2012年04月29日

改めてベルギーを知る

「ベルギー ヨーロッパが見える国」
という本を読み始めた。
(小川秀樹著・新潮選書)
いや、正確に言えば、数年前に手に入れてざっと読んだままだったものを久しぶりに取り出してきた、ということになるのだけれど…

序章と第1章に、ベルギー地域の歴史が大まかにまとめられている。
それによれば…

§ローマ帝国内でラテン化したケルト族が住んでいたところにゲルマン人(フランク人)が北方から押し寄せ、ベルギー住民の原形が成立する。
…このときに「言語境界線」ができた

§12〜14世紀にはヘント、ブリュッヘを中心に、今のベルギー・フランデレン地域はヨーロッパ商業の中心地となる。

§15世紀にはネーデルラント(現在のベネルクス地域)がまとまって、ブルゴーニュ公国(フランス王国の傍系)の支配下に入る。

§16世紀中葉、当時ハプスブルク家の支配に服していたネーデルラントがスペイン王フェリペ二世の統治下に入る。
フェリペ二世はプロテスタントを迫害、それに対抗して北部七州がネーデルラント連邦共和国として独立する。
(1581年)
…一方、南部諸州(ベルギー地方)はスペイン治下に残る

§18世紀中葉、ベルギー地方はオーストリア領に移る。
(オーストリア継承戦争)

§ナポレオンの時代、「ベルギー合州国」が一時宣言されるも実現せず。
…ネーデルラント地方は南北ともにフランスに併合される

§ナポレオン失脚後、ベルギー地方は今度はネーデルラント王国(オランダ)に組み込まれる。
(1815年、ウィーン会議)

そしてようやく…
1830年にベルギーがオランダから独立するのである。
なんと複雑な、紆余曲折を経た歴史であろうか!

序章と第1章ではさらに、建国後のラテンとゲルマンの対立〜フランス語vsオランダ語〜についても触れている。
(これについては別に書こう)

ここまで読み進めながら、ハッと気付いた。
ベルギー建国史、そして独立後の言語問題…
この二点こそが、わがペーテル・ブノワとその音楽をより深く知るうえで必須のテーマではないか、と。
改めて…
ベルギーという国をちゃんと串刺しにして学ぼうと思う。
posted by 小澤和也 at 23:53| Comment(0) | 日記

2012年04月27日

原点回帰

久しぶりの立川へ。
市民オペラ合唱団「カヴァレリア・ルスティカーナ」の稽古。
スタートして今日が第4週め、まだまだ譜読みの真っ最中といったところだ。

この作品、合唱パートが思いのほか複雑に書かれている。
(特にテノール)
今日おさらいした「馬は地を蹴り」、男声陣は大苦戦だった。
「ああ、馬車屋はなんていい稼業、
あっちへ行ったり、こっちへ行ったり…」
歌詞は何ともお気楽なのだけど。

こんな時こそ「原点回帰」。
糸口はゼッタイにあるはずだ。
とことん付き合うぞ。
〜皆さん、がんばっていきましょう!
posted by 小澤和也 at 00:56| Comment(0) | 日記

2012年04月23日

ブルックナーに癒される

今日はオフ日。
楽曲研究もお休み。
大好きなブルックナーを聴きながら、スコアをパラパラと繰る。
そう…譜読みならぬ「譜眺め」。

選んだのは第7交響曲。
久しぶりに、マタチッチ&チェコフィルのディスクをかけてみた。
オーケストラの柔らかい音色、
淀みなく流れる自然なテンポ、
そして…
すべての旋律、ほんの短いパッセージまでにも通っている、美しい歌。

