2012年12月31日

シューベルト/ピアノ・ソナタ考

 
ここのところ、仕事を離れてよく聴いている音楽、それがシューベルトのpfソナタ。
それも、20代前半に書かれた青春真っただ中の作品群である。
 
1817年
イ短調 D.537(第4番)
変ホ長調 D.568(第7番)
ロ長調 D.575(第9番)
1819年
イ長調 D.664(第13番)
完成されたものだけでもこれだけあるのだ。
 
『…シューベルトの音楽は魂から流れ出したものがそのまま楽譜になっている感じ。…無垢の音楽。無防備を通り越している。』
数日前、Twitter上でテノールの山枡信明さん(ドイツ在住)とシューベルトのpfソナタについてお話しした際の、氏のツイートである。
まさに的を射た言葉!
ソナタ形式という「鋳型」のような枠の中での、極限のカンタービレがそこには感じられる。
特に、上記D.664のイ長調ソナタはその最上の例ではないだろうか。
すべての抑制から解き放たれたかのような、なんと幸福な音楽…
 
さて、シューベルトが尊敬していた同時代の巨匠ベートーヴェンは、あのガッチリと構成感の強い「熱情ソナタ」(さらには「田園」「第5」交響曲など)を書いたのち、少しずつ作風を変えていった。
1809〜14年頃の作品、
pfソナタで言えば…第24〜27番(第26番は有名な「告別」ソナタ)、
弦楽四重奏ならば…第10番「ハープ」や第11番「セリオーソ」、
そして交響曲では…第8、そしてあの第7!
これらに共通するのがやはり「カンタービレへの志向」である。
旋律の息が長くなり、歌謡的な要素が強くなっていくのだ。
 
この変化を自身の中に取り込み、天賦の才能を活かし、流れるような筆で「歌うソナタ」を書いたのがこの時期のシューベルトなのではないだろうか。
【その後、シューベルトにも「ペンが進まなくなる」ときが来る(1820〜22年頃)。
そして、ベートーヴェンはさらに深遠を極めた作風で晩年の傑作を書き、シューベルトも独自の深化を遂げていったのは周知の通りである】
 
シューベルトといえばまず「歌曲」なのだろうが…
これらの若さ溢れるソナタたちも、彼の音楽の持つキラキラとした魅力をいかんなく発揮していると思う。
posted by 小澤和也 at 07:28| Comment(0) | 日記

2012年12月30日

非常食の試食

 
非常食仕様の缶入りパン(頂き物)の賞味期限がきていたので、開けてみた。
 
 
中身は驚くほどしっとり柔らか。
「温めるとより美味しくお召し上がりになれます…」
とあったので、さっそくレンジでチン。
 
 
一口食べてみると…
普通にイケる!
パンの缶詰というのは初体験だったが、こんなに美味しいとは!
 
有事に備えて、改めて補充しておかないといけないな。
棚の中はあと、ビスコとリッツがあるのだが…
何事もなく賞味期限を迎えて、また今日のように気軽に試食できることを願うばかりだ。
 
posted by 小澤和也 at 23:58| Comment(0) | 日記

2012年12月29日

今年のコンサート聴き納め

 
 
「クローバー Bachを歌う」を聴く。
(@オペラシティ・近江楽堂)
 
クローバーは9名編成のアカペラ・ヴォーカルグループ。
うち、お声を掛けてくださったSさんはじめ、Mさん、Kさんと知り合いが三人!
それだけでももう楽しみ。
 
 
プログラム前半は、中世・ルネサンスのポリフォニーと日本のアカペラ小品を並べたもの。
オープニングで歌われた作者不詳のカノン「夏は来たりぬ」が、会場に柔らかな気分を振り撒く。
前半のなかでは、シンプルで美しい響きのタリス "If ye love me" と、大中寅二「夕べの祈り」の2曲が特に良かった。
この大中作品は、かなりレアなものなのだそうだ。
 
休憩を挟んで…
メインのバッハ/モテット第3番 "Jesu, meine Freude" (BWV227) が歌われた。
指揮の松平敬さんによる丁寧な解説は、多くの聴衆にとってこの楽曲の理解の助けとなったであろう。
演奏は所々ヒヤリとする場面もあったが、作曲家への敬意と歌う喜びの感情に溢れたものだった。
 
