2018年04月04日

木下杢太郎の詩を味わう

 
(大正5年 春)
 
ここのところ木下杢太郎の詩を読んでいる。
詩人であり劇作家、美術史研究家、そして皮膚科の医学者でもあった杢太カ (本名:太田正雄) は1885年、静岡県伊東の生まれ。
13歳で上京、その後東京帝大医科大学へ進む。
在学中より与謝野鉄幹・北原白秋らと親交を深め、活発な創作活動を展開した。
その作風は異国 (南蛮) 情緒的な華やかさ、そして浮世絵を愛でるがごとき江戸の粋を感じるものである。
 
僕がまず手にしたのは岩波文庫「木下杢太カ詩集」(河盛好蔵選) であるが、その始めのほうに収められていた『珈琲』という詩にふと目が止まった。
【以下、第一書房版『木下杢太カ詩集』(昭和5年刊) より引用。原文においてはほぼすべての漢字にルビが振られているが、ここではその大半を省略した。また旧漢字は現行のものに改めた】
 
 
珈琲
 
今しがた
啜つて置いた
MOKKA(もか)のにほひがまだ何処やらに
残りゐるゆゑうら悲し。
曇つた空に
時時は雨さへけぶる五月の夜の冷(ひやこ)さに
黄いろくにじむ華電気(はなでんき)、
酒宴のあとの雑談の
やや狂ほしき情操の、
さりとて別に是といふ故もなけれど
うら懐しく、
何となく古き恋など語らまほしく、
凝(ぢつ)として居るけだるさに、
当もなく見入れば白き食卓の
磁の花瓶(はながめ)にほのぼのと薄紅の牡丹の花。
 
珈琲(かふえ)、珈琲、苦い珈琲。
 
 
この夏、農工大グリークラブと男声合唱組曲『木下杢太カの詩から』(多田武彦作曲) を演奏する。
折にふれそれらの詩について書いてみたいと思う。
posted by 小澤和也 at 22:13| Comment(0) | 日記