--> [画像: マスカーニによる間奏曲(ピアノ譜)の自筆原稿(一部)] 「源流をたどる(3)」の続きです。 『カヴァレリア・ルスティカーナの源流をたどる』 (1) へのリンク↓ (2) へのリンク↓ (3)へのリンク↓ [第5場] 【サントゥッツァ、アルフィオ、およびブラーズィ】 怒りと絶望にひとり打ちひしがれるサントゥッツァのもとへローラの夫アルフィオが現れる。 サントゥッツァはたまらずトゥリッドゥとローラの関係を彼に告げて... という物語のアウトラインはオペラとほぼ共通であるが、第4場と同様にその描写は戯曲のほうがいっそう生々しい。 サントゥッツァ: ああ、神様があなたを遣わされたんだわ、アルフィオさん! アルフィオ: ミサはどのあたりかな、サンタさんよ? サントゥッツァ: 遅かったですね。でもあなたの奥さんはあなたを探してトゥリッドゥと一緒に行きましたよ。 アルフィオ: どういう意味だ? 戯曲ではこれに続いて、オペラにはないサントゥッツァの台詞が挿入される。 『あなたの奥さんは祭壇のマリア様のように黄金をいっぱい身にまとって歩き回っていますわよ、あなたにとっても名誉なことでしょう、アルフィオさん』 強烈な皮肉、そしてサントゥッツァのローラへの嫌悪がここにも見てとれる。 アルフィオは当然のごとく、 『おい、それがおまえさんに何の関係があるんだ?』 とにわかに気色ばむ。 そしてサントゥッツァのさらなる一言「あなたが外で稼いでいる間にローラは家を飾り立てているのよ〜」に続くのだ。 [この「家を飾り立てる」は「(夫婦間の) 不義を働く」という意味なのだそう] その後のアルフィオの台詞もなかなかである。 『(...)復活祭の日の朝から酔っ払ってるのか、それなら鼻からワインを絞り出してやる!』 『(サントゥッツァの言うことが)もし嘘だったなら、(...)その目で泣けないようにしてやる (目をくり抜く!)、おまえも、不名誉な一族みんなもな!』 そしてこれに応ずるサントゥッツァの言葉も痛切の極みである。 『アルフィオさん、わたしは泣くこともできないんです。わたしの操を奪い、そしてローラのもとへ走ったトゥリッドゥを見てももう涙も出なかった』 アルフィオはサントゥッツァに礼の言葉を述べ、教会へは行かずに家に戻る。 『(...) 女房が俺を探しているのを見かけたら、トゥリッドゥへの贈り物を取りに家へ帰ったと言ってくれ』 ミサが終わり村人たちが教会から出てくる。 最後に現れたブラーズィがサントゥッツァに気づく。 『サンタさんよ、もう誰もいなくなってから教会へ行くっていうのかい!』 サントゥッツァは 『わたしは大罪を犯してしまったのよ、ブラーズィおじさん!』 と言い残して教会へと向かう。 戯曲においては この場面の後、サントゥッツァは全く登場しない。 (つづく) [参考資料] カヴァレリーア・ルスティカーナ/河島英昭訳 (岩波文庫) オペラ対訳ライブラリー カヴァレリア・ルスティカーナ/小瀬村幸子訳 (音楽之友社) イタリアオペラを原語で読む カヴァレリア・ルスティカーナ/武田好 (小学館) 戯曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」翻訳/武田好 (星美学園短期大学研究論叢第40号) Cavalleria rusticana/Giovanni Verga (OMBand Digital Editions) |
2022年02月23日
カヴァレリア・ルスティカーナの源流をたどる (4)
posted by 小澤和也 at 21:20| Comment(0)
| 音楽雑記帳
2022年02月06日
カヴァレリア・ルスティカーナの源流をたどる (3)
