ここ数週間、“心を震わせられる音楽” がちょっとだけしんどいときがある。 疲れているのかな...と自分でも思う。 そんな弱った心にそっと沁みてゆく音楽、ただひたすら身を委ねるようにじっと耳を傾けていられる音楽がフレスコバルディの「フィオーリ・ムジカーリ」だ。 “Fiori Musicali”、直訳すると「音楽の花々」。 一般には「音楽の花束」「音楽の精華」などと呼ばれている。 フレスコバルディ Girolamo Frescobaldi (1583-1643) は初期バロック期を代表する作曲家。 ローマやフィレンツェでオルガニストを務め、鍵盤楽器のための作品を多数遺した。 その代表作「フィオーリ・ムジカーリ」(1635年) は各種ミサにおいて用いられるオルガン曲の集成。 「主日のミサ」「使徒のミサ」「聖母のミサ」の三部からなり、それぞれに ・ミサ開始前のトッカータ ・キリエ&クリステ (6-12曲) ・使徒書簡朗読後のカンツォーナ ・使徒信経後のリチェルカーレ ・聖体奉挙のためのトッカータ ・聖体拝領後のカンツォーナ など、典礼に即した楽曲が含まれている。 キリエ&クリステはいずれも40秒〜1分半程度と短く、リチェルカーレやカンツォーナも長くて4分くらいの小品だ。 [主日のミサ〜キリエ より] 厳粛に、そして豊かに流れる旋律線。 精緻をきわめたポリフォニーの綾。 (かの大バッハもこの曲の写譜を手元に置いていたとのこと) 半音階的進行や不協和音を巧みに用いた清新な和声感覚。 〜まさに音楽の花であり珠玉であり粋である。 僕が愛聴しているのは、YouTubeでアップされているSimone Ghellerによるオルガン独奏。 主日のミサ: 使徒のミサ: 聖母のミサ: 爽やかな朝に、また静かな夜に、 フレスコバルディの音楽は心の平安をもたらしてくれる。 |
2020年04月29日
フレスコバルディ 「音楽の精華」
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2020年04月22日
皆川達夫さん
皆川達夫さんの訃報を知る。 30年以上続けて来られたNHK「音楽の泉」の解説をつい先日退かれたばかり。 最後の放送の結びに『(...)体調にやや不安を覚えるようになりましたので〜』と挨拶されてはいたものの、まさかこんなに早く!...の思いしかない。 「音楽の泉」はもちろんだが、僕にとってはそれ以上に「バロック音楽の楽しみ」(NHK-FM) での皆川さんの名調子が強く印象に残っている。 番組のラストはきまって 『バロック音楽の楽しみ、(...)解説は皆川達夫でありました。みなさんご機嫌よう、さようなら』 そして流れてくるテーマ音楽が シェドヴィル (伝ヴィヴァルディ)のソナタ集Op.13「忠実な羊飼い」〜第2番 であった。 (フルート: ランパル、チェンバロ:ヴェイロン=ラクロワ) 中高生時代、この放送をどれだけ聴いたことだろう。 [この番組のおかげで、僕にとっての古楽のイメージには朝の空気感 (夏はすでに蒸し暑く冬はほんとうに寒かった) と皆川さんの優しい語り口が今でも付いて回っているほどだ] 皆川さんの著書にも大変お世話になった。 新書で出ていた「バロック音楽」と「中世ルネサンスの音楽」は本が壊れてバラバラになるほど繰り返し読んだものだった。 なかでも「中世・ルネサンスの音楽」の本文中に、今でもソラで言えるほどの大好きなフレーズがある。 それは第5章...ブルゴーニュ楽派の巨匠ギヨーム・デュファイの項、皆川さんの筆が一瞬脱線しご自身が主宰された中世音楽合唱団の話題となるくだりだ。 《約三十人の多彩な顔ぶれの老若男女が、(...)古い合唱曲を歌うよろこびを体験している。(...)デュファイの作品には歌うたびに一回一回新しい発見があって、興味がつきない。(...)彼特有の節まわしが出てくると、メンバーたちは「そらまたデュファイ節」といって、うれしそうに笑う。》 皆川さんのチャーミングなお人柄が実によく表れている文章ではないだろうか。 正に音楽への愛と情熱に溢れた方であった。 皆川達夫さん、ありがとうございました。
どうぞ安らかに。 |
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2020年04月15日
演奏会【延期】のお知らせ
6月28日(日)に小金井宮地楽器ホールで開催を予定しておりました 東京農工大学グリークラブ 第40回記念演奏会 は、昨今の新型コロナウイルス禍の状況を考慮し、誠に残念ですが公演を延期することとなりました。 振替日程は来年の夏頃を予定しております。 詳細が決定し次第、追ってご案内いたします。 |
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2020年04月09日
【私的・珈琲備忘録2】ブラジル: セーハ・ド・ボネ
