2016年06月01日

伝記 ペーテル・ブノワ(16)

 
§第9章
 
[ブノワ最初の世俗的オラトリオ『リュシフェル』]
 
1866年6月、エマニュエル・ヒールとの協同作業によるブノワの新作、オラトリオ『リュシフェル』(独唱、二重合唱、小合唱と管弦楽のための)が世に出る。
 
[訳注]
エマニュエル・ヒール(1834-1899)
フランデレンの詩人、散文作家。いわゆるフランデレン運動にブノワらと共に参加。
 
この『リュシフェル』は、(ブノワの音楽的発展の過程としての) 宗教的作品から世俗的オラトリオへの転換を意味するものである。
楽曲自体はなお宗教的バックグラウンドを持つが、作品は教会のためにではなくコンサートホールでの演奏を企図している。
初演は同年9月30日、ブリュッセルのクーデンベルク宮殿にて行われた。
 
詩人E.ヒールのロマンティックな幻影の世界にブノワは大胆さと壮大な構想をもって付曲し、それは自国のみならず海外においても驚きをもって迎えられたー
フランデレン音楽芸術の新たな繁栄の到来を告げるものとして、また同時に力強い、確信をもった、そして不変なるフランデレン音楽の伸長の時代を知らせる作品として。
 
この作品のブリュッセルでの初演ーのちにヘントやアントウェルペンでも演奏されているーによって得た賞賛は、真に輝かしくまた驚異的なものであった。
当時、ブノワの師であるフェティスは予言的な言葉を述べている。
『あの作品は全世界で演奏されるようになるだろう!』
実際に、国境を越えてーオランダで、またとりわけロンドンでもー『リュシフェル』は熱狂的に受け入れられた。
人々は即座に、このように感じ取ったという...自分はいま、注目に値する事象[素晴らしい音楽]を彼固有の方法で語り伝えるすべを持った一人の芸術家の作品に向かい合っているのだ、と。
 
〈スコアの第1ページ〉
 
 
(第9章 完)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 08:03| Comment(0) | 音楽雑記帳