2010年12月31日
大晦日に寄せて
2010年も残すところ数十分。
今年も様々な出会いと経験があった。
筑波山ゆかりの新作オペラ「小町百年の恋」水戸公演。
瀧廉太郎の組歌「四季」への取り組み。
アダチ歌劇団&アンサンブル・モーイとの「メリーウィドウ」も楽しかったな。
我がライフワークであるペーテル・ブノワ研究…充実した一年であった。
オランダ語学習は、まだまだこれから。
そして…この夏始めたTwitter。
もしかすると、これが今年最大の「出会い」かも知れない。
ほんの数ヶ月の間に、いろいろな分野の方々との交流を持つことができた。
これらすべてのことに、心からの感謝を。
そして、このBlogをご覧の皆さまにも…ありがとうございます。
皆さま、どうぞ佳いお年をお迎えください。
これからも「音楽ノート」をよろしくお願いいたします。
2010年12月30日
演奏会のごあんない
近く開催される演奏会のごあんないです。
§カリーノ・スケルツォ交響楽団 ニューイヤーコンサート
日時…2011年1月10日(月祝) 午後1時30分開演
会場…川崎市教育文化会館 入場無料
曲目…ブラームス/交響曲第2番ニ長調
リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調 他
出演…山崎麻衣(ピアノ)、小澤和也(指揮)
♪音楽をこよなく愛する若者達による新しいオーケストラです。
§三菱電機ソシオテック・ウィンドオーケストラ 第18回定期演奏会
日時…2011年1月23日(日) 午後2時開演
会場…鎌倉芸術館大ホール 入場無料
曲目…天野正道/「GR」シンフォニック・セレクション
山下康介/エピソード・ファイブ 他
出演…小澤和也、五十嵐史生(指揮)
♪GR=ジャイアントロボ。
同名のアニメ映画音楽からの、作曲家自身によるセレクションです。
§合唱団あしべ 第8回演奏会
日時…2011年5月15日(日) 午後開演
会場…江戸川区総合文化センター小ホール
曲目…新実徳英/「花に寄せて」より、ドイツ名歌曲集 他
出演…坂野早苗(ソプラノ)、浅野正美(ピアノ)、小澤和也(指揮)
皆さま、ぜひお運びください。
2010年12月27日
Get! Benoit♪
僕のライフワーク、ペーテル・ブノワのスコアを4冊、一気に手に入れた。
その中でも特に欲しかったのが、この2曲。
・フルートと管弦楽のための交響詩(フルート協奏曲)
・フランデレンの芸術の誇り(ルーベンスカンタータ)
協奏曲は1866年の作曲。
パリから母国ベルギーに戻ったブノワが、生地ハレルベーケに遺る物語や伝説に興味を持っていた頃である。
彼は同じ時期に、ピアノのための「物語とバラッド集」、各楽章に標題を持つ「ピアノと管弦楽のための交響詩」(実質はピアノ協奏曲)を書いている。
ルーベンスカンタータは1877年の作曲。
世界の大陸や国、地方が擬人化されて登場、フランデレン(英語だとフランダース地方)の芸術を皆で讃えるという、愛国心に満ちあふれた作品だ。
歌詞は当然、母国語であるフラマン語。
この頃のブノワの作風は力強さと平明さを特徴とする。
全曲の結び、少年合唱が元気よく、それでいて澄んだ声で
「さあ、カリヨンを鳴らそう、すべての塔廊の上から〜」
と歌うくだりは感動的だ。
よし、これからさらにブノワ道を究めるぞ。
2010年12月24日
ブノワ(23):クリスマス・カンタータ
12・24にちなんで、この曲を取り上げたいと思う。
原題は "Kerstmis"、オランダ語で「クリスマス」。
テノール独唱と混声合唱、管弦楽のための9分ほどの小品である。
この曲は「レクイエム」や「荘厳ミサ」で用いられた二重合唱ではなく、通常の混声四部のスタイルを採っている。
作曲は1858年。(このときブノワ24歳)
曲は、エピソードを挟んで3つの部分が鏡像のように現れる形(A-B-C-エピソード-C-B-A)で構成される。
1)部分A…Andantino pastorale 3/8拍子
オーボエとクラリネットによるハ長調の牧歌風なメロディに始まる。
やがて他の管楽器も加わり、羊飼い達と彼らの見張る羊の群れのいる情景を描き出す。