前回取り上げたマラウイと一緒に買い求めた ブラジル: セーハ・ド・ボネ。 こちらは中煎り、味わいも実に対照的。 今回もまずふだん通りに 【豆11g、湯温83℃、160cc、蒸らし時間20秒】 でドリップする。 カップから立ちのぼるチョコレートのような甘い香り。 最初の一口はさっぱりと爽やか、柑橘系を思わせる酸味がメインに。 少し冷ますと甘みがぐんと出てくる。 苦みはほんの少しだが決して物足りなくはない。 実にバランスのとれたテイストだ。 さて数時間後、愛用のミルを水洗いしてから再度ドリップしてみたのだが... あれ? どうも味が違う。 香りも弱く酸味もあまり来ない。 調べてみると、どうやら豆を挽く際の粒度の設定が変わってしまっていたようで、先ほどよりも若干 “粗挽き” になっていた。 (ほんとうに微々たる差なのだけれど) そこで、次は敢えてこの粒度のまま 【豆の量: 12g】に増やして淹れると... ・甘い香りはより豊かに ・爽やかな酸味に加え、コクが明らかに増している ・冷ました後の甘みもいっそう強く 全体の印象は最初の1杯目よりも「口の中がワイワイと賑やかな感じ」。 味のバランスというよりは、より際立った個々のキャラを楽しむといったところか。 個人的には前者が好み...かな。 ともあれ、豆の量による味の差をこれほどまでに実感したのは自分でも驚きだった。 今度から、味をはっきりさせたいときには1段階粗く挽いてそのぶん豆の量を増やしてみよう。 ブラジルは生産量・輸出量ともに世界一のコーヒー大国。 なかでも南東部のサンパウロ州・パラナ州、そしてセーハ・ド・ボネ農園のあるミナスジェライス州での生産が活発とのこと。 ミナスジェライス州は昔から鉱山開発が発展、現在でも水晶などの産地として知られる。 州南東部のマタデミナス地区・アラポンガは起伏の激しい山岳地帯に位置しており、セーハ・ド・ボネ (ポルトガル語で “ノコギリの歯” の意) の名称はこの地形に由来するのだとか。 珈琲道は続く。 |
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2020年04月07日
【私的・珈琲備忘録】マラウイ: ウシンギニ
いま飲んでいるコーヒーのひとつが マラウイ: ウシンギニ農園。 豆は艶よく光る深煎りに仕上がっている。 まずはいつものように 【豆11g、湯温83℃、160cc、蒸らし時間20秒】 で淹れてみた。 深煎りならではの香ばしさ、苦み強し。 その奥にかすかな甘みととろみ。 おいしいけれどやや単調な味だ。 そのまましばらく時間をおいてみる。 (ちょっと冷めたかな) と思ったところで再び口に含むと... その瞬間にやわらかなコクと酸味がふわっと広がる。 なるほど! それならば、と 【湯温: 82℃】に変えて再度ドリップ。 すると... 苦みの質感はそのままに、まとわりつくような甘みが同時に舌の上へ到達。 これはイケる! 淹れる際の湯温によって味が結構変わることを改めて学習。 そしてこれは他の豆でも感じることだけれど... 淹れたてのコーヒーを少しだけ冷ますと、最初とはまた違った味わいが楽しめる。 マラウイ共和国はアフリカ南東部の内陸国。 南北に細長い国土は日本の約1/3の広さ、北部州・中部州・南部州の3つの州に分かれている。 首都はリロングウェ(=中部州の州都)、経済の中心はブランタイヤ(=南部州の州都)。 そしてウシンギニ農園のあるカタベイ県・ヴィフィヤ高地は北部州に属しており、その州都がマラウイ第3の都市・ムズズである。 (地図上、ピンで示しているのがムズズ) 北部州はほぼ高原地帯とのこと。 カタベイ以外でもコーヒー栽培が盛んなのだそうだ。 機会があればそれらの違いも楽しんでみたいな。 |
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2020年04月05日
新生「音楽の泉」を聴く
日曜朝にNHKラジオ第1で流れる「音楽の泉」。 第1回放送が今から70年以上前、1949年9月なのだそうだ...驚異的な長寿番組だ。 初代解説者は堀内敬三氏 (およそ10年間)、次いで村田武雄氏 (およそ29年間)、つい先日まで担当されていた皆川達夫さんが第3代、実に32年間近くの長きにわたるご活躍であった。 その皆川さんが引退され、きょう4月5日の放送から新MC・奥田佳道さんが登場! その記念すべき第1回オンエアを確と聴き届けるべく、パソコンの前にスタンバイ。 オープニングのテーマ曲が流れる... これまでと同じシューベルト「楽興の時 第3番」であった。 そのときは気づかなかったのだが、番組中で『M.J.ピレシュの演奏でお送りします』と奥田さん。 いろいろと聴き比べたうえでのこだわりのセレクトだろうか。 (先週まではA.シフのものが使われていたのだそうだ) さて、第1回の最初の曲はモーツァルト/交響曲第41番、いわゆる「ジュピター」。 王道をゆく、さすがの選曲!
流暢かつ痒い所に手が届く “奥田節” もすこぶる絶好調だ。 こうして休日の朝にラジオでモーツァルトを聴いていると、ずっと昔 (1980年代) にNHK-FMでお正月の何日間かにわたってザルツブルク・モーツァルテウムのライヴ収録 (音楽祭の公演の一部だったろうか...リサイタルや室内楽が多かったと記憶する) が流れていたのをふと思い出す。 新年ののんびりとした気分と相まってどこか雅な空気を感じたものだった。 「ジュピター」に続いて選ばれたのが、アリア『手にくちづけを』KV541。 イタリアの作曲家アンフォッシ (1727-97) のオペラ「幸福な嫉妬」を歌う友人のバリトン歌手のために書かれた挿入歌(?)的アリアとのこと。 そしてこのアリアのメロディが「ジュピター」第1楽章の終結主題に用いられていると! 一聴しただけなので定かではないが、このあたりの旋律が聞こえたような気がする。 これらのこと、ほんとうに今日はじめて知った...! 己の浅学を恥じるとともに、ご教示くださった奥田さんに改めて感謝。 あっという間の1時間。 実に佳いひとときでありました。 『またご一緒いたしましょう』 〜はい、またご一緒させてください! |
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