

冒頭、大小合唱の掛け合いにより「神の子羊よ」と三回、フェルマータによりフレーズを区切られながら劇的に歌われる。
その三回目で巧みな転調を見せ、次いで現れる主部主題が(属調である)イ短調で始められる点がややユニークだ。
この主題、
「ミドソ#|シーラ|ソーファ|ミー〜」
は小合唱のみで提示され、大合唱の男声のみが「憐れみたまえ」とpppで呟く。
続いて、全合唱により新しい悲壮なメロディが歌われる。
ヴァイオリンとヴィオラは一貫して分散和音を奏で、低弦は付点リズムとトリルによるバロック的な音型でこれらを支える。
イ→ホ→ロ→嬰ヘ短調と激しく転調を重ね、イ短調に戻り最初の楽段を終える。

ブリッヂを経てヘ長調に転ずると、ここからが中間部である。
まず、テノール独唱により美しい歌謡的主題が歌われる。
スコア上ではこの旋律は小合唱パートに書かれている(Soloと記されている)が、ラハバリ盤では独唱者が受けもっている。
(一昨年の日本初演でも同様であった。)
ドラマティックで情感豊かなメロディは、ベネディクトゥスと同様我々に強い印象を与える。
短い経過部を経たのちに主題がやや短縮された形で繰り返され、そのまま第一楽段の再現へと続いてゆく。
ここでは、主部主題が本来のニ短調で歌われ、聴く者に安定感と回帰感をもたらすのだ。
型通りの再現の後、ブリッヂを経て、

Tamelijk licht (かなり明るく) ニ長調 2/2拍子
の終結部へ入る。
ここで雰囲気は一変し、男声四部合唱が「我らに平和を与えたまえ」と終結主題を歌う。
すると続いて小合唱による柔和な旋律が管弦楽を伴って応える。
短い間奏の後、不意に変ロ長調に転じ(グローリアでも同様の転調があったのを想起させる)、男声の主題、そして小合唱の応答が繰り返される。
再び間奏を経て、ニ長調により三たび主題が響くがこれは完結せず、小合唱との神秘的なpp応唱となる。
全休止の後、全合唱にてppからfffへ至る無限のクレシェンドの弧が描かれ、「平和を」と歌い切る。
そして、木管楽器によるppのコードが消え、ミサ曲の幕は静かな感動をもって閉じられる。

(完)
posted by 小澤和也 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽雑記帳