2017年06月28日

久々の『動くケルテス』

 
 
中古ソフト店にて、ハンガリーの名指揮者イシュトヴァン・ケルテスのDVDを入手。
 
バルトーク/管弦楽のための協奏曲
日本フィルハーモニー交響楽団
1968.5.1. @東京厚生年金会館
 
2002年リリースのこのDVD。
その存在は知っていたものの、実物を目にする機会がずっとなかった。
本腰を入れて捜しはじめてから6-7年にはなるだろうか...今回待望のゲット。
 
 
 
半世紀前のライヴ収録だけあって当然ながら白黒&モノーラル。
当時の録音技術、ホールの音響、加えてオーケストラそのものの技量の限界 (特に金管) もあってか実に凄絶な、しかし却って生々しい記録となっている。
 
この映像に見るケルテスの指揮ぶりは、我々が長く愛聴してきた彼のモーツァルトやブラームスなどのレコード録音から得られる印象どおり、わざとらしさやケレンを排した純度の高い音楽表現を志向したものだ。
一方で、棒の "明瞭さ" や "分かりやすさ" にもケルテスは心を砕いているように思える。
【これはあくまで僕の推測だが、手兵のロンドン響やバンベルク響に対してもここまで "楷書体"のタクトを見せるのだろうか...とつい想像してしまう。】
両端楽章におけるテンポや楽想の変化点での鮮やかなバトンテクニック、また第3楽章エレジーではケルテスの情熱的な一面をも見ることができる。
数年前、ベルリンフィルとのザルツブルク音楽祭での共演 (1962年) の録音がリリースされ、ベートーヴェン/第8交響曲やR.シュトラウス/4つの最後の歌とともにバルトーク/同曲の素晴らしい演奏を聴くことができるが、やはりこの『動くケルテス』の魅力は格別だ。
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 23:40| Comment(1) | 日記

2017年06月16日

ホールでのプローベ

 
農工グリーとのプローベ。
きょうは当日の演奏会場である小金井宮地楽器ホールにて。
 
 
豊かな響きの素晴らしい空間だ。
 
 
本番のステージ衣装に着替える徹底ぶり。
これだけでも気分が "上がる"。
メンバーの歌声も想像以上に良い仕上がりだ。
 
演奏会まであと半月。
若きグリーメン達の音楽にご期待ください。
 
 
§ 東京農工大学グリークラブ 第37回演奏会
2017.7.2.(日) 14時開演
小金井 宮地楽器ホール 大ホール
全席自由 入場無料
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 00:14| Comment(0) | 日記

2017年06月07日

白秋の『白き花鳥図』〈6〉

 
『老鶏』
 
さわさわと起(た)つ風の
音響けば、
鶏は羽ばたきぬ。はたはた、ああ、はたはた、
白檮(しらがし)の、葉広檮(はびろがし)の
かがやく陽(ひ)を目ざして。
 
鶏冠(とさか)や、猛猛(たけたけ)し
眼の稜稜(かどかど)、
尾羽、翼(つばさ)、はららぎぬ、はたはた、ああ、はたはた、
岩根の、白羽蟻の
吹雪と舞ふ柱を。
 
力よ、荒魂(あらみたま)
飛び搏(はた)くと、
勢(きほ)ひ蹴るひと空や、はたはた、ああ、はたはた、
光の、陽(ひ)のしじまの
耿(かう)たる幅(はば)乱すと。
 
凄まじ、身は重し、
青(さを)の夏(なつ)を、
朱の古りし鶏よ。はたはた、ああ、はたはた、
すべなし、飛び羽うつと
いくばくも飛ばず落ちぬ。
 
 
・はららぐ(散ぐ)...ばらばらになる。ぼろぼろと崩れ散る。
・荒御魂...荒く猛き神霊。
・勢(きおい)...きおうこと。きそいあうように事がおこる、そのいきおい。意気込み。
・しじま...静まりかえっていること。静寂。
・耿耿(こうこう)...光の明るいさま。きらきらと光るさま。
・乱す...平静な状態をかきまわす。
・すべなし(術無し)...ほどこす方法がなく切ない。
 
