2012年05月31日

我は満ち足れり

昨晩、勉強を終えてから、久しぶりにバッハを聴く。
選んだのは、
バスのための独唱カンタータ「われは満ちたれり」だ。

この曲のテーマは「安らかな死」。
イエスに "会えた" ことにより、喜びのうちにこの世に別れを告げる、一人の老人の思いが歌われている。

曲は5つの部分に分かれており、しずしずと進む第1曲と舞曲のように熱気を帯びた終曲(どちらもハ短調)では、独唱とともにオーボエが大活躍する。
それにしても…バッハの音楽におけるオーボエの響きの何という存在感だろう!

しかし、それらにもまして僕の心を激しく震わせるのが、中央に置かれた変ホ長調のアリアだ。
優しい子守歌のようなその旋律。
「まどろめ、疲れた目よ
穏やかに、そして幸せに閉じよ!」
このあとさらに、現世への決別と "かの地" への憧れが歌われるのだが、それらの言葉の力をはるかに越えて、純粋なる「音楽の力」が迫ってくるのだ。
そして…
感動とともに、改めて自分を見つめ直す、そんな気持ちにさせてくれるのである。

僕はこの演奏を、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの歌う盤で聴いている。
(実は…だからこれを選んだのだ)
深く柔らかな声と、厳しく研ぎ澄まされた美しい言葉との妙なる調和がここにある。

Requiescant in Pace.
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2012年05月29日

「スヘルデ」を読み始める

今日はオフ。
ずっと手掛けたかったペーテル・ブノワ/オラトリオ「スヘルデ」のテキスト(フランデレン語)訳読を始める。
ひとまず第1部(全曲は3部構成である)をざっと読み終えた。


第1部は「牧歌」。
ここに登場する配役は

・Het Meisje(少女)ソプラノ
・De Jongeling(青年)テノール
・De Dichter(詩人)バリトン
・De Vaarman(船乗り)バリトン
+合唱

【第1曲…前奏と詩人の叙唱】
管弦楽のゆったりとした導入の音楽に続いて、詩人が歌う。
「おお、スヘルデ、私はあなたの声を聞いた」
「スヘルデは歌う、優しく楽しげな、愛と喜びの言葉を…」

【第2曲…若者たちの二重唱】
青年と少女が登場。
「燃えるような夏、ここはなんと涼しいのだろう!…」
「花々でいっぱいの岸辺はなんていい香りがするのでしょう!…」

【第3曲…船乗りの叙唱と合唱】
船乗りの荒々しい叫びが響く。
「波が楽しげに戯れ、飛び跳ねる…
さあ、出帆せよ!」
そこへ合唱(農民たち)が
「陽の光が会釈する…そして西へと沈んでゆく…」
と朗らかに加わる。
この合唱と船乗りの声との応酬が幾度か繰り返される。

【第4曲…若者たちの二重唱】
短く柔和な『愛のデュエット』。
「ひそやかな喜びの声が、僕をスヘルデへといざなう…」
「あたたかな魔法の歌が私を目覚めさせる…出帆への甘美な願望へと…」

【第5曲…フィナーレ】
合唱(村人たち)
「家畜は小屋へと向かう…私たちもまた、休息と平安を求めよう…」
青年
「心地よい風、そして甘い愛…
優しい恋人よ、僕の腕の中へ!…」
少女
「あなたの声は私の心を動かします、波のさざめきのように…
私はあなたの腕の中におります…」
船乗り、合唱
「出帆だ!」


ブノワが(そして台本作家エマニュエル・ヒールが)ここで訴えかけたかったのは、偏に『フランデレン民族のアイデンティティ』だったであろう。
それを考えれば、この素朴で土臭いストーリー展開も合点がゆく。
時は19世紀後半、フランデレン語復権運動のまっただ中であった。
posted by 小澤和也 at 00:49| Comment(0) | 日記

2012年05月26日

演奏会のご案内

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§東京農工大学グリークラブ 第32回演奏会
 日時…2012年7月1日(日) 午後3時開演(全席自由、入場無料)
 会場…府中の森芸術劇場 ウィーンホール
 曲目…男声合唱組曲「月光とピエロ」(清水脩)、ミサ・ブレヴィス(パレストリーナ) 他
 出演…小澤和也(指揮)、宮代佐和子(ピアノ)他