これにて、
2012年のコンサートは聴き納め。
来年も素晴らしい聴体験ができますように。
 
 
posted by 小澤和也 at 23:14| Comment(0) | 日記

2012年12月25日

My Homeland Chorus

 
 
東京農工大学・女子美術大学
混声合唱団 第55回定期演奏会へ。
(24日、三鷹芸術文化センター風のホール)
 
農工グリーも、そして女子美音楽部とも毎年関わっているが、「混声リサイタル」を聴くのは5年ぶり。
 
第1ステージは「黒人霊歌集」。
オーソドックスで、安心して聴けるアレンジ。
それだけに、英語の発音のさらなるブラッシュアップ、
そしてテキストの持つ意味へのより深い共感があればもっと良かった。
 
第2ステージは「どうぶつのうた?」(森山至貴作曲/木坂涼作詩)
音楽、テキストともに活力に溢れた、元気いっぱいの曲。
学生指揮者Uさんのリードのもと、この若い合唱団が歌うのにぴったりの作品だったと思う。
 
 
休憩を挟んでの第3ステージは、
千原英喜作曲の「雨ニモマケズ」。
全4曲、25分を超える大作。
どの楽章もどっしりとした重みを持つが、特にアカペラで歌われる第3曲「野の師父(抄)」から終曲「雨ニモマケズ」が Attacca で演奏されたあたりは心にぐっと来るものがあった。
 
ただ、この接続部を含めそこここに用いられていたステージ照明のフェードin/outが、僕にはかなり煩わしく感じられた。
浅い効果を狙い過ぎたのではないか、音楽だけで充分に表現できたのではないか、と。
 
ホールの豊かな残響にも支えられ、混声合唱団の歌声はとても美しかった。
正直なところ期待以上であった。
 
この合唱団を25年以上の永きにわたってご指導くださっているのが、高嶋邦幸先生。
 
 
僕がこの団に入部したまさにその年からである。
この日僕が会場へ駆けつけた目的のうちの半分は、先生の指揮を拝見することであった。
あの時と全く変わらない、若々しく柔軟な、歌うようなタクト。
懐かしさを覚えると同時に、実に学ぶべき点の多い、美しい姿であった。
(ゆっくりお話しできなかったのが残念…)
 
合唱団の皆さん、お疲れさまでした。
 
 
posted by 小澤和也 at 22:36| Comment(3) | 日記

2012年12月21日

煌めく歌声

 
 
東京ヴォイシズ
クリスマスコンサート2012へ。
(20日、ミューザ川崎・市民交流室)
 
東京ヴォイシズはダブルカルテットのヴォーカルアンサンブル。
立川のカヴァレリアでご一緒した齋藤佳奈子さん(MSop・ルチア役)に今回お誘いいただいた。
市民合唱団の男声を支えてくださった荒木俊雅さん(Ten)もここのメンバー。
 
 
林光編曲の日本抒情歌集からポピュラーなクリスマスソング、讃美歌、そしてJ.ラターの作品まで、美しい歌が目白押し。
特に僕の心に残ったのが
武満徹「死んだ男の残したものは」…林光編(未出版とのこと)
ラター "The Lord bless you and keep you"
 
ダブルカルテットは、いわゆる「合唱」という形態の基本形だと思う。
響きの「厚み」そして「純度」をともに究めることのできる編成。
(SopとAltを一人ずつ増やしたらバランスは更に良くなるかもしれない)
 
(女声コーラスをバックに「ママがサンタにキスをした」熱唱する荒木さん)
 
齋藤さん、荒木さん、
楽しいひとときをありがとうございました。
 
posted by 小澤和也 at 00:53| Comment(0) | 日記

2012年12月19日

ご来場御礼

 
 
立川市民オペラ
「カヴァレリア・ルスティカーナ」、
大盛況のうちに終演。
(15日、アミューたちかわ)
 
まず森山京子さん(サントゥッツァ)、山田精一さん(トゥリッドゥ)をはじめとするソリスト陣が何といっても素晴らしかった。
殊に、森山さんの迫真の演技と歌唱は、僕の中でのサントゥッツァ像を一新させるものであった。
 