 
『白き花鳥図』全18編の最後に置かれた詩。
多田武彦によるこの組曲、原初の形ではこの『老鶏』は含まれていなかったのだが (音楽雑記帳『鮎鷹』の項参照)、その後再構成するにあたって組曲の第5曲として採用された。
詩のもつ荒々しさや力強さを生かし、急速な3拍子=スケルツォの楽想で書かれている。
 
かがやく陽、青の夏、朱の古りし鶏...
ぎらぎらと強烈な光のイメージに溢れたこの詩を一読してさっと脳裏に浮かんだのが、伊藤若冲による一連の花鳥画だ。
 
 
(この詩に限らないが) 白秋はどのような画をその目で、あるいは彼の心の眼で見つめていたのだろうかなどと考えつつ歌集を繰ってゆくうちに...次の二首を見つけた。
 
 
若冲の画を観て、心神相通ずるものあり、乃ち我も亦、
 
この軍鶏(しゃも)の勢(きほ)へる見れば頸毛(くびげ)さへ逆羽(さかば)はららげり風に立つ軍鶏(しゃも)
 
雄(を)の軍鶏(しゃも)は丈(たけ)いさぎよし肩痩せて立ちそびえたり光る眼の稜(かど)
 
〜『白南風』(1934年刊) 所収
 
やはり若冲であったか!
白秋のこれらの短歌と『老鶏』、互いを補完するかのように響き合っている。
 
 
 
来月、若きグリーメンとこの『白き花鳥図』を演奏します。
みなさま、どうぞお運びください。
 
 
§東京農工大学グリークラブ
§第37回演奏会
小金井 宮地楽器ホール 大ホール
(JR中央線・武蔵小金井駅下車すぐ)
入場無料、全席自由
 
 
(完)
 
 
posted by 小澤和也 at 23:13| Comment(0) | 音楽雑記帳

2017年06月04日

人生フルーツ

 
「人生フルーツ」を観る。
建築家・津幡修一さんと英子さんご夫妻の生活を綴ったドキュメンタリー。
 
佳い映画だった。
周囲の自然をも含め (修一さんはしばしば「風の通り道」という表現をされていた)、住空間が如何に大切なものであるか、そして結局のところ人間は自然に生かされているのだという当たり前のことを改めて思う。
 
仕事において、また自分の身のまわりの世話を自分でするという意味でも "生涯現役" であった修一さんの生きざまがとても羨ましい。
ただこれはおそらくご自身の努力だけではダメで、英子さんが側にいらしたからこそ叶ったのではないだろうか。
キッチンガーデンの世話をほぼお一人でなさり、数十種類もの作物を育て収穫する、もちろん料理もお上手、さらには刺繍や機織りまで...
「主人にはきちっとしたものを着せ、食べさせる」
英子さんのスーパーウーマンぶりにはただただ驚嘆するばかりだ。
 
微笑ましい場面もいくつか。
まず...お二人の食卓シーン。
土鍋で炊いたご飯、大好物の手作りコロッケを嬉しそうに口へ運ぶ修一さん。
一方、向かい側に座る英子さんの食事はこれまた手作りのジャムをたっぷりと塗ったトーストだ。
こんなに仲良しなご夫婦だけれど、ちゃんとそれぞれお好きなものを召し上がっている映像に思わず吹き出しそうになってしまった。
(英子さんの唯一苦手な食材がジャガイモなのだそう)
 
もうひとつ。
「シルバニアファミリーのおうちがほしいの」というお孫さんのためにおじいちゃんが作ったのが、木&布製の巨大なドールハウス。
屋根を外すとそこに現れたのは実に精巧な内装と家具調度品...
その道のプロによる "本気の遊び" の世界にただただ驚嘆。
 
 
風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。
 
 
時間と労力を惜しまず、ほんとうに良いものと触れ合い、美しい人生をともに歩まれたお二人。
「生きるうえでの "真の豊かさ" とは何か」ということを深く考えさせられる作品であった。
 
 
posted by 小澤和也 at 01:32| Comment(0) | 日記