2015年05月13日

1893年のチャイコフスキー

 
 
 
2月、新しい交響曲の作曲に着手。
(着想は前年よりなされていたようだ)
8月に全曲を完成。
10月28日、自身の指揮で初演。
2日後、『悲愴』の副題を出版社に指示。
そして…
11月6日、没。死因は諸説あり。
 
交響曲第6番『悲愴』作品74。
その激しく沈痛な曲想に加え、初演直後の急死という余りにも衝撃的な出来事により、以来この作品、そして彼の最晩年には暗く重苦しいイメージがつきまとうこととなった。
死因のひとつに(強制された)自殺説があるのもその証しのひとつであろう。
 
しかし…
チャイコフスキーの1893年はこれだけではない。
出版社からの依頼によるものではあるが『18のピアノ小品』という実にチャーミングな曲集を書いているのだ。
作曲は4月、比較的短い期間で一気に書き上げたようである。
一見、子供向けの小曲のようにも感じられるが決してそうではない。
それぞれに表題のつけられた全18曲、なかでも「子守歌」「瞑想曲」「悲歌」など実に味わい深い佳品たちである。
 
以下、僕の頭の中に浮かんだあれこれをかいつまんで。
 
第1曲「即興曲」…
主部はどことなくシューベルト的。夢見るような中間部は『くるみ割り人形』を連想させる。
第4曲「性格的な舞曲」…
スペインの陽光。中間部はなぜかシューマン風。
第7曲「演奏会用ポロネーズ」…
『オネーギン』の華麗なる残照。
第9曲「シューマン風に」…
チャイコフスキーのユーモアセンスが抜群!
第10曲「幻想的スケルツォ」…
右手の細やかな音型に『悲愴』交響曲第3楽章を思わせる瞬間がある。
第12曲「いたずらっ子」…
タイトル共々『子供の情景』を連想させる可愛らしさ。
第15曲「ショパン風に」…
出だしだけ聴くとまあこんなものかと思うが、中間部に入ると思わずニヤリとしてしまう。
第16曲「5拍子のワルツ」…
曲想こそ異なるが、『悲愴』交響曲第2楽章と何らかの繋がりがあるように思えてならない。
第18曲「踊りの情景」…
弦楽セレナードの終楽章を思い出させる激しいロシア舞曲。
 
第5交響曲以降、『眠りの森の美女』『スペードの女王』『くるみ割り人形』などの傑作を次々と発表してきたチャイコフスキー。
この『18のピアノ小品』、規模こそ小さいものの彼の音楽的充実と当時の清澄な気分とを表した「隠れた名作」だと思う。
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 09:45| Comment(0) | 日記