N響創立90周年記念 ベートーヴェン「第9」演奏会 を聴く。 (23日、NHKホール) この機会は逃したくなかった。 チケット発売初日に席を押さえ、この日が来るのをひたすら待っていた。 早足で颯爽と登場するマエストロ。 昨年のN響定期公演での第1、第2交響曲、そしてエロイカを聴いて想像していたとおり、基本テンポを速めにとったストイックなベートーヴェン演奏である。 譜面台の上には閉じられたままのベーレンライター版のスコア。 (ブロムシュテットさんがこれを開くことはない) 第1楽章は推進するエネルギーを注入し続けるマエストロの指揮と、確実に歩を進めようとするオーケストラとの間で息がピタリと合った(!)、奇跡的なまでに絶妙なテンポをもって始まり、その求心力は終始損なわれることがない。 この第1楽章にこれほどまでに「(楽曲構成的な) 隙の無さ」を感じたのは不覚にも初めてであった。 続く第2楽章。 対向配置の弦楽セクションが織りなす冒頭のフガートは音響的にはもちろん、視覚的にも愉しい。 そして、通常省略されることの多いスケルツォ主部後半のリピート (159-399小節) をブロムシュテットさんは楽譜どおりに実行する。 楽曲のフォルムはやはりこのほうが断然美しいと、聴きながら改めて確信した。 第3楽章の速度指示は実に演奏家泣かせだ (と僕は思っている)。 主部は "Adagio molto e cantabile" なのに (敢えて「なのに」と書かせていただく) 四分音符=60、副次部は "Andante moderato" で四分音符=63、なのだ。 だから、往年の名指揮者たちはしばしば、このアダージョを非常にゆっくりと演奏する。 しかしブロムシュテットさんはここでもスコアに忠実であった。 曲の冒頭、一瞬アンサンブルが乱れる。 変な言い方なのだが...とても解る気がした。 オーケストラはすぐに立て直し、それ以降はこのうえなく美しい、まさに極楽境の如き音楽を奏でてゆく。 (もっとずっと聴いていたかった、というのが本音である) そしていよいよ第4楽章へ。 東京オペラシンガーズによる合唱が何といっても素晴らしかった...特にアルトの響き! 冒頭の決然たるレチタティーヴォ、同じく低弦に始まる「歓喜の主題」の気高さ、超速のマーチ (テノール独唱が弱かったのが残念) とそれに続くオーケストラのポリフォニーのせめぎ合いetc. と素晴らしい瞬間の連続であったが、なかでも僕が思わずハッと息を飲んだのが第627小節〜の楽節である。 (コーラスが "Ihr stürzt nieder, Millionen?" と歌うその直前) ヴァイオリンとコントラバスが沈黙し、ヴィオラとチェロのみが木管を伴って神秘的なコラールを奏するこの部分、対向配置では両弦楽器と木管がステージ中央に集まり、精妙に融け合った響きをつくり出すのだ! 音楽を「体験」する。 コンサートへ出かけてこのような気分になったのは久々だ。 ブロムシュテットさんの『第九』...忘れられぬ、否、忘れたくない演奏会であった。 僕の目指す音楽に最も近い (もちろんそれは遥か彼方にあるのだが) ものが、あの演奏の中にはあったのだ。 |
2016年12月26日
ブロムシュテットさんの『第九』
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2016年12月19日
「エロイカ」を振りながら
湘南アマデウス合奏団のプローべへ。 (18日、藤沢市内) 来春の演奏会へ向けての本格的な練習がこの日からスタート。 この半年は「エロイカ」交響曲を中心に何回かの合奏をご一緒する。 第1楽章はソナタ形式。 ロマン的情感がいまにもあふれてこぼれ落ちそうな、その一歩手前ギリギリで (それでもしっかりと) 均衡を保っている、エネルギーに満ち満ちた音楽だ。 気分に溺れてしまうことなく造形美の実現を目指す...決して簡単ではないけれど、なんとやり甲斐のある表現行為だろう。 悲哀を帯びた、それでいて高貴な佇まいを損なうことなく綴られる第2楽章「葬送行進曲」、3本のホルンが大活躍する野趣に富んだ第3楽章スケルツォを経て、音楽はフィナーレへと一気に流れ込む。 その終楽章の "器" にベートーヴェンは、(ソナタでもロンドでもなく) 変奏曲を選んだ。 旋律主題はバレエ音楽『プロメテウスの創造物』で用いられたもの。 楽章中盤に入ると、音楽はにわかに熱を帯びてくる。 フガート部を経てクライマックスへ。 そしてPoco andanteの大団円へと到達する部分を指揮していて、僕はこのうえない幸福感を覚えたのだった...創造主の存在を確信するかの如くに。 『expression という言葉は元来、物を圧し潰して中身を出すという意味の言葉だ。古典派の時代は形式の時代であるのに対し、浪漫派の時代は表現の時代である。圧し潰して出す中身というものを意識しなかった時代から、自明な客観的形式を破って、動揺する主観を圧し出そうという時代に移る。形式の統制の下にあった主観が動き出し、何も彼も自分の力で創り出さねばならぬという、非常に難しい時代に這入るのであります。ベエトオヴェンは、こういう時代の転回点に立った天才であった。』 (小林秀雄「表現について」より自由に引用) ベートーヴェンの音楽は、やはり僕にとってのライフワークだ。 |
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2016年12月08日
演奏会のごあんない
来週の木曜日、立川市民オペラ合唱団によるミニコンサートが開催されます。 入場無料ですが整理券が必要。 整理券はたましんRISURUホール1階受付にて配布しています...電話予約もOKとのこと。 TEL:042-526-1311 §立川市民オペラ公演2017 プレイベント オペラ「カルメン」の魅力 〜合唱曲で綴るミニコンサート〜 12月15日(木) 19:00開演 たましんRISURUホール 小ホール 合唱:立川市民オペラ合唱団 指揮:小澤和也 ピアノ:三浦愛子 みなさま、どうぞおはこびくださいませ。 |
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| 演奏会情報
2016年12月03日
立川『カルメン』Tシャツ
立川市民オペラ『カルメン』 合唱団員UさんのデザインによるTシャツ、完成! 背面デザイン。 イイネ! オペラ「カルメン」の魅力〜合唱で綴るミニコンサートが12月15日(木)に開催されます。 19:00開演、たましんRISURUホール (立川市市民会館) 小ホールにて。 入場無料ですが整理券 (ホール窓口で配布) が必要とのこと。 みなさまのご来場をお待ちしております。 |
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| 日記