交響詩『フィンランディア』。 フィンランドの作曲家シベリウスによる、あの名曲中の名曲である。 久しぶりの読譜に際して今回、初めてその "原型" なるものに当たってみた。 1899年、ロシア皇帝ニコライ2世の名のもとにいわゆる「二月宣言」が発せられ、フィンランドの自治が大きく脅かされる。 言論についてもロシア当局からの圧力がかかる事態となり、これに対してフィンランドの新聞関係者が抗議運動を展開した。 同年11月には報道集会が開催され、そのメインイベントとして歴史劇が上演される...そのための劇付随音楽を任されたのがシベリウスだった。 この機会に彼が作曲したのは以下の7曲である。 前奏曲 第1景:ヴァイナモイネンの歌 第2景:フィンランド人は洗礼を授かる 第3景:ユーハン公の宮廷 第4景:三十年戦争のフィンランド人 第5景:大憎悪時代 第6景:フィンランドは目覚める この終曲『フィンランドは目覚める』こそ、交響詩『フィンランディア』の原型なのだ。 翌1900年7月、この交響詩はヘルシンキで初演される。 曲の冒頭に現れる、金管による重々しい「苦難のモティーフ」。 交響詩では "Andante sostenuto" のテンポ指示だが、劇音楽ではそれよりも幾分速い " Allegro moderato" だった。 改作にあたって、苦しみや悲劇性の表現がより強調されたことになる。 その後、聴感上は大差なく進んでゆくのだが、例の賛歌風の美しい旋律が歌われたのち「おっ!」と思わず声を上げたくなる瞬間が訪れる。 最後のクライマックス直前、オーケストラ全奏によりシンコペーションで畳み掛ける場面〜 交響詩ではこのようになっている。 一方、劇音楽ではこう。 (1stヴァイオリンのみ抜き書き) シンコペーションの音価が倍、すなわち「畳み掛け」の切迫の度合いが半減しているのだ。 交響詩を知っている我々にとってはやや物足りなさを感じるかもしれない。 そしていよいよ大団円へ。 交響詩ではあの「賛歌」が堂々と響き渡るのだが... なんと劇音楽ではこれが無い! 代わりにあるのは「闘争への呼びかけのモティーフ」(譜例) の連射なのだ。 なんというきな臭さ! フィンランドの輝かしい未来を見据えたような交響詩のエンディングに対し、劇音楽のそれは「今まさに闘いが継続しているのだ」という気分を聴く側に強く訴えかけているようだ。 今回この劇音楽に触れ、若きシベリウスの「粗削りの魅力」を感じた。 チャイコフスキーやリムスキーからの影響を受けつつ、自己の音楽表現を模索するシベリウスの姿がここにある。 |
2016年04月28日
フィンランドは目覚める
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2016年04月21日
演奏会のごあんない
§東京農工大学グリークラブ 第36回演奏会 2016年7月3日(日) 15時開演 都立多摩社会教育会館(立川駅/西国立駅下車) 入場無料・全席自由 清水脩/日本民謡曲集 千原英喜/男声合唱組曲「明日へ続く道」 森山至貴/女声合唱とピアノのための「おてんきのうた?」 混声オムニバスステージ「夏の思い出」 指揮:小澤和也、矢作聡史(学生)、木暮菜々美(学生) ピアノ:宮代佐和子 農工グリー、初の立川進出! 女声学指揮も久々に登場。 新入部員も加わり(僕はまだ会っていませんが)、念入りな準備が進んでいます。 みなさま、どうぞお運びください。 |
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2016年04月17日
食べて応援!
仕事帰りに銀座熊本館へ立ち寄る。 昨日も一時入場制限がかかるほどの大賑わいだったと聞いていたので、覚悟して向かったのだが... 夕方6時過ぎということもあってか、まあまあの行列。 15分ほど待って無事入店できた。 ウィンドー越しの店内の様子。 営業部長・くまモンがお出迎え。 野菜や果物、酒に珍味にラーメンetc... こぢんまりとしたスペースに様々な特産品が所狭しと並んでいた。 僕のイチバンのお目あては「いきなり団子」。 冷蔵ケースの中にあった最後の一箱を奇跡的にゲット! 本日の戦利品がコチラ。 白のいきなり団子をさっそく蒸して... 美味しく頂戴する。 落ち着いた頃にまた立ち寄ってみよう。 「食べて応援」なら僕にもできる。 みなさんもぜひ! |
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2016年04月16日
平成28年熊本地震
今回の大地震で被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。 みなさまのご無事を、そしてみなさまに一日も早く心の平安の訪れますことをお祈りいたします。 2016.4.16. 小澤和也 |
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2016年04月09日
『カルメン』始動、そして
来春の『カルメン』公演に向けて、立川市民オペラ合唱団の今シーズンがスタート。 気分も新たに、さっそく "Habanera" "Toréador" の読譜から。 馴染みのイタリア語から一転、不慣れな鼻母音に悪戦苦闘(?)しながらも、メンバーは皆やる気満々。 ようこそ!80歳の新入団員さん。 大学、そして高校にそれぞれ進学し、一年ぶりの復帰となったT君&Aさん、おかえりなさい! そして... 先月の『ラ・ボエーム』公演直後に急逝された合唱団副団長Oさんを偲び、この日のプローべの結びに全員でヴェルディ/『ナブッコ』〜"Va, pensiero" を歌う。 3年前、長野県大町市の市民芸術祭にゲスト出演した際にも歌った思い出の曲。 (Oさんはこのときも、往復の車中で名MCぶりを発揮されていらしたのだった) メンバーの思いがOさんのもとへ届いていますように。 |
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2016年04月03日
小澤和也 プロフィール
東京生まれ。12歳よりテューバを始める。
東京農工大学工学部を卒業後、1997年より東京音楽大学にて指揮を学ぶ。汐澤安彦、広上淳一の両氏に師事。在学中より『ラ・ボエーム』『魔笛』他のオペラ上演においてP.G.モランディ、船橋洋介両氏らの下で研鑽を積む。
2000年、神奈川新聞社主催「夢つむぐコンサート」出演、指揮活動をスタート。'01年より新国立劇場においてヴェルディ『ナブッコ』『イル・トロヴァトーレ』、プッチーニ『ラ・ボエーム』『トスカ』他の副指揮、助演を務めている。オペラではこれまでにヴェルディ『アイーダ』『仮面舞踏会』、レハール『メリーウィドウ』、白樫栄子『ある母の物語』などを指揮、いずれも好評を博した。'05年、男声合唱組曲『風に寄せて』(中橋愛生作曲)を委嘱・初演、新しい響きの追究にも取り組んでいる。
ベルギー・フランデレンの作曲家、ペーテル・ブノワ Peter Benoit の研究をライフワークとする。'08年「荘厳ミサ "Hoogmis"」日本初演(新潟県長岡市)に際してはピアノリダクションを担当、また合唱指導等にも携わり公演の成功に貢献した。
現在、各地のオーケストラ、合唱団等の指揮、指導を行っている。東京農工大学グリークラブ常任指揮者、立川市民オペラ合唱団、合唱団あしべ指揮者。
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