2013年12月20日

シューマンを辿る(3)

 
§弦楽四重奏曲第3番イ長調 op.41-3
 
前にも軽く触れたが、1842年はシューマンの「室内楽の年」である。
弦楽四重奏曲の作曲過程について、彼の日記には次のように書かれているそうだ。
 
6/04  イ短調四重奏曲(=第1)に着手
6/11  第2の四重奏曲に着手
6/24  第1の四重奏曲完成
7/05  第2の四重奏曲を書き上げる
7/08  第3の四重奏曲に着手
7/22  第3の四重奏曲完成-歓喜
 
2ヶ月弱のあいだに、立て続けに3曲を書き上げたことになる。
この年、対位法・フーガ、そして弦楽四重奏曲の研究に集中して取り組んだシューマン…
その成果は1作ごとの著しい進化となって現れ、素晴らしいイ長調カルテットが完成したのだ。
 
第1楽章はソナタ形式。
7小節の短い序奏部、そして第1主題に現れる旋律は5度下行、階名で「ラーレ」と進行する形で始まる。
これは愛するクララ(Cla-ra)の名前からとったといわれている。
その真偽はともかく、一度聴いただけで耳に残るチャーミングなテーマだ。
リズミカルな伴奏に乗って伸び伸びと奏でられる第2主題はさながらピアノ小品のよう。
隙のない形式感の中にもさりげない工夫が散りばめられた、端正なフォルムのソナタ楽章である。
 
第2楽章はスケルツォ的であり、同時に変奏曲の形をとる。
続くアダージョ・モルト(ソナタ形式的)の第3楽章は、主題もさることながらそれに絡む各楽器の対位法の綾がこのうえなく美しい。
第2主題に相当する部分で刻まれる付点リズムが、一抹の不安、メランコリーを感じさせる。
 
そして第4楽章。
ロンド形式とみてよいだろう。
第2楽章と同様、鋭いリズムで切り込んでくる主要主題は、以降様々な調性で現れる。
2つの副次主題もシンコペーションの連続!
対照的に所々、民謡風の旋律がエピソードのように奏でられ、実に効果的な変化を感じさせるのだ。
楽章後半もシューマンの筆は冴え、ダイナミックで才気に溢れたフィナーレを構築してゆく。
そして迎える大団円…
紛れもなく "若き巨匠" の音楽だ。
 
新しい音楽を志向しつつも古きよき伝統をを踏まえんとした30歳代のシューマン。
バッハ、そしてハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの深遠な世界に何としても迫りたかったのだろうな…
そんなシューマンの "熱さ" がこれら3曲からは感じられるのである。
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 21:59| Comment(0) | 音楽雑記帳