2013年09月04日

愛聴盤(34)〜ブッフビンダーのベートーヴェン

§ベートーヴェン/ピアノソナタ全集
  ルドルフ・ブッフビンダー(pf)
  ('80〜'82年録音)
 
子供の頃、家にあったケンプの三大ソナタ集。
ピアノが大の得意だった中学時代の親友M君が貸してくれた、グールドのLP。
FMラジオで全曲放送され、エアチェックして聴きまくったブレンデル。
このあたりが僕の、ベートーヴェン/ピアノソナタとの出会いであったか。
 
音楽に目覚めてからも、バックハウス、グルダ、シュナーベル、コワセヴィッチetc.…
いろいろと聴き込んだつもりだ。
それぞれのピアニストによるそれぞれのベートーヴェン像を、この作品群は僕の前に投影し、僕はそれらを味わってきた。
 
そして…このブッフビンダー盤。
僕がこれまで聴いてきた中で、もっとも「作品そのものの姿」を表している演奏だと思う。
そこには、小さな作品を無理に巨大にみせるような手練も、後世に付加された文学的解釈もない。
あるのは、スコアを真直ぐに見据えた意思の力と、決して誇示されることのない、それでいて確かな技術である。
 
名指揮者ビューローが「ピアノ音楽の新約聖書」と称えた32のソナタ。
手にとってパッと開いたどのページから読み始めても、すーっと惹き込まれていく、まさに聖書のような…
僕はクリスチャンではないが、ベートーヴェンのソナタ集は僕にとってまさにそういう存在なのだ。
 
このレコードの中で好きな演奏は…?
到底挙げられないのだけれど、敢えて(直感的に)選ぶならば
・変ホ長調op.27-1(第13番)
・ホ短調op.90(第27番)
・変イ長調op.110(第31番)
といったところだろうか。
 
 
 
posted by 小澤和也 at 23:52| Comment(0) | 愛聴盤