2010年10月11日

私の愛聴盤(16)

§ブルックナー/交響曲第8番
 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーンフィル
 ('84年録音)


先日「第5」を取り上げたばかりなのだが、ふと思い立って今回もブルックナーである。
理由はいたってシンプル…
今日(10月11日)がブルックナーの命日だからだ。(1896年没)


「第8」にはちょっとした思い出がある。
初めてライヴで聴いたのは20年以上前…
若杉弘指揮の都響だったと思う。
この日、第3楽章の途中で地震があり、客席が少しざわついたのだ。
それでも、演奏は途切れることなく続けられ(楽団員も指揮者も完全に音楽に集中しているように見えた)、やがてその空気が会場中に伝播して素晴らしい演奏になったのである。
もちろん目には見えないが、ブルックナーの音楽が客席を落ち着かせ、聴衆の想いが演奏を後押ししたように思えてならなかった。


〜そんなわけで僕の大好きなこの曲、
数多あるCDもそれぞれに良さがあって迷うのだが、最もよく聴くのがこのジュリーニ盤だ。
テンポは全体にやや遅めである。
オーケストラ(特に弦楽器)に柔らかく、そして長めの音を要求しているためレガートの箇所はもちろん、そうでない部分も幅広くゆったりと流れるような音楽の運びとなるのだ。
(もっと男性的な表現が欲しい瞬間もあるが…これがジュリーニ流なのだろう)


それでも音楽が恣意的に聞こえないのは、この指揮者の楽曲への深い理解と愛情があるからだと思う。
そう思える所はたくさんあるが、中でも僕がいちばん痺れてしまうのが…
フィナーレの終わり近く、
第1楽章の主要主題が全合奏のffでドラマティックな回帰を遂げた後、
それを受けてヴァイオリンが高音でしっとりと奏でるメロディだ。
ここでジュリーニはさりげなくテンポを落とす。
そして、目の前にいる人をこのうえなく優しい手つきですっと抱き寄せるような、そんな柔らかさをもってヴァイオリンを歌わせる。
真に心からの「音楽への愛」なのだ。


ウィーンフィルの美音、そして絶妙のアンサンブルもこの演奏にさらなる彩りを添えている。
posted by 小澤和也 at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛聴盤