まさしくこれが、
今日の僕が欲しかった「癒しのブルックナー」。
思えば…
指揮者になる前はいつもこういう気分で音楽を聴いていたのだな、と。

たまにはこういう日もいいものだ。
posted by 小澤和也 at 23:57| Comment(0) | 日記

2012年04月22日

あ・る・こ〜ぅ・あ・る・こ〜ぅ…

今日は合唱団あしべのプチ本番。
レッスン会場として日頃お世話になっている「共育プラザ一之江」の春まつりに参加した。
 
 
予想通り、会場は小さなお子さんとそのお母様方でいっぱい。
それを見越して今回あしべが歌ったのは
・さんぽ(となりのトトロ)
・花(滝廉太郎)
・待ちぼうけ
・歌の翼に
・島唄
・Believe(生きもの地球紀行)
の6曲。
 
「さんぽ」のメロディが流れ出すと…
子供達の歌声や手拍子が自然に湧き上がってくる。
これでツカミはOK…!
(自画自賛だけれど)初っ端にこの歌を持ってきて大正解だった。
あとはやはり「島唄」と「Believe」での客席の反応が楽しかった。
 
生の歌声を間近(ほんとにすぐ目の前!)で聴いてくれた子供達…
何かしら「感じて」くれているとうれしいな。
 
あしべは来月にも、江戸川区のイベント(中央地域まつり)で歌を披露することになっている。
決して派手な活動ではないけれど、これらの機会を通して地域の方々と繋がりを持つというのは大切なことだと思う。
実はこの地域まつり、ここ数年ずっと雨天中止なのだ…
今年こそはぜひ!
 
posted by 小澤和也 at 22:23| Comment(0) | 日記

2012年04月18日

スリッパの英雄?

昨日のオランダ語講座で、pantoffel という単語が出てきた。

【 de pantoffel 】スリッパ、上履き

「スリッパを使いますか?…それとも靴下のままで歩きますか?」etc.
例文の説明をしながら、講師のTimがさらに pantoffelheld と大きく板書して、何やら楽しそうにしゃべっていた。

あまりに早口で聞き取れない。
とりあえず単語だけノートに書き留めて、きょう改めて辞書で調べてみると…

【 de pantoffelheld 】恐妻家

えぇっ…
ビックリである。
ちなみに、held は「英雄、主人公」。
(英語の hero にあたる)
なんでまた「スリッパの英雄」=恐妻家、なのだろう⁈

辞書にはこんな言い回しも載っていた。
【 onder de pantoffel zitten 】
(直訳:スリッパの下でじっとしている)
=女房の尻に敷かれている

スリッパって、オランダではそんなイメージなのか…
posted by 小澤和也 at 23:47| Comment(0) | 日記

2012年04月17日

ケルテスの命日に寄せて

ハンガリー出身の名指揮者、イシュトヴァン・ケルテスがこの世を去って今日(4月16日)で39年。
何か聴こうと思っているうちに…
こんな時間になってしまった。

CDをあれこれ手に取ってみる。
モーツァルトのレクイエム…それとも白鳥の歌となったハイドン・ヴァリエーション(ブラームス)か…
あるいは渋く、ベートーヴェンの第4交響曲…?
いろいろ悩んだ末に、いま聴いているのがブラームス/第2交響曲。
ただし、ウィーンフィルとの名盤ではなく、手兵ロンドン響との1966年ライヴである。

第1楽章冒頭から表現の振幅が大きく、伸びやかな印象。
アゴーギクは多用せず、それでいて各楽器がよく歌うのだ。
特に、弱音の部分での木管楽器のカンタービレが美しい。
一方、クライマックスではホルンが思い切った強奏を見せる…
このあたり、いかにもライヴらしい。

第2楽章、出だしのチェロ&それを受けるヴァイオリンの、むんむんとむせ返るような甘い響きが強烈!
前楽章から一転して、大胆にテンポを揺らすケルテス。
それでも、ピタリと「決まった」感じがするのは…ケルテスとブラームスとの幸福な相性ゆえ?

