2016年11月08日

二十五絃筝のしらべ

 
 
山本亜美 二十五絃筝リサイタル
〜紡ぐ、筝、歌〜 を聴く。
(2日、近江楽堂)
 
ご案内くださったのは、僕が音大に通っていた頃からの友人で作曲家の森亜紀さん。
今回、森さんが二十五絃筝のために書かれた新曲が初演されるということで、期待を胸に会場へ。
 
 
新しい「筝」というと宮城道雄氏の開発した十七絃筝くらいしか思い浮かばなかったのだが、この二十五絃筝は制作されてからようやく25年になるのだそうだ。
 
この日演奏されたのは以下の6作品。
記憶 improvisation 
森亜紀/3つのスケッチ (初演)
湯浅譲二/筝歌「雪はふる」
高橋久美子/「思ひ出」より (初演)
新実徳英/万葉・恋の譜T(改定初演)
森亜紀/つむぐ
 
あたかも会場の温度や湿度、空気の震え具合などを一つ一つ確かめていくかのごとく、おもむろに山本さんの即興演奏が始まる。
その響きは僕の想像をはるかに超えて、玲瓏として澄みきっていた。
もちろん、ここぞという瞬間にはその指先に力を込め硬い (そしてやや歪ませた) 音を奏でる...そのコントラストがえも言われぬ表現の幅広さを感じさせるのだ。
 
森さんの新作は「光のスケッチ」「水のスケッチ」「風のスケッチ」の3曲からなっている。
『ここ (近江楽堂) で演奏されることを念頭に、ひたすら響きにこだわった』と作曲家ご自身がおっしゃっていたとおり、実に彩り豊かな佳品。
そしてリサイタルの "トリ" を飾った「つむぐ」は『山本亜美さんをイメージして書いた作品 (プログラムノートより)』だけあって、楽曲に込められた愛情がすさまじいほどに溢れていた。
それはおそらく奏でる側の山本さんにとっても同じだったのではないだろうか...圧倒的なエネルギーが作品へ注ぎ込まれているように感じられた。
 
その他の曲ではやはり、湯浅氏の「雪はふる」が圧巻。
表現の深さ、そしてそこに選ばれた音色たちの精妙さといったら...!
『海にもゆかな 野にゆかな
かへるべもなき身となりぬ ...』
三好達治の詩との調和も味わい深かった。
 
また高橋氏、新実氏の作品でゲスト出演された青山恵子さん (メゾソプラノ)、そのお声の美しさはもちろんのこと、発せられる "ことば" の明瞭さと表現力の強さに心底感嘆した。
北原白秋の懐かしさを帯びた美しい詩、そして万葉の歌人たちによる雅で素朴なうたが、言葉の粒となって聴く者の心を撃ち抜いてゆくかのようであった。
 
今回、不勉強な僕にこのような新鮮な体験を与えてくださった山本亜美さんと森亜紀さんに、心からの感謝を申し上げたい。
 
 
posted by 小澤和也 at 22:48| Comment(0) | 日記