2012年03月28日

小澤和也プロフィール

 東京生まれ。12歳よりテューバを始める。
 東京農工大学を卒業後、1997年より東京音楽大学にて指揮を学ぶ。汐澤安彦、広上淳一の両氏に師事。在学中より『ラ・ボエーム』『魔笛』他のオペラ上演においてP.G.モランディ、船橋洋介両氏らの下で研鑽を積む。
 2000年、神奈川新聞社主催「夢つむぐコンサート」出演、グラズノフ『四季』等を指揮する。01年より新国立劇場公演『ナブッコ』『トスカ』『イル・トロヴァトーレ』『ラ・ボエーム』『アイーダ』他の副指揮、助演を務めている。03年、オペラ『かぐや姫』(平井秀明作曲)世界初演に際しても音楽スタッフとしてその手腕が高く評価された。またこれまでに『ある母の物語』『メリーウィドウ』などの公演を指揮しいずれも好評を博している。05年には男声合唱組曲『風に寄せて』(中橋愛生作曲)を委嘱・初演、新しい響きの可能性の追究に取り組む。
 最近では、ベルギー・フランダースの作曲家ペーテル・ブノワ Peter Benoit の研究にも力を注いでいる。08年4月「荘厳ミサ "Hoogmis"」日本初演に際してはピアノリダクションを担当、また合唱指導等にも携わり公演の成功に大きく貢献した。

 現在、各地のオーケストラ、合唱団、吹奏楽団の指揮、指導を行っている。本年4月、立川市民オペラ合唱団指揮者に就任。東京農工大学グリークラブ、合唱団あしべ指揮者。
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2012年03月27日

ありがとう、N響アワー

1980年のスタートということは…
中学生の頃ということになるのだな。
僕が音楽の魅力に目覚めた時期と、ピッタリ重なっている。

N響アワーが終わる…
未だに理由がわからない。
単なる流行や、一時のブームに乗じたような内容の番組でないだけに。

難し過ぎるから?
もっと親しみやすく?
「底辺を拡げる」ために?

「クラシック音楽は、解る人にだけ解ればよい」
もちろん僕は、そんな風には決して考えていない。
これまであまりクラシックに馴染みのなかった方々が少しでも興味を持ってくださることを、心から嬉しく思う。

だけど…
「分かりやすく説く」ことと「聴き手側に媚びる」というのは明らかに違う!
と思うのは、僕だけだろうか。
簡単ならば、あるいは取っ付きやすければ何でもよいのだろうか。
あとに残るのは結局、質の低下だけ…
そうなりはしないか。

18日、そして昨日と二週にわたって総集編が放送された。
シュタイン、サヴァリッシュ、マタチッチetc.
ゆかりのマエストロ達の姿が懐かしい。
N響も、ここぞという場面では実に味のある音を出していたのがわかる。

この10年(音楽家になってから)は、僕の中での見方も多少変わったけれど…
大好きな、いい番組でした。

ありがとう、N響アワー。
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2012年03月24日

門出

横浜国立大学の卒業式へ。
(23日、横浜文化体育館)
管弦楽団との式典演奏をご一緒した。

これでもう何度目になるだろう…
当然ながらオケのメンバーは年毎に入れ替わってゆく。
ゆえに式の流れ・リハーサルの段取りなど、気がつけば僕がいちばん詳しい…ということになってしまったようだ。

今回ははからずも2年ぶりの演奏となったため、オケとのプローべは例年より多く組まれた。
それが功を奏したのだろうか…
今回の演奏は自発性に溢れたものになったと思う。

開式に先立って披露されたエルガー「威風堂々第1番」…
楽員一人一人が流れを掴んで(指揮者の締め付けを要さずとも)そこに集まってくるような、そんな手応えを感じた。

学生歌「みはるかす」、今回はグリークラブとの共演。
やっぱり歌が入るとよいものだ。
これも念入りに稽古した成果が出たと思う。

最後にオーケストラのみで「蛍の光」を演奏、閉式となった。
晴れの門出の日を迎えられた卒業生・修了生の皆さんに、心から…
「おめでとうございます」

さあ、次は入学式だ。
「繊細かつ大胆に」、さらに佳い演奏を目指そう。
posted by 小澤和也 at 00:26| Comment(0) | 日記

2012年03月21日

ケルテスの「ネルソン・ミサ」

僕の好きな指揮者のひとり、イシュトヴァン・ケルテス(1929-73)。
彼の新譜が久しぶりにリリースされた。
ハイドン晩年の傑作「ネルソン・ミサ」、
1973年4月、テル-アヴィヴでのライヴ録音である。
(ただしモノーラル…録音状態はそこそこだ)
管弦楽はイスラエルpo、独唱はL.ポップ(sop)、岡村喬生(bas)他。
さっそく聴いてみた。

