--> [(1)からの続き] 短編集「田舎の生活」出版 (1880) の3年後、ジョヴァンニ・ヴェルガは同名の戯曲を書く。 翌1884年にトリノで初演された舞台劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」は大成功を収めた。 『カヴァレリア・ルスティカーナの源流をたどる(1)』のリンクはこちら↓ http://kazuyaozawa.com/s/article/189162719.html 【戯曲/カヴァレリア・ルスティカーナ】 主な登場人物: トゥリッドゥ・マッカ アルフィオ (リコーディア出身) ローラ (アルフィオの妻) サントゥッツァ ヌンツィア (トゥリッドゥの母親) ブラーズィ (馬丁) カミッラ (ブラーズィの妻) フィロメーナ ピップッツァ 主要5名の関係性は短編、ならびにオペラと同じである。 少し補足すると: 1) アルフィオの出身地リコーディアは物語の舞台であるヴィッツィーニの西に位置する村。 ちなみに短編の中でトゥリッドゥがサントゥッツァに向かって 『おい、おまえさんの母ちゃんはリコーディアの出身だろう!喧嘩好きの血統だ!』 と軽口を叩く場面がある。 2) サントゥッツァは短編においては農園主コーラ (「豚のような金持ち」と描写されている!) の娘という設定であるが、戯曲ではそのような記述は出てこない。 さらに戯曲の最終盤でトゥリッドゥが 『サンタには (頼れる人が) 誰一人いないのだから...』 と母親に彼女を託す台詞が出てくる。 サントゥッツァの置かれた境遇が戯曲化に際して大きく変更されたことになる。 以下、短編のときと同様に場面ごとに要約を試みよう。 [第1場] 全9場の中で最も長い場面。 (戯曲全体のおよそ4割を第1場が占める) ここでは便宜的に3つの部分に分けてみた。 第1場 その1: 【カミッラ、フィロメーナ、ブラーズィ、サントゥッツァ、ヌンツィア、およびピップッツァ】 本戯曲で初めて登場する4名の性格描写と彼らの軽妙な会話で物語が幕を開ける。 カミッラ: フィロメーナ、買い物かい? フィロメーナ: きょうは神様を祝福する復活祭だからね! ブラーズィ: (カミッラに) 家に入って仕事しろよ、お喋り女が! ピップッツァ: ヌンツィア、卵はいかが? …etc. これらと並行して展開されるサントゥッツァとヌンツィアとの深刻なやり取り。 サントゥッツァ: (...)お願いだから、あなたの息子のトゥリッドゥがどこにいるのか教えて! ヌンツィア: フランコフォルテへワインを仕入れに行ったよ。 サントゥッツァ: いいえ!夕べはまだここにいたのよ。夜の2時に彼を見た人がいるの。 ヌンツィア: 何を言いに来たのかい!...夕べは帰ってきてないよ...ともかくお入り。 サントゥッツァ: いいえ、わたし、あなたの家には入れないの。 ...etc. 第1場 その2: 【アルフィオ、ヌンツィア、サントゥッツァ、カミッラ、フィロメーナ、およびブラーズィ】 そこへアルフィオがワインを買いにヌンツィアの店へ現れる。 ここでの女性たちとアルフィオの会話が興味深い。 アルフィオ: (...)きょうは家で復活祭を祝うために帰って来たんだ。 フィロメーナ:『謝肉祭は好きな人と、復活祭とクリスマスは家族と一緒に』かい。 カミッラ: お前さんの女房は復活祭とクリスマスにしかお前さんに会えないなんて、それってどういうことなんだい? アルフィオ: カミッラさんよ、これが俺の仕事さ。(...)女房は俺のやり方を分かってくれてるんだ。(...)俺は自分のことは自分で決める。 フィロメーナ: (十字を切って)とんでもないこと!(教会へ向かう) …etc. 勘定を済ませながらアルフィオはヌンツィアに 『明け方、家へ戻る途中にこの近くで急いで走って行くトゥリッドゥを見たぜ...俺には気づいていないようだったな』 と告げて去ってゆく。 第1場 その3: 【ヌンツィア、サントゥッツァ、ブラーズィ、およびピップッツァ】 ほぼ全編にわたってヌンツィアとサントゥッツァの会話。 [オペラにおける『ロマンヅァとシェーナ/お母さんも知るとおり』の部分に対応している] ヌンツィア: (...)兵役から戻ったときにはローラはもうアルフィオと夫婦になっていて、それであの子は諦めたんだ。 サントゥッツァ: ちがうの!彼女のほうが諦めてなかったのよ! (...) あの人はわたしを不憫に思うだけで、もうわたしのことなんか愛していないのよ! (...) ヌンツィア: お聞き、キリストの十字架のもとへ跪くのよ。 サントゥッツァ: いいえ、わたしは教会へは行けないわ、お母さん。 ぶつぶつと呟きながら教会へと向かうヌンツィア。 (ああ神様、どうかお知恵を!) 以下、 ・第2場はトゥリッドゥとサントゥッツァのなじり合いの場面 ・そこへローラが現れ三者三様のやり取りが展開する第3場 ・ローラが教会へと去っていき、第4場はふたたび2人の激しい罵声の応酬へ このあたりはオペラのストーリー進行とほぼ一致する形となるが、これらについては項を改めて。 [参考資料] カヴァレリーア・ルスティカーナ/河島英昭訳 (岩波文庫) オペラ対訳ライブラリー カヴァレリア・ルスティカーナ/小瀬村幸子訳 (音楽之友社) イタリアオペラを原語で読む カヴァレリア・ルスティカーナ/武田好 (小学館) 戯曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」翻訳/武田好 (星美学園短期大学研究論叢第40号) Cavalleria rusticana/Giovanni Verga (OMBand Digital Editions) |
2022年01月21日
カヴァレリア・ルスティカーナの源流をたどる (2)
posted by 小澤和也 at 22:41| Comment(0)
| 音楽雑記帳
2022年01月02日
新年のご挨拶
明けましておめでとうございます。
新年最初の一杯め。
年末に買い求めたルワンダ/ニャルシザを開封、心をこめて淹れる。
豆の豊かな香りをたのしみ、ほどよい酸味と優しい苦みをあじわった。
初詣は近所の神社へ。
この一年の健康を、そして音楽に対し誠実に向き合い良い仕事ができるよう祈願する。
帰宅すると賀状が届いていた。
さっそく一葉一葉じっくりと目を通す。
昨年来、感染予防対策に最善を尽くしつつ活動を継続している都内のシニア合唱団、その団員さんからの
「コーラスが命の綱です」
とのメッセージに胸が熱くなる。
気兼ねなく歌い奏でることのできる日常が一日も早く戻りますように。
そしてこれからも変わらず音楽に対し真摯な愛情をもって接してゆくことをここに誓う。
本年も「音楽ノート」をどうぞよろしくお願いいたします。
令和4年元日 小澤和也
posted by 小澤和也 at 00:13| Comment(0)
| 日記