§新国立劇場 高校生のためのオペラ教室 「ラ・ボエーム」
 日時…2012年7月12、13、14、17、18&19日 13時開演
 曲目…プッチーニ/ラ・ボエーム(全4幕・原語上演)
 出演…石坂宏(指揮)、粟國淳(演出)他
※残席がある場合のみ、当日券が一般発売されます(大人4200円)

今回も「バンダ隊長」として第2幕に出演いたします。


§砂川オペラプロデュース公演 「ラ・ボエーム」(演奏会形式)
 日時…2012年7月22日(日) 午後3時開演
 会場…hakuju Hall
 曲目…プッチーニ/ラ・ボエーム(全4幕・原語上演)
 出演…砂川稔(指揮)、瀧田亮子(ピアノ)、稲見里恵(ミミ)、柾木和敬(ロドルフォ)他、小澤和也(副指揮)


みなさま、どうぞお運びください。
posted by 小澤和也 at 11:22| Comment(0) | 演奏会情報

2012年05月25日

Bohème雑感

夕刻よりボエーム音楽稽古。
今日はキャストもほぼ揃い、充実した内容となった。
ちょっとお疲れのマエストロに代わって、ラスト30分、第4幕のほぼ全編を振る。
スコアとタクトだけを介して、歌手の皆さん、そしてピアニストとコンタクトを取る楽しみ…
嬉しくてたまらないひととき。

ラ・ボエーム…
思えば、10代の頃から大好きだった。
(フレーニ&パヴァロッティのVTRで僕はこの作品にのめり込んだ)
音大で最初に勉強したオペラもこの曲だった。
(副指揮見習い…何て有難い体験だったことか!)

そして今、立場は変われど、こうしてずっとボエームに触れることのできる幸せを改めて感じている。
あまりに素晴らし過ぎる音楽!

いったんはバラバラになった若者達が、瀕死のミミを中心に再び寄り添う。
ムゼッタ、マルチェッロ、コッリーネ、そしてショナール…
みんな、なんていい奴らなんだ!!

プッチーニのオペラ、どれも大好きである
だけど…
ボエームは僕の中で別格だ。
posted by 小澤和也 at 23:48| Comment(0) | 日記

2012年05月23日

祝開業・東京空樹

昨日は午後から墨田区曳舟へ。
もちろん、スカイツリーを観に…
ではなくて、稽古の会場がたまたま駅前の文化センターだったのだ。
 
オープン初日にしてはあいにくの空模様。
稽古を終えて少し歩くと…見える見える。
 
 
雲(霧?)の流れが早くて、あれよあれよという間に隠れてしまった。
 
 
霧が晴れるのを待ちつつしばらく歩いているうちに…
ようやく全貌を拝むことができた。
 
 
こうして改めて眺めてみると…
何とも美しいフォルム。
 
曇り空を見上げながら、珍しく "みいはあ" な気分になった一日であった。
 
posted by 小澤和也 at 12:03| Comment(0) | 日記

2012年05月22日

モンジャーニ

モンジャーニ公演
〜宮崎京子と陽気な仲間達〜
「日本、世界の名曲を楽しむ夕べ」
を聴く。
(18日、三鷹市芸術文化センター 風のホール)
 
 
オペラアリア、カンツォーネから日本歌曲まで、盛りだくさんで肩の凝らないコンサート。
ピアノは今野菊子さん、
そして谷本奈津恵さんのオーボエ&市川聰子さんのコントラバスが彩りを添える。
ステージの雰囲気はこんな感じ。
 
(こっそり撮らせていただいた)
 
宮崎さん、今野さんは立川オペラ合唱団の指導者仲間。
「モンジャーニ」、どんな意味かと思ったら…
造語なのだとか。
もんじゃ焼から来ているらしいのだが、詳細は不明。
 
第一部のトリで歌われたサントゥッツァのアリア(カヴァレリア・ルスティカーナ)がやはり圧巻。
中田喜直の歌曲「ゆく春」「さくら横ちょう」も佳かった。
 
そしてもう一つの収穫が…
「山形賛歌」(岩井邦夫作詞・作曲)。
今回初めて聴いたのだが、これが明るくのびやかで素敵な曲!
(ちなみに宮崎さんは山形のご出身)
よくトレーニングされた混声合唱で歌ったら、すごく綺麗なのではないかしら…?
 