2)部分B…Allegro maestoso 4/4拍子
突然ホ長調に転じ、合唱が「天のいと高きところに神の栄光あれ」と歌う。
羊飼い達が聴く天上からのキャロルである。
天使の楽器ハープと、神の楽器オルガンがこれを支える。
3)部分C…Andantino poco allegretto 9/8拍子
弦楽器を主体とした伴奏に乗って、テノールソロが甘美なメロディを歌う。
羊飼い達を聖地ベツレヘムへと誘う妙なる歌声であろうか。
「信仰あつき人々よ、勝利を歓喜して 来たれベツレヘムへ。
天使がたたえる王が お生まれになったのを見よ」
4)エピソード Maestoso
合唱とテノールが各々のテキストを交互に歌う、短い挿入。
5)部分C(再)
上記3)と同じ楽想。
6)部分B(再)
上記2)をほぼ再現する形だが、管弦楽が伴奏に加わり色彩感を増す。
7)部分A(再)
冒頭で聴かれた牧歌が優しく奏でられ、ホルンのパッセージが残る中、弦のピツィカートによって曲が閉じられる。
後に作曲された「荘厳ミサ」や「レクイエム」のようなスケール感やドラマ性にはやや欠けるが、若さと創意、そして良い意味での朴訥さを感じることのできる作品だ。
この曲の音源は、おそらく市販されていないと思う。
僕が聴いているのは、アントワープのブノワ研究家、J.Dewilde さんからいただいた映像資料である。
原題は "Kerstmis"、オランダ語で「クリスマス」。
テノール独唱と混声合唱、管弦楽のための9分ほどの小品である。
この曲は「レクイエム」や「荘厳ミサ」で用いられた二重合唱ではなく、通常の混声四部のスタイルを採っている。
作曲は1858年。(このときブノワ24歳)
曲は、エピソードを挟んで3つの部分が鏡像のように現れる形(A-B-C-エピソード-C-B-A)で構成される。
1)部分A…Andantino pastorale 3/8拍子
オーボエとクラリネットによるハ長調の牧歌風なメロディに始まる。
やがて他の管楽器も加わり、羊飼い達と彼らの見張る羊の群れのいる情景を描き出す。
2)部分B…Allegro maestoso 4/4拍子
突然ホ長調に転じ、合唱が「天のいと高きところに神の栄光あれ」と歌う。
羊飼い達が聴く天上からのキャロルである。
天使の楽器ハープと、神の楽器オルガンがこれを支える。
3)部分C…Andantino poco allegretto 9/8拍子
弦楽器を主体とした伴奏に乗って、テノールソロが甘美なメロディを歌う。
羊飼い達を聖地ベツレヘムへと誘う妙なる歌声であろうか。
「信仰あつき人々よ、勝利を歓喜して 来たれベツレヘムへ。
天使がたたえる王が お生まれになったのを見よ」
4)エピソード Maestoso
合唱とテノールが各々のテキストを交互に歌う、短い挿入。
5)部分C(再)
上記3)と同じ楽想。
6)部分B(再)
上記2)をほぼ再現する形だが、管弦楽が伴奏に加わり色彩感を増す。
7)部分A(再)
冒頭で聴かれた牧歌が優しく奏でられ、ホルンのパッセージが残る中、弦のピツィカートによって曲が閉じられる。
後に作曲された「荘厳ミサ」や「レクイエム」のようなスケール感やドラマ性にはやや欠けるが、若さと創意、そして良い意味での朴訥さを感じることのできる作品だ。
この曲の音源は、おそらく市販されていないと思う。
僕が聴いているのは、アントワープのブノワ研究家、J.Dewilde さんからいただいた映像資料である。
2010年12月22日
年の瀬
さすがにこの時期になると「年の瀬」を感じるものだ。
土曜日(18日)は三菱電機ブラスの年内ラスト稽古。
エキストラの方々の顔もちらほらと見える。
特に、今回の「GR」に欠かせないピアノ・パートがこの日から加わり、曲のイメージがより明確になってきた。
翌日は湘南アマデウス合奏団の下稽古へ。
この一ヶ月間、こつこつと積み上げてきたハイドンの「太鼓連打」交響曲。
メンバーの楽曲への理解も深まりをみせ、響きの充実が目覚ましかった。
年明けからは本棒にバトンタッチである。
休憩時間にVnの団員さんから可愛らしいお菓子をいただく。
一足はやいメリー・クリスマス…!
