2018年09月20日

ヴォーカル・アンサンブル アラミレ

 
ヴォーカル・アンサンブル アラミレの演奏会へ。
(15日、大森福興教会)
 
ピエール・ド・ラ=リュー...今回初めて知り、聴いた作曲家である。
Pierre de la Rue (1452ca-1518) はジョスカンやイザークと同時代に活躍したフランドル楽派の作曲家。
今年が没後500年のメモリアルイヤーにあたる。
 
この日演奏されたのは彼の「ミサ《ロム・アルメ》」。
“アラミレ” のリーダーであるテノール・櫻井元希さんの文章 (演奏会パンフレット) によると
『これ以上複雑で多彩なミサ曲を、同時代の作品から見出すことは相当な困難を伴うものと思われます』
とのこと。
またこのパンフレットには頻繁に「メンスーラ・カノン」なる用語が登場する。
メンスーラ (mensura) を直訳すると定量記譜法における異なる音価同士の関係、そしてメンスーラ・カノンとは一つの旋律を2つ以上の声部が異なる音価 (すなわち異なるテンポ) で奏する音楽形式である。
 
パンフレットに目を通し、また開演前の櫻井さんのプレトークを聞きながら、僕は爛熟した、ある種マニエリスム的で技巧に溺れたような音楽を想像していた。
しかしいざ演奏が始まると、そんな不安はまったくの取り越し苦労だった。
定旋律である《ロム・アルメ》(武装した人) はさまざまに変容を遂げ、ラ=リューの紡ぐメロディラインは流麗でありながら実に自然、技巧的であってもぎこちなさは一切感じられない。
(このような作曲家を知らなかったとは...!)
正直なところちょっぴり悔しかった。
 
 
“アラミレ” の皆さん (Superius3・Contratenor4・Tenor3・Bassus3の計13名編成) の歌唱はほんとうに素晴らしかった。
単に楽曲そのものの美しさを引き出すだけでなく、意思を持った (それは取りも直さずリーダー櫻井さんの “歌心” であろう)「人が人に伝えるために存在する」音楽となっていたように思われる。
 
ゆったりと、佳い時間であった。
お誘いくださったメンバーIさん、ありがとうございました。
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 00:15| Comment(2) | 日記