2010年04月22日

瀧廉太郎の「四季」

瀧廉太郎(1879-1903)作曲
組歌「四季」

明治33(1900)年出版。
彼自身の筆による序文には、学校唱歌などよりも芸術的に高度な、また西洋歌曲に日本語の歌詞を当て嵌めただけのものでもない、詞と音楽が高い次元で融合した歌曲を目指した、とある。
またこの組歌は、日本で作曲された最初の合唱曲であり、この作曲家の傑作の一つであるとされる。
「組歌」とされているが、後述のように4曲すべて演奏形態(編成)が異なっているのも特徴であろう。


「花」…作歌 武島又次郎

有名な「春のうらゝの隅田川…」で始まる、二部合唱とピアノのための作品である。
歌詞は3番まであり、それぞれの旋律は素材としては同じものであるが、巧みに変形を施され、単なる繰り返しに陥ることはない。
Allegro moderato、2/4拍子。
歌集などでよく見かける楽譜ではト長調になっていることが多いが、全集版では長二度高いイ長調で書かれている。
また、原稿では「花盛り」というタイトルだったそうである。


「納涼」…作歌 東くめ

夏にちなんだ独唱歌曲である。
詩は6行+6行の構成だが、瀧の音楽はA-B-Aの三部形式をとるため、4行×3部分に分けられている。
(2行毎のまとまりを持って書かれているため、あまり違和感は無い)
Allegretto grazioso、6/8拍子。
第一部分はイ長調、軽快なピアノの右手のリズムに乗って、
「ひるまのあつさの なごり見せて/ほのほぞもへたつ ゆふべの雲に/〜」
と歌われる。
第二部分(中間部)はイ短調に転じ、速度もUn poco lento となるが、旋律は第一部分のそれから派生したものである。
「やけたるまさご路 いつかひえて/しほかぜ涼しく 渡る磯を/〜」
伴奏音形もよりレガート的となり、前段との対比を見せる。
最後は属和音上に終わり、それが解決しつつそのまま第三部分に入る。
第三部分は概ね第一部分の再現であるが、調性的に若干の変更があるとともにダイナミクスにも変化を持たせて、完結感を明瞭に出している。
「すゞみに来しかひ ありそ海の/波にも戯れ 月にうたひ/〜」
この曲も、原題は「海辺の納涼」だったとのこと。


「月」…作歌 瀧廉太郎

Andantino、6/8拍子、ハ短調、無伴奏混声四部合唱。
秋のもの憂い感情を歌った作品である。
ここでは詩をすべて掲げる。

 ひかりはいつも かはらぬものを
 ことさらあきの 月のかげは
 などか人に ものを思はする
 などかひとに ものを思はする
 あゝなくむしも おなじこゝろか
 あゝなく虫も おなじこゝろか
 こえのかなしき

3&4行目、5&6行目は実質的に同じ言葉であり、音楽も1&2、3&4、5&6行で各8小節のまとまった楽節を持つ。
そして最終行「こえのかなしき」だけは独立して扱われ、2小節の短いフレーズとなる。
そして、最後の音は第三音が半音上げられ、ハ長調の和音となってこの曲を結ぶ。
瀧が目指した「詩と音楽の一致」の効果をもっとも強く感じる箇所のように僕には思える。
なお、この曲はのちに山田耕筰が独唱曲に編曲している。
(タイトルも「秋の月」と変えられている)


「雪」…作歌 中村秋香

Andante、4/4拍子、変ホ長調、混声四部合唱。
この曲の最大の特徴は、伴奏楽器としてピアノと共にオルガンが用いられている点であろう。
2小節の前奏は、モーツァルトの珠玉のモテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」そっくりである。
また、この詩の終わり二行は
「あはれ神の仕業ぞ/神の仕業ぞ あやしき」
であり、両者の深い関連を感じさせる。
(同年、瀧が教会で洗礼を受けていることも忘れてはならないだろう)
旋律と和声は賛美歌のように穏やかに流れてゆく。
オルガンの響きも実に効果的である。
中盤、バス→テノール→アルト→ソプラノの順に単独で旋律を担う。
フェルマータの後、全合唱の最強音で前掲の詩が歌われ、伴奏ピアノの力強い低音のトレモロで曲を閉じるのである。


全4曲で10分足らずの小品であるが、実に味わい深い名曲だ。
posted by 小澤和也 at 12:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記