 
今回、正式に合唱指揮として初めてご一緒した市民オペラ合唱団。
最後の最後まで、細部にわたる音楽創りに応えてくださった。
そして…
(団内では"CS"と呼ばれている)若い歌手の皆さんによる合唱パートのサポート、これがほんとうに有難かった。
"Regina Coeli"でのクリアでかつReligiousな歌声が忘れられない。
 
素晴らしい音楽仲間、
陰になり日向になり支えてくださったスタッフの方々、
そしてよき聴衆の皆さまのお蔭をもって心に残る公演とすることができたと思う。
 
合唱指揮と副指揮の兼任は正直なところハードであった。
けれど、最後の音が消えた直後の万雷の拍手、そしてメンバーの達成感にあふれた笑顔に触れ、報われた思いとともに熱いものがこみ上げてきた。
 
 
合唱団の皆さん、お疲れさまでした。
次の「アイーダ」もがんばろう!
posted by 小澤和也 at 01:08| Comment(0) | 日記

2012年12月15日

光るタクト・コレクション

 
舞台袖や、客席後方のブース(調光室、映写室など)がオペラ公演中の主な仕事場となる副指揮者。
そんな我々にとっての必須アイテムが…
 
 
ペンライト。
オーケストラピット内のマエストロが見えない歌い手さんのために、光を用いて指揮をする。
 
「このタイプが使い良いんだ」と先輩から教わって長年使っているのがこのタイプ。
(先端の赤い部分は僕が巻いたビニールテープである)
 
去年、改めて同じものを買おうとしたのだが、店頭でとんと見かけなくなってしまった。
代わりに購入したのがコレ。
 
 
軽くて振りやすいのだが、先端部の前面しか光らないのが欠点。
よって、テープの巻き方をこのように工夫する。
 
そして一昨日…今回のカヴァレリア公演舞台稽古。
天井から吊り下げられた布越しに、コーラスが "Regina Coeli" を歌う。
「ライトが見えませーん!」
 
そこで、急いで昨日購入した最新兵器(?)。
 
 
輝度はこれまでのものの約4倍。
(ヨド○シカメラの店員さん曰く)
かなり太いので長時間の指揮には不向きだが、威力は満点。
舞台でのテストもクリア!
 
大きさを比較すると…
 
 
今日の公演ではこれらが、「お客様に決して見えないところで」活躍してくれることだろう。
posted by 小澤和也 at 10:30| Comment(0) | 日記

2012年12月13日

舞台稽古

 
 
Beviam! Beviam!
(《乾杯の歌》の場面)
 
立川カヴァレリア、今日から舞台稽古。
公演までの、たった三日間のために組まれたこの舞台。
この空間でソリスト、そして合唱団は凝縮された時を過ごすのだ。
 
入退場や立ち位置、動線などを確認する場当たりに始まり、音楽を付けての稽古、通し練習へと進む。
ピット内では、この公演のために編成された器楽アンサンブルとマエストロとの初顔合わせ。
舞台裏では、教会で響くオルガンが奏でられる。
 
予想していた通り、稽古はあれこれと慌ただしい展開に。
課題もいろいろ。
それでも…
全て解決可能と信じている。
 
「佳いオペラを創りたい」
 
最終目標は皆同じなのだから。
 
明日はまず合唱団へのダメ出し稽古、そしてサウンドチェック(すべての音楽の音量バランス確認)、
夕刻からはいよいよゲネプロだ。
 
posted by 小澤和也 at 23:35| Comment(0) | 日記

2012年12月09日

佳境のカヴァレリア稽古

 
 
気付けば、公演まであと6日。
立川市民オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」の稽古もいよいよ佳境に。
稽古場での立ち稽古は今日が最後だ。
ソリストも全員参加で、細部に磨きをかけてゆく。
 
一方で、ピットに入る器楽アンサンブルは今日が初日。
ヴァイオリン、フルート(2本)、オーボエ&ピアノという編成だ。
通し稽古に先立って、やはり綿密にプローべを実施。
 
そしていよいよ通し稽古。
合唱団の課題ははっきりしている。
「集中力」だ。
硬くなるのではなく、
「ストーリーの中へ完全に入り込み、かつリラックスした状態」に到達したい。
このメンバーならばきっと出来る!
 