第1曲:キリエ
冒頭から豊かな情感をもって始まる。
テンポもやや重めか…
と思いスコアをみると、作曲家の指示は "Allegro moderato" 。
改めて納得である。
(ケルテスのAllegroは総じて落ち着いたテンポであることを思い出した)
ダイナミクスレンジも広くとられ、ドラマティックな表現になっている。
ポップのコロラトゥーラが見事。

第2曲:グローリア
前曲から間髪を入れずにグローリアに入るが…かなり不自然だ。
おそらく編集に際して間を詰めてしまったのであろう。
一つの楽曲中での間はきちんと残されているので、これは実に残念。
(この先もずっと同様である)

それはともかく、キリエからの曲想の切り替わりがとても鮮やかである。
中間部 "Qui tollis" では、一転して引きずるようなAdagio。
若き岡村喬生の歌うアリオーソが圧巻だ。
ここでのテンポ設定はケルテスのこだわりか、それともソリストの要望によるものだったのだろうか。

第3曲:クレード
この楽章の出だしは、一般に確固たる足どりを表す速度で奏されるが…
ここでのケルテスのテンポはかなり遅い。
(スコアの指示は "Allegro con spirito"、2/2拍子である)
対する中間部はキリストの生誕〜受難について述べられる部分であるが、悲愴感はあまり感じない。
(ハイドンの曲想自体による所も大きいとは思う)

第4曲:サンクトゥス、特になし。

第5曲:ベネディクトゥス
このミサ曲における「もう一つのクライマックス」と呼んでもよい楽章であろう。
指定はAllegrettoであるが、ケルテスはじっくりと歩を進めてゆく。
実に良いテンポだと思う。
しかし最後にさらなるサプライズがあった。
楽章の結尾(本CDでは5'13"あたりから)、ティンパニと3本のトランペットが三連符を重々しく刻む部分で、さらにテンポを落とすのだ。
ベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」のアニュス・デイを先取りしたような、「きな臭さ」をやや強調したような表現である。

第6曲:アニュス・デイ
前曲からの流れを受けて穏やかな "Agnus Dei" 、そして円満な "Dona nobis" と型通りに進み、安堵に溢れたフィナーレへ…

ケルテスの解釈について際立った特徴を挙げるのは難しいが、オーソドックスな中にも要所要所でじっくりと腰を据えて語るような、そんなハイドンである。
そして…
彼のモーツァルトにみられるような「作品への絶対的信頼」とはちょっぴり異なるアプローチに、ついついニヤリとしてしまうのだ。
posted by 小澤和也 at 00:39| Comment(0) | 日記

2012年03月19日

劇場の香り

目下、二つのオペラの読譜をほぼ並行して進めている。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「ラ・ボエーム」だ。
テキストに当たり、スコアの響きを頭の中で鳴らし、作曲家が抱いたであろうイメージに思いを馳せ…
その合間には、録音あるいは映像化されたものを視聴したりもする。

いま、とある録音を聴きながら思うことがある。
『 "劇場の雰囲気というもの" は
どこから来るのだろうか?』
漠然と、頭の中で理解はしているのだが…
テンポ感、リズムの扱い、言葉の捌き、オーケストラ内部の(各声部の)バランス…etc.

あくまで僕の主観であるが、
いま聴いているCDからは「劇場の香り」がしないのである。
(以前、別の作品の録音でも同じことを感じたものだ)
この機会に「手掛かり」を掴みたいと思っている。
posted by 小澤和也 at 23:59| Comment(0) | 日記

2012年03月17日

2年ぶりの「威風堂々」

今日も冷たい雨だった。
3月も下旬に差しかかるというのに…

横浜国立大学管弦楽団とのプローべへ。
長年、同校の卒業式・入学式での奏楽をご一緒している。
学生歌「みはるかす」、そして式典に彩りを添える楽曲演奏…
ここ数年はずっと、エルガー「威風堂々第1番」が定番になっていた。

タクトを下ろす。
懸命に応えるオーケストラの音を聴きながら、一年前のことを思わずにはいられなかった。
そう…
先の震災の影響により、昨春は卒業式・入学式ともに中止となったのだった。

(〜ということは、新2年生はもちろん、現在楽団の中心的存在となっている新3年生も式典演奏を体験していない、ということになるのだな)