2010年12月17日
あしべ歌い納め
合唱団あしべの年内ラスト稽古へ。
来春の演奏会に向けて長く取り組んでいる新実徳英さんの「花に寄せて」、ここまでの総浚いをする。
少し背伸びをした選曲だが、時間をかけて歌い込んできた。
「あしべ」にとても合った作品だと思う。
花の姿を通して、生命を、美を、そして母への愛を綴った星野富弘さんの詩が素晴らしい。
歌の仕上がりは…乞うご期待。
レッスン後、会場にほど近いイタリアンのお店で懇親会。
おいしい料理とワイン。
皆さんとのお喋りも楽しかった。
画像はオードブル…カルパッチョがbuono!
メインの「牛肉の湯葉包み」も美味。
(撮る前にうっかり平らげてしまった)
あしべの皆さん、一年間お疲れさまでした。
ピアノの浅野先生、ヴォイストレーナーの坂野先生、
たいへんお世話になりました。
来年もこのメンバーで楽しく、佳い歌を歌いましょう。
2010年12月15日
私の愛聴盤(19)
§ペルゴレージ/スターバト・マーテル
ミレッラ・フレーニ(S)、テレサ・ベルガンサ(A)
エットーレ・グラチス指揮 ナポリ・スカルラッティ管弦楽団員
('72年録音)
このディスクはいつ頃手に入れたものだっただろうか…
そもそもこの曲を聴こうと思ったきっかけは?
よく覚えていないのだが、とにかく好きな演奏なのである。
演奏スタイルとしては間違いなく「旧式」であろう。
ヴィヴラートやポルタメントを多用するソリストの歌唱、ゆったりとしたテンポ、伴奏ももちろんモダン楽器による。
でも「それがどうした!」と強く言い切れるような魅力と説得力を、僕はこの演奏に強く感じるのだ。
ペルゴレージ(1710-1736)の時代は、後期バロック/前古典派のちょうど境目にあたる。
スターバト・マーテルはその早過ぎる最晩年、26歳の時の作品だ。
書式や器楽編成はバロックのスタイルであるが、その旋律線や和声の連なりは充分にロマンティックだ。
〜ここまで書いて少し思い出した。
第1曲(二重唱)の冒頭部において連続して現れる2度音程の衝突…
−悲しみに暮れる聖母の苦痛に満ちた表現−
に、学生時代の僕は大いに打たれ、惹かれたのだった。
その表現の「刺すような痛み」を、この演奏はより克明に描いている。
今では流行らないスタイルなのだと思うが、僕にとっては変わらぬ愛聴盤だ。
ミレッラ・フレーニ(S)、テレサ・ベルガンサ(A)
エットーレ・グラチス指揮 ナポリ・スカルラッティ管弦楽団員
('72年録音)
このディスクはいつ頃手に入れたものだっただろうか…
そもそもこの曲を聴こうと思ったきっかけは?