宮崎さん、そしてご出演の皆さん、
お疲れさまでした!
 
posted by 小澤和也 at 01:15| Comment(0) | 日記

2012年05月20日

新調

写真.JPG
今朝届いた勉強用のデスク。

気分一新。
posted by 小澤和也 at 13:17| Comment(0) | 日記

2012年05月17日

まずはグラウンド1周

立川市民オペラ合唱団のレッスンへ。
先週に続いて「みんな、家へ帰ろう〜乾杯の歌」のおさらい。
次いでフィナーレの数小節の音取りも済ませ…
ひとまず「カヴァレリア・ルスティカーナ」の譜読み第一段階が終了した。

ここまで2ヶ月弱。
多少早足なのは織り込み済みだ。
次週からまた冒頭に戻り、クオリティを上げてゆく。

練習の最後に、メンバーの皆さんにこう伝えた。
『さあ、これでグラウンド1周しました!
来週から2周目ですよ。
立ち稽古が始まるまでに…最低グラウンド3周しますからね〜!』

本番は12月。
「コーラスが素晴らしかった!」
こんな風に思っていただける公演にしたい。
posted by 小澤和也 at 23:59| Comment(0) | 日記

2012年05月16日

楽しいやら悔しいやら

背伸びしながら通う中級オランダ語講座。
昨日がちょうど折り返しの5回目だった。

例の「貸別荘」ロールプレイング会話からスタート。
クラスの皆さんの話すストーリー(もちろんフィクションだろう)がとっても面白い。
「エアコンが効かないので窓を開けたら植木鉢を下へ落としてしまった」
「風呂のお湯が溢れ、濡れた床で滑って骨折したみたい…医者へ行こうにも持ち合わせが無いんだけど」
「部屋に入ったらいきなりゴキ○リが…」etc.
"kakkerlak" という単語をこんなに早く知ることになるとは…
(確かに、英語の「コックローチ」に似ている)

大笑いしながらのレッスン。
楽しかった。
そして…ちょっぴり悔しかった。

がんばろっと。
posted by 小澤和也 at 23:59| Comment(0) | 日記

2012年05月14日

振りながら考えたこと

専修大学オケプローべへ。
普段は週末に行くのだが、今回は珍しく平日夜の稽古。

まずはフンパーディンク「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲から。
明るく屈託のない小品だが、響きは比較的厚く、オーケストレイションも精妙である。
楽器間のバランスや旋律パートのニュアンス付けを細かくチェックしてゆく。
スコアから読み取れる内容を音化するだけでも、様々なニュアンスが生まれてくる。
あたかも複数の絵具を微妙に混ぜ合わせて無限の色合いを創っていくように…

休憩を挟んで、シベリウス/第2交響曲に取り組む。
今日は後半の二楽章。
運動性に勝る第3楽章はともかく、壮大なフィナーレでは各自の音色に対する明確な意識が無ければただの打ち上げ花火になってしまうような、そんなシベリウスの音楽である。
もちろんこの作品は標題音楽ではないけれど、これが作曲された時代背景を考えるとき、ある種の強いメッセージを感じないわけにはいかない。
具体的な味付けはマエストロに委ねるしかないが、そのための心構えをメンバーに伝えることはできる。

合奏が終わりに近づく頃には、オーケストラの音はガラリと変わっていたように思う。
音楽って、ほんとうに不思議なものだ。

6月の演奏会本番に向けて…
頑張れ、専フィル!
posted by 小澤和也 at 23:48| Comment(0) | 日記

2012年05月09日

ご難続きの貸別荘

昨日は久しぶりのオランダ語講座。
 
「ゴールデンウィークはどうだった?」
講師のTimと受講生の方々のやり取りを必死に聞く。
話題の展開が早くて…もう大変。
仕方なく今回も、"想像力"をフル回転。
 
この日の会話練習はこれ。
「ご難続きの貸別荘にて」
 
1)リビングのライトが点かない。
2)様子を見ようとテーブルに登るが、これがガラス製!
天板にヒビが入ってしまう。
3)驚いてテーブルから転がり落ちた弾みで…
4)サイドテーブルのワイングラスも粉々に。
 
ここまででも充分過ぎるほど凝った設定。
さらに…
会話の登場人物がなんと、
この「彼」と、貸別荘の受付窓口係!
 