チャーミングで軽やかな第3楽章を経て…フィナーレへ。
オケをグイグイとドライヴする、その推進力が凄まじい。
オケもそれに見事に応えてゆく。
(これは全くの想像だが…
楽員達はケルテスに「ついて行きたくてもう仕方がなかった」のではないだろうか、
と思いたくなるほどの一体感である)
全曲のラスト、曲が終わる前(最後の和音の途中ではない!)に拍手が起こる。
単なるフライングと言ってしまえばそれまでだが…
その気持ち、解らなくもない。
そのくらいに一気呵成な流れが、この演奏にはあるのだ。
やはりケルテスも「ライヴで燃える人」だったのだろう。

不慮の事故により43歳の若さで帰らぬ人となったケルテス。
1929年生まれであるから、ハイティンクやマゼールと同世代ということになる。
もし彼が生きていたら…
posted by 小澤和也 at 00:44| Comment(0) | 日記

2012年04月14日

愛聴盤(30)〜ブロムシュテットのシベリウス

§シベリウス/交響曲第3番
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮サンフランシスコ響
('94年録音)

シベリウスの交響曲というと、人気曲としてまず第2が挙げられる。
(それに次いでは…第1だろうか)
一方で、「後期作品がシベリウスの真骨頂」「第4こそが(一見難解だが)最高傑作」という意見が多いのも確かだ。
そんな中で、すっかり置いてけぼりを食っている感のあるのがこの「第3交響曲」。
なぜだろう…
こんなにチャーミングな曲なのに…

シベリウスの作風変化の契機としてよく挙げられるのが、都市の喧騒を避けてのヤルヴェンパー移住(1904年)、咽頭の異常発覚と手術(08年)である。
これらに、第2〜第4交響曲の作曲年代を重ね合わせると、なかなか興味深い。
第2…01年
第3…04〜07年
第4…10〜11年
〜そう、第3交響曲はいわゆる「過渡期」的作品なのだ。
そして、まさにその点がこの曲の魅力でもある。

第1楽章は実に明快な、二つのテーマを軸として有機的かつ簡潔に構成されたものになっている。
第一主題はぶっきらぼうなほどに素朴、対する第二主題はメロディアスな美しさを持つ。

続く第2楽章はしっとりとしたアレグレットの変奏曲。
主題はどこか寂しげであるが、第1、第2交響曲の緩徐楽章のそれよりも詩情が乾いていて(情に溺れ過ぎていないのだ)、個人的にはこちらの方が好みである。

そしてフィナーレ、第3楽章。
スケルツォ的に始まり、しかもそれが旋律というよりも息の短いモティーフの展開をもって進んでゆく。
そんな中、ヴィオラで示されるコラール風の主題が次第に全体を覆い尽くし、実直で堂々たるエンディングを迎えるのである。

この交響曲の良さを味わう要件は
「指揮者があれこれこねくり回さないこと」
「オケが高機能であること」
に尽きるのではないだろうか。
ブロムシュテットの演奏は、小規模だが個性的なこの作品の性格をズバリ言い当てたような、(皮肉でなく)模範的なものだ。
過度のロマン性、あるいは民族的悲壮感からしっかりと距離をおき、古典的・直截的な表現を指向している。
posted by 小澤和也 at 23:39| Comment(0) | 愛聴盤

2012年04月10日

挑戦

先日申し込んだオランダ語の講座へ。
早稲田大学オープンカレッジ「続けて学ぶオランダ語」、
いよいよスタートだ。

コースには初級と中〜上級があったのだが…
つい欲張って中〜上級を選ぶ。
受講生は僕を含めて10名。
講師の先生(フランデレン人男性)が教室へやってきた。

……

大変なクラスに入ってしまった!
僕以外の皆さん、既にペラペラなのだ。
Tim(講師)のオランダ語も…
シャワーというかスコールというか、
とにかく「浴びている」ような感覚。
理解度、40〜50%程度といったところか。