よく覚えていないのだが、とにかく好きな演奏なのである。
演奏スタイルとしては間違いなく「旧式」であろう。
ヴィヴラートやポルタメントを多用するソリストの歌唱、ゆったりとしたテンポ、伴奏ももちろんモダン楽器による。
でも「それがどうした!」と強く言い切れるような魅力と説得力を、僕はこの演奏に強く感じるのだ。
ペルゴレージ(1710-1736)の時代は、後期バロック/前古典派のちょうど境目にあたる。
スターバト・マーテルはその早過ぎる最晩年、26歳の時の作品だ。
書式や器楽編成はバロックのスタイルであるが、その旋律線や和声の連なりは充分にロマンティックだ。
〜ここまで書いて少し思い出した。
第1曲(二重唱)の冒頭部において連続して現れる2度音程の衝突…
−悲しみに暮れる聖母の苦痛に満ちた表現−
に、学生時代の僕は大いに打たれ、惹かれたのだった。
その表現の「刺すような痛み」を、この演奏はより克明に描いている。
今では流行らないスタイルなのだと思うが、僕にとっては変わらぬ愛聴盤だ。
2010年12月12日
ソリスト合わせ
カリーノ・スケルツォ交響楽団とのプローベへ。
ピアニスト、山崎麻衣さんとの合わせ。
オケの仕上がりはまだまだだが…
独奏ピアノが加わってエキサイティングな合奏になった。
演奏会まであと1ヶ月。
残り少ない練習時間、ベストを尽くして音楽創りに集中したい。
2010年12月09日
小澤和也プロフィール
東京生まれ。12歳よりテューバを始める。
東京農工大学を卒業後、1997年より東京音楽大学にて指揮を学ぶ。汐澤安彦、広上淳一の両氏に師事。在学中より『ラ・ボエーム』『魔笛』他のオペラ上演においてP.G.モランディ、船橋洋介両氏らの下で研鑽を積む。
2000年、神奈川新聞社主催「夢つむぐコンサート」出演、グラズノフ『四季』等を指揮する。01年より新国立劇場公演『ナブッコ』『トスカ』『イル・トロヴァトーレ』『ラ・ボエーム』『アイーダ』他の副指揮、助演を務めている。03年、オペラ『かぐや姫』(平井秀明作曲)世界初演に際しても音楽スタッフとしてその手腕が高く評価された。またこれまでに『ある母の物語』『メリーウィドウ』などの公演を指揮しいずれも好評を博している。05年には男声合唱組曲『風に寄せて』(中橋愛生作曲)を委嘱・初演、新しい響きの可能性の追究に取り組む。
最近では、ベルギーの作曲家ペーテル・ブノワ Peter Benoit の研究にも力を注いでいる。08年4月「荘厳ミサ "Hoogmis"」日本初演に際してはピアノリダクションを担当、また合唱指導等にも携わり公演の成功に大きく貢献した。
現在、各地のオーケストラ、合唱団、吹奏楽団の指揮、指導を行っている。東京農工大学グリークラブ、合唱団あしべ指揮者。
東京農工大学を卒業後、1997年より東京音楽大学にて指揮を学ぶ。汐澤安彦、広上淳一の両氏に師事。在学中より『ラ・ボエーム』『魔笛』他のオペラ上演においてP.G.モランディ、船橋洋介両氏らの下で研鑽を積む。
2000年、神奈川新聞社主催「夢つむぐコンサート」出演、グラズノフ『四季』等を指揮する。01年より新国立劇場公演『ナブッコ』『トスカ』『イル・トロヴァトーレ』『ラ・ボエーム』『アイーダ』他の副指揮、助演を務めている。03年、オペラ『かぐや姫』(平井秀明作曲)世界初演に際しても音楽スタッフとしてその手腕が高く評価された。またこれまでに『ある母の物語』『メリーウィドウ』などの公演を指揮しいずれも好評を博している。05年には男声合唱組曲『風に寄せて』(中橋愛生作曲)を委嘱・初演、新しい響きの可能性の追究に取り組む。
最近では、ベルギーの作曲家ペーテル・ブノワ Peter Benoit の研究にも力を注いでいる。08年4月「荘厳ミサ "Hoogmis"」日本初演に際してはピアノリダクションを担当、また合唱指導等にも携わり公演の成功に大きく貢献した。