振りながら、僕の中である思いが湧いてきた。
(已む無く断たれてしまった彼らの時、この伝統を再び繋ごう…)
あと数回の合奏、そして本番を、是非とも素晴らしいものにしたいと思う。
posted by 小澤和也 at 23:31| Comment(0) | 日記

2012年03月14日

スヘルデとレイエ

 
ペーテル・ブノワ作品のヴォーカルスコアが、ベルギーの古本屋から届く。
 
"De Schelde"「スヘルデ川」は、複数のソリストと大合唱、管弦楽のために書かれた、三部からなる2時間あまりのオラトリオだ。
 
もう一つの "De Leie"「レイエ川」はまだ聴いたことがない作品。
スコアには「バリトン独唱と混声合唱、管弦楽のための」と記されている。
おそらく20〜30分くらいの曲であろう。
 
これら2つの川、ともにフランスがその源である。
やがてそれぞれベルギー・フランデレンに入り、ヘントで合流する。
そして一つになったスヘルデはアントウェルペンへ到達、オランダに入り北海へ注ぐのだ。
 
それにしても…
やはり「川」というものは、民族のアイデンティティに深く関わる存在なのだなあ、と改めて思う。
 
個々の作品については、追い追い「音楽雑記帳」に記していこう。
posted by 小澤和也 at 16:14| Comment(0) | 日記

2012年03月12日

終演、そして感謝

立川市民オペラ「トゥーランドット」、
二日目(千秋楽)も無事終演。

この日、オーケストラは正午前から特別にプローべを実施、
合唱も開演直前に最後の確認を行った。
「音楽は生き物であり、
昨日と同じに進む所など一つもない。
いま一度初心に戻って、公演初日と同じ気分で歌ってください」
と申し上げた。

午後2時の開演に先立ち、さきの震災犠牲者の方々を追悼して一分間の黙祷を会場のお客様とともに捧げる。
そして始まった第1幕、
前日に優るとも劣らない集中力でプッチーニのドラマが展開される。
カラフの松本薫平さん、リュー役の砂川涼子さんはじめ、キャストの皆さんの輝かしい歌声が劇場を満たした。

第2幕で登場のトゥーランドット・津山恵さんの美声はまさにこの役に相応しかった。
合唱団も、感情のこもった熱い響きでもって、マエストロのタクトに応える。

そしてクライマックスの第3幕…
僕は金魚鉢でペンライトを振りつつ、もはや祈るような思いであった。
最後の合図を送り、急いで舞台袖に走る。
公演にお見えになれなかった合唱指揮の倉岡先生に代わり、カーテンコールに出させていただく栄誉を仰せつかった。
合唱団とともに、お客様からの温かい喝采を受ける…このうえない喜び。

このときの僕は、特定の何かに対して、誰に対してということもなく、ただただ感謝の気持ちで一杯であった。

「音楽ができる幸せ」。
これがあるから、辛い瞬間があってもやっていけるのだ。
そして明日からも…「音楽に生きる」。
posted by 小澤和也 at 23:44| Comment(0) | 日記

2012年03月10日

トゥーランドット!

立川市民オペラ公演「トゥーランドット」、
初日の公演が無事終了した。
(@アミュー立川)
 
何と言ってもタイトルロールの小川里美さん、名を秘めた王子(カラフ)山田精一さんの声に圧倒される。
驚異的な存在感だ。
 
僕は今回ずっと、主に合唱をフォローし続けている
公演中の持ち場も、1階客席後方の小部屋(通称:金魚鉢)からペンライトで、舞台上の歌手に合図を送り続ける役目。
これ、お客様から絶対に見えない(というか見えてはならない)仕事なのだが、存外難しい。
それだけに、アンサンブルがカッチリと決まった瞬間は快感である。
 
合唱、大健闘だった。
鳥肌が立つ瞬間がいっぱいあった。
明日の千秋楽は…もっと良くしたい。
 
明日は14時開演。
皆様のご来場をお待ちしております。
posted by 小澤和也 at 23:52| Comment(0) | 日記

2012年03月08日

ペーテル・ブノワの命日に寄せて


今から111年前の1901年3月8日、
ベルギー・フランデレンの作曲家 ペーテル・ブノワ Peter Benoit が亡くなっている。

今日の昼頃、そのブノワについて気の向くままにTwitter上でつぶやいたところ、何名かの方々から反応をいただいた。
せっかくなので、それらの連続ツイートをここに再掲しようと思う。







