2010年06月13日

私の愛聴盤(10)

§ベートーヴェン/交響曲全集
 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン('75-'80年録音)


僕の知る限り、最もストイックで真摯なベートーヴェン演奏のひとつである。
一切の虚飾を排し、ベートーヴェンのスコアそのものをひたすら音として刻み付けていくようなひたむきな音楽。
セル盤、ヴァント盤なども同じ指向のアプローチだが、オケのサウンドの魅力という点でこのブロムシュテット盤が僕の一番のお気に入りだ。


中高生の頃、FMやレコードで最も好んで聴いていたのがベートーヴェンの交響曲であった。
友人の家に全集のレコードがあり、借りてきてカセットにダビングもした。
「僕も全集盤が欲しい!」
当時、カラヤンやベーム、バーンスタインなどのセットはどれも一万数千円…子供には到底手が出ない。
そんなときに見つけたのがこの演奏〜たしか8枚組で10000円だったと思う。
(よし、これならば…)
高校の部活の帰り、横浜のレコード店でドキドキしながら買い求め、箱を抱えながら帰った記憶がある。
もう嬉しくて、しばらくこればかり聴いていたものだ。


エロイカや第5、第9など、一般にはもっとドラマティックな、起伏の豊かな演奏が好まれるのだと思う。
でも、ブロムシュテットのこの録音を聴くと、ベートーヴェンがいかに堅牢な、それでいて美しいプロポーションの音楽を書いたかがよく解るのだ。
ベートーヴェンの音楽が普遍性を持っているように、この演奏は何度聴いても飽きない。
posted by 小澤和也 at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛聴盤