現在、各地のオーケストラ、合唱団、吹奏楽団の指揮、指導を行っている。東京農工大学グリークラブ、合唱団あしべ指揮者。
大家のピアノ
お誘いをいただき、サントリーホールで中村紘子さんのリサイタルを聴く。
プログラム前半はベートーヴェンのソナタ2作品。
はじめに演奏されたニ短調 op.31-2(テンペスト)が素晴らしかった。
楽曲の持つ幻想性が冒頭楽章からいかんなく表現され、聴く者の心を惹きつける。
語りかけるようなアダージョ、運動的な激しさを持つフィナーレも佳演だった。
もう一曲は変ホ長調 op.31-3。
このソナタをこんなに速いテンポで聴くのは初めて。
一気呵成に進む音楽は爽快だったが…
僕はこの曲に、シンフォニックで古典的なたたずまいをイメージしているので、ちょっと意外な感も。
休憩後のメインはムソルグスキー「展覧会の絵」。
全体的に速めのテンポでぐいぐいと進んでいく。
極彩色のサウンド、また随所に音の追加や変更もあり、完全に「中村さんの音楽」に昇華。
圧倒的なフィナーレを迎え、会場は大喝采であった。
ただ…
僕はもう少し「作曲家の素顔」が見たかったのだけど。
アンコールで演奏されたラフマニノフ、ガーシュウィン、そしてショパンが解放感とサービス精神満点!
加えて素晴らしいテクニック…これは楽しめた。
中村さんの打鍵、豊かな響きとダイナミクスレンジの広さはやはり魅力的である。
昨年デビュー50周年を迎えた中村紘子さん。
大家の「余裕」のようなものを感じたリサイタルであった。
2010年12月07日
プチ遠足
快晴の月曜日…しかもオフ。
ふと思い立って、自転車で出掛けてみた。
30〜40分くらい漕いだだろうか。
向かったのは、県境の河川敷。
柔らかな陽光と穏やかな風が気持ち良い。
途中で買ったサンドウィッチでひとりランチ。
土手の斜面に腰掛けて、本など読みながら過ごす。
ゆったりとした時間の流れ…
大いに癒された。
ふと思い立って、自転車で出掛けてみた。
30〜40分くらい漕いだだろうか。
向かったのは、県境の河川敷。
柔らかな陽光と穏やかな風が気持ち良い。
途中で買ったサンドウィッチでひとりランチ。
土手の斜面に腰掛けて、本など読みながら過ごす。
ゆったりとした時間の流れ…
大いに癒された。
2010年12月06日
私の愛聴盤(18)
§ブルックナー/弦楽五重奏曲ヘ長調
ウィーン・フィルハーモニア五重奏団
('74年録音)
もう30年近く前のことだと思う。
ブルックナーの生涯とその作品を何週にもわたって取り上げるNHK-FMの番組があった。
土田英三郎氏の解説で、交響曲やミサ曲はもちろん、滅多に聴かれない初期のオルガン曲や、この番組のために収録したと思われるピアノ演奏(交響曲の草稿や「第9」第4楽章のスケッチなど)も放送されるなど、今にして思えば実に素晴らしい内容のプログラムであった。
そして…
番組のオープニングテーマとして使われていたのがこの「弦楽五重奏曲」の第3楽章である。
それも、なぜか楽章の冒頭ではなく、ヴィオラによって奏される美しい第二主題(第37小節〜)が流れるのであった。
毎週聴くうちに、いつのまにか耳がこのテーマを覚えてしまい、家のピアノで音を探って遊んだものである。
当時、僕は中学生。
不思議な転調感がとても神秘的に思えた…
(もちろん楽譜など持っていなかった)
この番組のおかげで、僕は主な交響曲に馴染む前に、このクインテットが大好きになってしまった。
ブルックナーにしては珍しい3拍子の第1楽章、
彼の交響曲のスケルツォをそのままミニチュアにしたような第2楽章、
いまひとつ掴みどころのないフィナーレ…
聴きながら思わずニヤリとしてしまう。