今日はマエストロが不在。
すべての稽古を担当させていただいた。
正味6時間…カヴァレリア三昧。
 
 
残席僅少とのことでした…
みなさま、ぜひお運びください。
posted by 小澤和也 at 23:15| Comment(0) | 日記

2012年12月07日

型破りな役者さん

 
型破りとは…
「型」のある人がやるから型破り。
「型」のない人がやったら、
それは形無し。
 
 
ラジオ子ども電話相談室の中で、無着成恭さんがされたお話(質問への回答)として、中村勘三郎さんが紹介していたエピソードだ。
 
僕の心にずっと、
強く響き続けている言葉。
芸術に携わる者として、肝に銘ずべき言葉。
 
勘三郎さんが亡くなられた。
享年57歳。
あまりに若過ぎる。
残念…ただただ残念だ。
 
ご冥福をお祈りします。
posted by 小澤和也 at 23:57| Comment(0) | 日記

2012年12月04日

「洛北の笛吹き」さんとの待望の出会い

 
 
「京都洛北の笛吹きと楽しむ秋の宵」
(11月24日@横浜市某所)
 
Twitter上で知り合って以来、ずっと仲良くさせていただいているリコーダーの竹内茂夫さん。
先日、ようやくお目にかかることができた。
 
ほぼ全員が何らかの形でどなたかとお知り合い…のような、プライヴェートコンサートのスタイル。
演奏のみならず、楽器紹介や曲目解説を交えての竹内さんの楽しいお話を伺う。
 
この日使われた楽器。
 
これらのほとんどが、我々がよく知るソプラノ/アルト/テナーのリコーダーなのだが、これに材質やピッチの違いなどが加わって、このようなヴァリエーションに!
(A=440の他、415、392、466Hzなど)
 
僕が全く知らなかった楽器も幾つか。
「フラジオレット」と呼ばれるG管のもの。
この大きさ、ご覧いただけるだろうか!
 
孔は表側に4つ、裏側(親指の側)に2つだそうである。
演奏されたのが『小鳥愛好家の楽しみ』という曲集。
カナリア、紅ヒワ、森ヒバリ、etc.
笛で鳥の鳴き声を真似て楽しむのかと思いきや、さにあらず。
「この曲を鳥に聞かせ、鳴き声を教え込む」という何とも雅な趣味が、18世紀頃のヨーロッパにあったそうである!
 
もう一つが、「テイバー・パイプ」と呼ばれる笛。
孔は3つだけ。
左手で笛を持ち、右手で太鼓を叩きながら同時に演奏する(!)とのこと。
(この日は笛のみの演奏)
 
会の後半は
「メイキング・オヴ・リコーダーコンソート」。
実は、この日集まった方々のうちの7名が受講生の皆さん!
竹内さんのご指導で、リコーダーアンサンブルを楽しむ、という趣向。
奏者8名、聴衆が僕を含め2名!
 
イザーク「インスブルックよさらば」と、G.ガブリエリ「8声のカンツォン」を楽しむ。
ガブリエリは、僕も金管アンサンブルでよく演奏した曲だったので、懐かしさもひとしお。
スコアを見ながら聴いていたのだが、ついつい本能が働き、途中で落ちてしまわれたパートを歌ってしまった。
(さぞご迷惑だったことだろう…)
 
楽しい集いはあっという間にお開きに。
普段の仕事ではあまり触れることのない時代・ジャンルの音楽に、新鮮な気分を味わうことができた。
竹内さんはじめ、ご参加の皆さんと再会を約す。
posted by 小澤和也 at 16:09| Comment(2) | 日記

2012年12月01日

発売初日

 
 
新宿の某中古CD店でゲット。
イラストレーター、小澤一雄さんのデザインによる「作曲家ピンズ」。
 
ちなみに本日発売!
 
他にもバッハ、ブルックナーがあったのだけれど…
現物を見て、ひとまず保留。
(あんまり可愛くなかった…か?)
 
モーツァルト&ベートーヴェンは、やはり「鉄板」であろう。
そして、
マーラーとショスタコーヴィチが予想外にチャーミング!
気ままに連れて歩くこととしよう。
posted by 小澤和也 at 23:57| Comment(0) | 日記