2018年11月16日

「リゴレット」との一週間

 
 
『立ち稽古なんですけれど...
一日だけ代わりをお願いできないでしょうか』
 
同業のTさんからご連絡をいただいたのはとある月曜の夜だった。
「いつですか?」
『来週の火曜日なんです』
 
(ずいぶん急だな...) などと思いながら手帳を開く。
この日はちょうど空いていた。
「曲は何ですか?」
『リゴレットです』
「!!」
 
なんと!
未だ振ったことも勉強したこともない作品だ。
(一週間か...間に合うのか、務まるのか etc.)
頭の中でぐるぐると答えの出るはずもない計算をしつつ、とっさに口をついて出た言葉が
「わかりました。お引き受けしますね」
 
自分でもびっくりした。
でも受けたからにはやらねば...
翌日からひたすらスコアと向き合い、テキストを読む。
とにかく時間が足りない!
これほどまでに我を忘れて楽譜を読み込んだのは実に久しぶり。
 
そもそも譜読みには (ここまで勉強しておけば充分) などという目安はない。
いくらやっても不安は消えないし、理解が深まれば深まるほど新たな疑問も出てくる。
そんな思いを抱きながらも僕の頭に浮かんだのは
(よし、行けるとこまで行ってあとは「その場」で考えよう!)
「吹っ切れた」瞬間だった。
 
そして...あっという間に稽古当日に。
キャストの皆さん、素晴らしかった。
ピアニストさんにも終始、ほんとうに助けていただいた。
初対面の歌手の方々と、瞬間瞬間の息遣いから音楽の方向性を定め、運んでゆく作業。
緊張の中にも「音楽するよろこび」を味わうことのできた、得難い6時間であった。
 
この一週間、一つの作品だけに集中してひたすら読譜するという久々の体験をさせていただいた。
さしあたって一打席のみの代打出場だったが...お役に立てただろうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 23:59| Comment(0) | 日記

2018年11月03日

街角できく日本歌曲

 
日本のうたカフェ Vol.1 を聴く。
(10/27、@Cafeしばしば)
アップライトピアノの置かれた小さなカフェ、そのフロアスペースをガガッと(?)配置替えして開かれたコンサート。
 
この演奏会を企画された
ソプラノ・和泉聰子さん
 
ソプラノ・丹羽京子さん
 
ソプラノ・三浦恵里加さん
 
ピアノ・山ア範子さん (写真右端)
 
 
プログラムは次のとおり。
 
§第1部
・ちんちん千鳥 (北原白秋/近衛秀麿) I
・お菓子と娘 (西條八十/橋本國彦) I
・初恋 (石川啄木/越谷達之助) N
・地球の仲間 M
・誰かがちいさなベルをおす M
・さびしいカシの木 I
(以上3曲 やなせたかし/木下牧子)
・さざんか (藪田義雄/猪本隆) N
・わかれ道 (きねたるみ/猪本隆) N
 
§第2部
♪みんなで歌いましょう♪コーナー
・小さい秋みつけた (サトウハチロー/中田喜直) 
・まっかな秋 (薩摩忠/小林秀雄)
 
・サルビア (堀内幸枝/中田喜直) I
・小さな空 (詞/曲 武満徹) M
・さいごのばん (みずかみかずよ/なかにしあかね) I
・落葉松 (野上彰/小林秀雄) M
・夕焼け (高田敏子/信長貴富) N
 
なんと魅力的な選曲・構成だろう!
古典的名曲から新しい作品までを巧みに散りばめつつ、いわゆる「耳に馴染んだ」メロディだけに頼ることなく「難解であっても高い芸術性をもつ」歌曲もしっかりと聴いていただく、という強い理念が根を張っているように感じたのである。
 
 
会場の雰囲気...歌手と聴衆とのこの近さ!
 
 
それぞれに豊かな個性をお持ちの3人の歌声、おおいに楽しませていただいた。
そして、それらを引き出し支えた山アさんのピアノもほんとうに素晴らしかった!
決して万全のコンディションとは言えぬカフェのアップライト (マスターTさんゴメンナサイ) から紡ぎ出される美しい音とタッチ (ことにppの響き!) は単なる伴奏の域をはるかに超えていたと思う。
 
コンサートホールのようなある種非日常の空間ではなく、街のカフェというより ”ふだん着“ 的なシチュエーションでクオリティの高い音楽に触れることができる...
こうした意味で今回の企画は真に意義深いものだと感じた。
来年以降も第2弾、第3弾が予定されているようである。
期待しよう。
 
終演後、出演者の皆さんと
 
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 23:22| Comment(2) | 日記