現存する録音をすべて聴いたわけではないが、このウィーン・フィルハーモニア五重奏団の演奏が僕の ゛遠い記憶゛ に最も近い。
ウィーン・フィルハーモニア五重奏団
('74年録音)
もう30年近く前のことだと思う。
ブルックナーの生涯とその作品を何週にもわたって取り上げるNHK-FMの番組があった。
土田英三郎氏の解説で、交響曲やミサ曲はもちろん、滅多に聴かれない初期のオルガン曲や、この番組のために収録したと思われるピアノ演奏(交響曲の草稿や「第9」第4楽章のスケッチなど)も放送されるなど、今にして思えば実に素晴らしい内容のプログラムであった。
そして…
番組のオープニングテーマとして使われていたのがこの「弦楽五重奏曲」の第3楽章である。
それも、なぜか楽章の冒頭ではなく、ヴィオラによって奏される美しい第二主題(第37小節〜)が流れるのであった。
毎週聴くうちに、いつのまにか耳がこのテーマを覚えてしまい、家のピアノで音を探って遊んだものである。
当時、僕は中学生。
不思議な転調感がとても神秘的に思えた…
(もちろん楽譜など持っていなかった)
この番組のおかげで、僕は主な交響曲に馴染む前に、このクインテットが大好きになってしまった。
ブルックナーにしては珍しい3拍子の第1楽章、
彼の交響曲のスケルツォをそのままミニチュアにしたような第2楽章、
いまひとつ掴みどころのないフィナーレ…
聴きながら思わずニヤリとしてしまう。
現存する録音をすべて聴いたわけではないが、このウィーン・フィルハーモニア五重奏団の演奏が僕の ゛遠い記憶゛ に最も近い。
2010年12月02日
ブノワ(22):レクイエム[7]
[アニュス・デイ]
(速度表示無し)ト短調 3/2拍子
ベネディクトゥス同様、この楽章にも速度の指示が記されていない。
楽曲構造としては、序奏部と結尾(コーダ)を持つ三部形式と見ることができる。
ただし、中間部は短く、規模も小さい。
冒頭、まず管楽器によって、呼び掛けるようにト短調の和音が奏される。
すると、ベースが遥か遠くから応えるかのごとく主題の断片を歌う。
《神の子羊よ》
これが和声の進行とともに3度繰り返され、静かにト短調の主部に入る。
主題はアルト、次いでソプラノに引き継がれる。
旋律は次のようなものである。
「・ラミ|ファーミ|・レミ|ファーミ|
・シミ|ファファミ|ミレミ|ファーミ|
・ミド|シーラ|・ミミ|レード|シ〜」
(移動ドによる表記、以下同じ)
と、次第に音程の幅を増しつつ情感豊かに歌われる。
(ミ→ドは6度上行、ミ→ミはオクターヴ上行)
続いて、不協和音や増2度を含む不安な気分を帯びた短い推移が現れる。
「・ミミ|ファーファ|ソ#ーソ#|ラーー」
《彼らに安息を与えたまえ》
このフレーズが3回歌われたのち、改めてffで主題が全合唱・全管弦楽で壮大に奏でられる。
これがト短調のクライマックスに達すると音楽は急激に静まり、保続低音の上で小合唱と大合唱が同じくト短調の短い旋律を交互に歌う。
その中を、トランペットとティンパニによるG音が時を刻むように響き始めると、やがて音楽は中間部へと流れ込む。
中間部は変ロ長調、アカペラの男声四部合唱によるしっとりとした歌と、管楽器を伴った小合唱の応答が繰り返されて進んで行く。
途中一度だけ「アニュスデイ主題」の断片が回想のように歌われ(「・ドソ|ラ♭ーソ」)、その後ト短調に転ずると、再びトランペットとティンパニの刻みが響き、主部の再現となる。
再現部は、これまでの素材から構成されている。
トランペットとティンパニに続き、不安な気分の短い推移と主題断片が一瞬現れるが、そこへ突然Tuttiによる壮大な主題が二短調で再現される。
これが静まると、ホルンの保続D音の響く中、大小合唱による二短調の短い旋律が穏やかにに歌われ、ホルンを残して消えてゆく。
