『双子の兄弟』D.647 全1幕からなるジングシュピール 作曲:1819年1月完成 台本:ゲオルク・エルンスト・フォン・ホフマン 場面:ライン地方のある村 登場人物: 村長(Bass) その娘リースヒェン(Sop) アントン(Ten) 二人の負傷兵フランツ&フリードリヒ・シュピース(Bass) 地方官(Bass) 農夫たち(合唱) シューベルト22歳のときの作品。 上演時間は約45分、ドイツ語による歌唱とダイアログ(台詞)からなる。 (モーツァルト『魔笛』と同じスタイル) 完成の翌年、ウィーンのケルントナートーア劇場にて7回上演されたというから、まずまずの評判であったのではないだろうか。 村長の娘リースヒェンはこの日が18歳の誕生日。 彼女にはアントンというフィアンセがいる。 そこへ突然、フランツ・シュピースという男が登場。 フランツはリースヒェンの名付け親であるとともに、彼女との結婚の約束を18年前に(!)村長に取り付けていた、というところから騒動が始まる。 フランツが役所へ出掛けている間に今度は、戦死したと思われていたフランツの双子の弟フリードリヒが帰ってきて... あとは定番の人違い、勘違いのドタバタ劇となる。 (フランツは右眼に眼帯を着けているが、一方のフリードリヒは左眼に...など) 最後にはすべての誤解がとけ、リースヒェンとアントンは無事に結婚、双子の兄弟も再会が叶ってめでたしめでたし。 序曲はソナタ形式。 その明るさ、軽さはロッシーニ風であるが、旋律の歌ごころや転調の妙はシューベルトの個性そのものだ。 第1主題はリズミカルな弦のユニゾンと爽やかな木管のレガートで始まる。 第2主題は属調関係にあるイ長調ではなく、ヘ長調で示される。 朗らかでコミカルなクラリネット。 シューベルトらしい転調を経て、古典形式に則って属調に落ち着き呈示部を閉じる。 展開部はきわめて短い...モティーフの反復と、そしてここでもさりげなく美しい転調的展開をみせる。 再現部はほぼ型どおりに進むが、第2主題は原調で...と思いきや変ロ長調に。 (そう来ましたか!) 4分あるかないかの小品だが、『フィガロ』や『バルビエーレ』の序曲と並べても遜色ない完成度である。 ストーリーは他愛のないコメディであるが、シンプルに面白いと思う。 (個人的には好きである) セミステージ形式、ダイアログは日本語にして上演...なんていうのはどうだろうか。 |
2016年02月24日
【中期のシューベルト】双子の兄弟
posted by 小澤和也 at 23:08| Comment(0)
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