1)ペーテル・ブノワは1834年8月17日、南西フランデレンの小さな町ハレルベーケに生まれました。ブリュッセルで学び、カンタータ「アベルの殺人」でベルギー・ローマ大賞を受賞。ドイツ他に留学後パリへ移り、オペラ作曲・指揮を志しましたが成功しませんでした。

2)その後ブノワは、アントウェルペン(アントワープ)に赴き、音楽学校を設立します。そこで彼はフラマン語(≒オランダ語)による音楽教育に尽力、フラマン語による歌曲やオラトリオなどを数多く作曲しました。

3)ブノワはその晩年、アントウェルペンにフラームス(フランダース)歌劇場を設立、また彼の音楽学校は王立フラームス音楽院として承認され、パリやブリュッセルなどのそれと肩を並べるに至ったのでした。

4)「宗教曲四部作」(1859-63)1.クリスマス・カンタータ 2.ミサ・ソレムニス 3.テ・デウム 4.レクイエム…壮年期のブノワの代表作。1を除く3曲で、彼のトレードマークともいえる二重合唱が用いられています。素朴さとロマン性を併せ持った佳品です。

5)ピアノのための「物語とバラッド集」(1861)、ピアノと管弦楽のための交響詩(1864)、フルートと管弦楽のための交響詩(1865)…母国に伝わる民謡・伝説からインスピレーションを受けて作曲。特にフルート〜はロマン派期にこの楽器を用いた数少ない協奏的作品として要注目。

6)カンタータ「フランデレン芸術の誇り」(1877)…'70年代前半、ヴァーグナーの影響を受けて神秘的・内省的作風に傾いていたブノワが、そのスタイルを一変させて広く大衆にアピールした壮大な頌歌。「ルーベンス・カンタータ」という愛称でより知られるように。

7)ルーベンス・カンタータ、そのテキストは愛国心にひたすら訴えかける微笑ましいものですが、その音楽は平明な人懐こさを持っています。きっと一般市民も混ざってコーラスパートを歌ったことでしょう。児童合唱の歌う「すべての鐘を鳴らそう〜」のくだりはグッときます


オペラの仕事がひと段落したら、しばらく遠ざかっていたブノワ研究を再開しよう!
それからオランダ語の勉強も…
                           






posted by 小澤和也 at 22:53| Comment(0) | 日記

2012年03月07日

パレストリーナに取り組む

農工グリーとの練習が今年も始まった。
7月の演奏会に向けて、プローべを重ねてゆく。
 
例年は男声、女声合唱がそれぞれいくつかのステージを持つのだが…
今回は(本格的なものとしては)初の試みとして、混声四部によるアンサンブルを手掛ける。
取り上げるのは
パレストリーナ/ミサ・ブレヴィス。
 
ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ(1525?〜94)は、16世紀後半のイタリア教会音楽を代表する作曲家の一人である。
音楽史としての一般的な時代区分によれば、「ルネサンス期音楽の最後期」といえるだろう。
100を超えるミサ曲、250曲以上のモテットなど、多数の宗教作品を遺した。
 
彼の作風について、皆川達夫先生は著書の中で次のように述べている。
(以下、自由に引用させていただいた)
『フランドル楽派のポリフォニーを基調としながらも、常に魅力のある旋律が鳴り響き、温かく柔らかい和声によって支えられる。』
『彼の作品の純粋さは、人工的につくりあげられたものであり、その意味で彼は世紀末のマニエリスムの芸術家と評されるべきであろう。』
 
このミサ・ブレヴィスは、上に挙げた特徴がまさにピッタリとあてはまる佳曲である。
キリエやサンクトゥスの主題は流れるように美しい。
 
一方、グローリアやクレードでは4つの声部がホモフォニー的に力強く歌われる。
 
アニュスデイの後半では5声に分かれ、ソプラノ1&2がカノンを奏でてゆく。
天国的な響きである。
posted by 小澤和也 at 23:48| Comment(0) | 日記

2012年03月04日

通し稽古

 
立川市民オペラ「トゥーランドット」、
いよいよ公演一週間前。
 
昨日は通し稽古。
連続体としての音楽・演出・舞台が初めて一つになる瞬間だ。
 
もちろん本公演が最大のクライマックスであり、
これまで時間をかけて創り上げてきたものの総決算になるわけだけれど…
 
個人的にはこのラスト一週間〜オペラというものが次第に形を成してゆくプロセス〜がたまらなく好きである。
 
そして…
見えないところで音楽的完成度の良否を担う副指揮者としての自負もここにある。
posted by 小澤和也 at 11:24| Comment(0) | 日記