§交響曲 (第6番) ハ長調 D589 1817-18年作曲。 完成時、シューベルト21歳。 幼少期よりハイドン、モーツァルトそしてベートーヴェンを教材として学んできた若き巨匠による意欲作だ。 以下、この曲についての取り留めもないメモである。 §第1楽章 Adagio、ハ長調、3/4拍子〜Allegro、ハ長調、2/2拍子、ソナタ形式 堂々たる序奏に続く主部、第1主題は木管楽器による朗らかで快活な音楽。 調性こそ異なるがハイドンの「軍隊」交響曲を即座に連想させる。 充実した呈示部に比べると展開部はやや物足りない感あり。 弱音主体の美しい場面が続くが、ほどなくしてそのまま第1主題の再現へと静かにすべり込む。 この楽章のもう一つの目玉は “più moto” のコーダであろう。 いかにもロッシーニのオペラ序曲風。 1816年11月、歌劇『幸福な錯覚』によってウィーンにロッシーニ旋風が巻き起こる。 翌月には『タンクレーディ』も上演され、シューベルトはこれに大いに魅せられたという。 §第2楽章 Andante、ヘ長調、2/4拍子 A-B-A’-Bの二部形式。 第1主題がとってもチャーミング。 特に第25小節〜の美しさ! 主旋律はヴァイオリン、そこへ木管がカノンのように寄り添う。 A’(主部再現) ではこのメロディがなぜか出てこない...だからなおさら愛おしいのだ。 副次部 (B) はハ長調、三連符主体のリズミカルな楽想。 ハ&ト音のチューニングのまま用いられるティンパニの活躍ぶりが楽しい。 (ベートーヴェン第1交響曲の第2楽章がヒントになっているだろうか) §第3楽章 スケルツォ: Presto-Più lento-Presto、ハ長調-ホ長調、3/4拍子 スケルツォ主題を一見してふと気付いた。 リズムの骨格は明らかにベートーヴェン第1交響曲のそれをベースにしていると思われる。 それでも、調性的にはベートーヴェンの主題が古典派らしくハ長調→ト長調 (属調) へと運ばれるのに対し、シューベルトではハ長調→ホ短調へと進むあたりが実に彼らしい。 中間部はレントラー舞曲風。 ひなびた田園風景が浮かんでくるようだ。 §第4楽章 Allegro moderato、ハ長調、2/4拍子、展開部を欠くソナタ形式 中期以降のシューベルト作品によく見られる “急速テンポでないフィナーレ”。 冒頭の主題がこれ。 さて、 ここで恥ずかしながら告白すると... 僕ははじめてこれを聴いたとき、あろうことか次に挙げる音楽をパッと頭に浮かべてしまったのだ。 ご存じ、国民的アニメ「サザエさん」の劇中音楽である。 (調べたところ「サブタイトル4」という題名らしい) 未だその呪縛からは解き放たれていない。 この楽章では実に多くの魅力的な主題が次から次へと示される。 それは良いのだが、悩ましいのはそれらの各々に相応しい速度感がまちまちであること。 そこで今回この作品を取り上げるにあたっては、敢えて積極的にテンポを動かしている。 すべての主題の再現ののちコーダの大団円となるのだが、個人的にはこれもAllegro moderatoの曲想とは思えない。 天国に安らうシューベルトに許しを乞いつつ、僕の心の中から湧き出る音楽を奏でたいと考えている。 明日10月3日(日)、湘南アマデウス合奏団の皆さんとこの交響曲を演奏します。 よろしければぜひお運びください。 演奏会の詳細はコチラ↓ |
2021年10月02日
シューベルト: 第6交響曲雑感
posted by 小澤和也 at 16:08| Comment(0)
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