2016年09月11日

番外:「魔王」と「ハンノキの王」

 
デンマークの古い伝承からJ. G. ヘルダーの『ハンノキの王の娘』、そしてゲーテのいわゆる『魔王』へと繋がる「ハンノキ伝説」。
 
つい先日、図書館で「デンマークの昔話」という本を見つけた。
パラパラとページを繰ると...
『ハンの木の子供』という物語が収められている。
オールフ氏の結婚前夜の話とは異なるが、なかなか心に響くものであった。
 
以下、自由に引用しつつあらすじを記す。
 
 
林の中にとあるお百姓夫婦が住んでいた。
二人には小さな娘がいた。
あるとき、その子が外で花を摘んでいると、一人のかわいい子供が現れ、綺麗な花々を見せて娘を誘う。
二人は森の奥深くへと姿を消してしまった。
驚いた両親は急いで捜しに出掛けるが、娘が見つかることはなかった。
数日後の月夜の晩、母親は娘の幻影を見る。
 
それから長い時が経ち...
夫婦の間には男の子が生まれていた。
またある日、その坊やが姉のお墓に花を飾っていると、小さな子供たちが大勢現れ、坊やの手を取って森の中へと入って行く。
両親は慌てて息子を捜しに行くが...無駄であった。
それからしばらくして、母親は悲しみのあまり死んでしまう。
 
数日後のある月夜の晩、父親は二人の小さな子供が花を持って母親の墓へと向かう姿を見つける。
彼が子供たちの名前を呼ぶと、子供の姿はふっと消えてしまい...
そこには花だけが残っていた。
 
「デンマークの昔話」山室静訳
三弥井書店刊 世界民間文芸叢書 別巻 (1978) 所収
 
 
ハンの木に、あるいは「森」そのものに、昔の人々は計り知れない霊的な力というものをどれだけ感じていたことだろう。
あるいはまた、幼くして亡くなった子が転生し、ハンの木の妖精として在り続ける、といったような発想だろうか。
いずれにせよ、現代の我々が考えるそれとはまったく異なる「死生観」を、当時の人々は常に抱きながら暮らしていたに違いない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 18:10| Comment(0) | 日記