コーダ(結尾)に入る。
引き続きホルンが、モットーを奏でる。
「レ---ド--レ|レ-------」
第1曲「レクイエムとキリエ」の冒頭に現れたものだ。
無伴奏合唱が《永遠の安息を》とpppで歌い、少し高まりをみせるがやがてそれも収まり、男声のみによるト長調の和音が消えると、最後にホルンのモットーがかすかに響き、この曲を閉じる。
全曲を通し、部分的には冗長であったり展開の浅い箇所もあるが、それに勝る多くの魅力をこの「レクイエム」は持っていると思う。
まず何といっても、メロディと転調の美しさは特筆されよう。
また、独唱を置かない独特の編成、ブノワのトレードマークともいえる二重合唱の立体的な響きも新鮮である。
広く聴かれる価値を持った作品であると、僕は考える。
(この項おわり)
(速度表示無し)ト短調 3/2拍子
ベネディクトゥス同様、この楽章にも速度の指示が記されていない。
楽曲構造としては、序奏部と結尾(コーダ)を持つ三部形式と見ることができる。
ただし、中間部は短く、規模も小さい。
冒頭、まず管楽器によって、呼び掛けるようにト短調の和音が奏される。
すると、ベースが遥か遠くから応えるかのごとく主題の断片を歌う。
《神の子羊よ》
これが和声の進行とともに3度繰り返され、静かにト短調の主部に入る。
主題はアルト、次いでソプラノに引き継がれる。
旋律は次のようなものである。
「・ラミ|ファーミ|・レミ|ファーミ|
・シミ|ファファミ|ミレミ|ファーミ|
・ミド|シーラ|・ミミ|レード|シ〜」
(移動ドによる表記、以下同じ)
と、次第に音程の幅を増しつつ情感豊かに歌われる。
(ミ→ドは6度上行、ミ→ミはオクターヴ上行)
続いて、不協和音や増2度を含む不安な気分を帯びた短い推移が現れる。
「・ミミ|ファーファ|ソ#ーソ#|ラーー」
《彼らに安息を与えたまえ》
このフレーズが3回歌われたのち、改めてffで主題が全合唱・全管弦楽で壮大に奏でられる。
これがト短調のクライマックスに達すると音楽は急激に静まり、保続低音の上で小合唱と大合唱が同じくト短調の短い旋律を交互に歌う。
その中を、トランペットとティンパニによるG音が時を刻むように響き始めると、やがて音楽は中間部へと流れ込む。
中間部は変ロ長調、アカペラの男声四部合唱によるしっとりとした歌と、管楽器を伴った小合唱の応答が繰り返されて進んで行く。
途中一度だけ「アニュスデイ主題」の断片が回想のように歌われ(「・ドソ|ラ♭ーソ」)、その後ト短調に転ずると、再びトランペットとティンパニの刻みが響き、主部の再現となる。
再現部は、これまでの素材から構成されている。
トランペットとティンパニに続き、不安な気分の短い推移と主題断片が一瞬現れるが、そこへ突然Tuttiによる壮大な主題が二短調で再現される。
これが静まると、ホルンの保続D音の響く中、大小合唱による二短調の短い旋律が穏やかにに歌われ、ホルンを残して消えてゆく。
コーダ(結尾)に入る。
引き続きホルンが、モットーを奏でる。
「レ---ド--レ|レ-------」
第1曲「レクイエムとキリエ」の冒頭に現れたものだ。
無伴奏合唱が《永遠の安息を》とpppで歌い、少し高まりをみせるがやがてそれも収まり、男声のみによるト長調の和音が消えると、最後にホルンのモットーがかすかに響き、この曲を閉じる。
全曲を通し、部分的には冗長であったり展開の浅い箇所もあるが、それに勝る多くの魅力をこの「レクイエム」は持っていると思う。
まず何といっても、メロディと転調の美しさは特筆されよう。
また、独唱を置かない独特の編成、ブノワのトレードマークともいえる二重合唱の立体的な響きも新鮮である。
広く聴かれる価値を持った作品であると、僕は考える。
(この項おわり)