こうなったらもう、
根拠も何も無いけれど自信を持って楽しむしかないな、と開き直る。
(もちろん努力もする!)
90分間、頭の中がバチバチ音を立てていたような気がした。
音楽以外で脳内がこんなにエキサイトしたのは久しぶりかもしれない。

よし、挑戦だ。
posted by 小澤和也 at 23:58| Comment(0) | 日記

2012年04月07日

「カヴァレリア」始動

先月の「トゥーランドット」公演で初めてご一緒した立川市民オペラ。
一昨日 (4/5)、オペラ合唱団のひと月ぶりの練習へ。

新たに取り組む演目は、マスカーニ作曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」。
今回僕は合唱指揮者として、キックオフから音楽創りに携わることとなった。

メンバーの皆さん、待ち兼ねたとばかりに初日から気合充分!
"Regina Coeli" をのびのびと、気持ちよく歌う。

12月の本番に向けて…
いよいよ始動。
今後が楽しみだ。
posted by 小澤和也 at 22:18| Comment(2) | 日記

2012年04月05日

新鮮な気持ちで

横浜国立大学の入学式へ。
(@関内・横浜文化体育館)
天候にも恵まれ、文字通りの「ハレの舞台」に相応しい日となった。

先日の卒業式に続いて、今日も管弦楽団の皆さんとエルガー「威風堂々」他を演奏。
昨日のプローべでは、二週間前とは少し違うテンポ感・表現を求めた。
〜守りに入って欲しくなかったからだ〜
メンバーは一瞬戸惑っていたようだったが、今日はよく反応してくれたと思う。
よりいっそうアグレッシヴで振幅の大きい、活き活きとした演奏を繰り広げた。

いついかなる場面でも、
アウトプット(いわゆる本番)直前まで「変えていく」「良くしていく」
意識を彼らには持ち続けていて欲しいと願う。
「あのときと同じだから」「この前と一緒で」というスタンスは、必ず停滞(あるいは後退)を生じさせるから。

新しい部員がたくさん入りますように。
そして…
来月の演奏会、がんばってください。

また会いましょう!
posted by 小澤和也 at 15:20| Comment(0) | 日記

2012年04月02日

「キリスト」体験

kazyaozawa-2012-04-02T01_00_29-1.jpg
ムシカ・ポエティカ公演
リスト/オラトリオ「キリスト」を聴く。
(3/31、新宿文化センター大ホール)

全三部構成、トータル170分余りの長大な作品だ。
第1部は、神の子キリストの誕生から三賢人の訪問までを描く「クリスマス・オラトリオ」。
(全5曲、約65分)
続く第2部は「顕現節ののち」と題され、イエスの山上での説教や湖での奇蹟、エルサレム入城などの場面が描写される。
(全5曲、約50分)
そして、第3部「受難と復活」。
「スターバト・マーテル」(この一章だけで約30分!)を中核として、イエスへの迫害から受難の悲しみ、復活の喜びまでが表現される。
(全4曲、約55分)

全曲を通して管弦楽の存在感が実に大きい。
数による象徴(3=神性、2=人間・現世)や楽器の選択(王=トランペット、羊飼い=木管、など)による象徴表現が随所で巧みに用いられており、テキストがなくとも一つひとつの情景が浮かんでくるようだ。

ソプラノの平松英子さんをはじめとする独唱陣の声は柔らかく、要所要所で美しい彩りを見せていた。
そして…
ハインリヒ・シュッツ合唱団東京を中心とした合唱セクション。
出だしは声の硬さとフラットな音程が気になったが、第2部に入ったあたりからは調子も上がってきて、「スターバト・マーテル」では素晴らしい響きを聴かせてくださった。

派手さやケレン味はほとんど無く、ひたすらに内的充実を追究したこのオラトリオ、もっと聴かれてよい作品だと思う。

単に珍しい作品を聴けたというだけでなく、僕の中での「リスト観」を大きく変えるきっかけにもなったという点で、とても貴重な体験となった。
posted by 小澤和也 at 01:00| Comment(0) | 日記