2019年07月07日

ビゼー『アルルの女』の源流を探る

 
機会に恵まれてビゼー『アルルの女』劇音楽版の読譜を進めている。
 
1872年 (ビゼー33歳) の中頃、パリ・ボードヴィル座の支配人L.カルヴァロの依頼により劇音楽『アルルの女』の作曲は始められた。
きわめて短期間のうちに音楽は完成し、この戯曲は同年10月1日に初演...ただし成功とはいえなかったようである。
その直後、知人らの勧めでビゼーは4曲からなる (第1) 組曲を編むが、これの初演が11月10日...なんという仕事のはやさ!
組曲の初演は大成功であった。
ビゼーは1875年に早世、その数年後に友人の作曲家E.ギローが第2組曲を完成させる。
現在、ビゼーの『アルルの女』といえば一般にはこれら2つの組曲を指すといって良いだろう。
 
さて...劇音楽版である。
第7曲「パストラール (第2幕第1場への間奏曲)」、これは第2組曲の第1曲「パストラール」にほぼ相当する。
イ長調 (4/4拍子) のたっぷりとしたメロディに続いて現れる嬰へ短調 (3/4拍子) の弾むように流れる音楽が混声合唱で歌われることを初めて知った。
(歌詞はなく、旋律・伴奏音型ともにLa la, la...のみ)
組曲版での、あの茫々とした平原を吹き渡る風のような木管楽器の美しさは実に美しいが、これが人の声で歌われるとき、作品に内在するドラマ性 (あるいは人間くささ) が俄然強調されるように感じられる...今更ながら僕の中での新たな発見であった。
 
(劇音楽版ヴォーカルスコアより)
 
 
もう一点。
第2組曲の第4曲、有名な「ファランドール」の大詰めである。
それまで個別に登場していた2つの主題 “三人の王の行列” および “馬の行進” を最後に合体させるアイディアは編曲者ギローによるものだとなぜか僕は思い込んでいたのだが、そうではなかった...浅学を反省。
この場面、ビゼーは “三人の王” を合唱で、“馬の行進” を笛と太鼓で表した...その色彩効果たるや!
 
 
(劇音楽版ヴォーカルスコア、第23曲より)
 
 
 
アルベール・ヴォルフ指揮による劇音楽『アルルの女』のディスクである。
仏語による脚本の朗読と音楽との融合。
これを聴いて僕の中の作品観、ひいてはビゼー観が一変した。
 
『アルルの女』の源流を探る旅、もうしばらく続けてみよう。
 
 
組曲版と劇音楽版の対照はおおむね次のとおりである。
 
【第1組曲】
第1曲:前奏曲 ...... (劇)第1曲「序曲」
第2曲:メヌエット ...... (劇)第17曲「間奏曲」
第3曲:アダージェット ...... (劇)第19曲「メロドラマ」の後半部
第4曲:カリヨン ...... (劇)第18曲「第3幕第1場への間奏曲 (カリヨン)」
 
【第2組曲】
第1曲:パストラール ...... (劇)第7曲「第2幕第1場への間奏曲 (パストラール)」の編曲
第2曲:間奏曲 ...... (劇) 第15曲「第2幕第2場への間奏曲」
第3曲:メヌエット ...... 歌劇『美しいパースの娘』の音楽より
第4曲:ファランドール ...... (劇) 第23曲「合唱」第2部分の編曲、第21曲「ファランドール」の編曲、ギローによる再構成の要素大
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 00:49| Comment(0) | 日記