何だかすごい教材だ。
 
来週、きっと僕の番が回ってくる。
ストーリーをこしらえて、準備しておかないと…
posted by 小澤和也 at 23:32| Comment(0) | 日記

2012年05月06日

スーパームーン

この二日間、巷でにわかに盛り上がったスーパームーン現象。
 
昨日の夕方、自宅近くにて。
マンションの避雷針?とたまたま重なって、串刺しのように…
 
【スーパームーンとは】
通常の満月よりも大きく明るい満月のこと。
詳しい理屈はよく分からないが…
月の公転軌道が楕円形なので、月が地球に接近するタイミングと満月とが重なるとスーパームーンになるらしい。
NASAによれば、今回は2012年の他の満月より14%大きく、30%明るいそうである。
 
言われてみれば、確かに大きく見えなくもなかった。
 
そして今晩、
仕事を終えて外へ出てみると…
すでに高く昇ってしまっていたが、
大きさはともかく、やたらクッキリと明るく見える月だった。
綺麗だったな…
 
「満月の夜は云々〜」
といった類の噂(迷信?)にはまったく興味がないが、
こうしてゆっくりと空を見上げるのは、実に気分のよいものだ。
posted by 小澤和也 at 23:26| Comment(0) | 日記

2012年05月05日

洞窟の中から…

先日久しぶりに、メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」のスコアを手に取った。
すると…
 
(ん?何か挟まってるな)
 
出てきたのは、ホチキスで留められたコピーの資料。
 
 
團伊玖磨「北の海で」
週刊朝日カラー別冊 1969年
 
と、手書きの文字で書き込みがある。
(どなたかから戴いたものだと思うが…
申し訳ないことに全く記憶がない)
 
この「北の海で」、スコットランドから無人島スタッファへ渡り、実際に洞窟を訪れた團先生の紀行エッセイだ。
ひとまずスコアを傍に置いて、一気に読み終えてしまった。
さすがは読み手の心をぐっと掴む先生の文章である。
 
(コピーなので…残念ながら白黒)
 
文中に、フィンガルの名の由来について触れられていた。
少し長いが、引用させていただく。
 
フィンガルとは、アイルランドの民話に出現する、へブリディーズ群島を初期のヴァイキングも侵略から守った英雄 Fionn McCoul の名前から由来したと言われている。
この人物は実在の人物とも言われ、実在説では、3世紀に活躍し、西暦283年にボイン川の近くの戦いで死んだ巨人的英雄の事であると言う。
この英雄の名は、スコットランド語では Fionn na Ghal ー勇気の大将ーと呼ばれ、それが転じてフィンガルとなった。
 
読みながら…
無限のイメージが膨らんでゆく。
 
ほんの少し、この美しい音楽が僕の近くにやってきたような気がした。
posted by 小澤和也 at 00:00| Comment(0) | 日記

2012年05月03日

「傑作の森」の入口

今日も家で読譜に励む。
その合間合間に、凝った脳味噌をほぐすべく好きな音楽をかけるのがいつものやり方。

今朝の気分はなぜか〈中期のベートーヴェン〉だった。
「よし、ならばとことん味わおう」ということで…

第4ピアノ協奏曲(作品58)
ラズモフスキー四重奏曲(作品59-1〜3)
第4交響曲(作品60)
と続けて聴く。

どの曲も、何という幸福感に満ちた響きであろうか。
知情意のバランスが素晴らしい。
聴く側、奏でる側の双方にこの上ない充足がある。
やはり…中期のベートーヴェンは佳いなあ。

そして、いま聴いているのが
ヴァイオリン協奏曲(作品61)。
これが終わったら、もうひと頑張りするか…
posted by 小澤和也 at 00:37| Comment(0) | 日記