(2)の続き、第2場からです。 『カヴァレリア・ルスティカーナの源流をたどる』 (1) のリンクはこちら↓ (2) のリンクはこちら↓ [第2場] 【トゥリッドゥ、およびサントゥッツァ】 前景の登場人物たちがみな教会へと向かい、ひとりヌンツィアの家の前でトゥリッドゥを待つサントゥッツァ。 そこへトゥリッドゥが急いで登場、サントゥッツァの詰問から二人の言い争いへと展開してゆくところは戯曲とオペラとで同様であるが、サントゥッツァの言葉遣いに若干のニュアンスの違いがあることに気づいた。 例えば最初のやり取り。 オペラでは Tu qui, Santuzza? (おまえ、ここに、サントゥッツァ?) Qui t’aspettavo. (ここであんたを待ってたのよ) と始まるのだが、一方戯曲では Oh,Santuzza! … che fai tu? (おお、サントゥッツァ!...ここで何してるんだ?) Vi aspettavo. (あなたを待っていたの) tu(親称二人称) で言葉をかけるトゥリッドゥに対し、サントゥッツァはオペラでは対等にtuで、戯曲では敬称のvoiで返すのだ。 トゥリッドゥへの呼びかけもこの場面では“Compare Turiddu”( トゥリッドゥさん)である。 もう一点、戯曲を読むとトゥリッドゥの ”ダメンズ“ ぶりがいっそう際立っているように感じられるのだ。 フランコフォンテへ (ワインを仕入れに) 行っていたということが嘘であると見破られた後の台詞: 『俺は自分がいたいと思ったところにいたのさ』 「今あなたに捨てられたらわたしはどうすれば?」とすがるサントゥッツァに対しては 『俺はおまえを捨てたりしないさ、おまえが俺を追い詰めなければ。でも言ったろ、俺はやりたいと思ったことは自由にできる御主人様でいたいんだ』 そして最後には 『やりたいと思ったことができない男などと思われたくないんだ、そんなのはだめだ!』 二言目には “mi pare e piace”、 「俺がやりたいように」の一点張りなトゥリッドゥなのである。 [第3場] 【ローラ、トゥリッドゥ、およびサントゥッツァ】 ローラが登場。 (オペラでは『アイリスの花〜』と小唄を口ずさみながら姿を見せるが、戯曲にはこのストルネッロはない) ローラの 『あら、トゥリッドゥさん、私の夫が教会へ行くのを見ませんでした?』 に始まる三者のやり取り、細部は異なるがその内容、そして発言の順序は戯曲とオペラとでほとんど全て同じである。 両者で唯一異なっているのが トゥリッドゥ: 行こう、ローラさん、ここですることなんて何もない! ローラ: 私に気を遣わないで、トゥリッドゥさん、道はわたしの足がよくわかってるから。それにあなた方の邪魔もしたくないですし。 〜の後に続くトゥリッドゥの一言、 Se vi dico che non abbiamo nulla da fare! (何の用もない、って言ってるんだ!) トゥリッドゥはローラに対してでさえとっさに癇癪を起こしているのだろうか...? 乏しい語学力ゆえ正確なニュアンスは分からないけれど... [第4場] 【トゥリッドゥ、およびサントゥッツァ】 ローラが教会と去ってゆき、場面はふたたび二人きりとなる。 「すがるサントゥッツァとこの場から逃れようとするトゥリッドゥ」という構図は戯曲とオペラとでもちろん共通であるが、そのやり取りは戯曲のほうがかなり長く、また生々しさも数段すさまじく感じられる。 (ここではサントゥッツァもトゥリッドゥに対し “tu” で返している...第2場とは対照的なサントゥッツァの心情の変化を示していよう) 始まってすぐ、トゥリッドゥがサントゥッツァを罵る言葉: オペラ: Ah! perdio! (ああ!畜生!) 戯曲: Ah! sangue di Giuda! (ああ!ユダのような奴め!) 直後のサントゥッツァ: オペラ: Squarciami il petto… (わたしのこの胸を引き裂いて...) 戯曲: Ammazzami. (わたしを殺してちょうだい) 一方でオペラにおけるサントゥッツァの強烈な一言 Bada! (覚悟なさい!) は戯曲中にはない。 サントゥッツァはひたすらトゥリッドゥにすがりつく。 『その足でわたしの顔を踏みつけていいのよ。でもあの女はだめ!』 『(...)彼女のせいであんたはわたしを捨てていくんだ』 『(...)このうえまたあの女の前でわたしを辱めるようなことはしないで』 サントゥッツァはトゥリッドゥと同じく、否、それ以上にローラのことが許せないのだ。 そして...第4場のラスト。 『もうたくさんだ!畜生!』 と彼女を振りほどいたトゥリッドゥに対するサントゥッツァの最後の台詞: 『トゥリッドゥ!聖体におわします神様、ローラのせいで彼がわたしを置いて行きませんように!』 (そしてトゥリッドゥが去ると) 『ああ!あんたに呪われた復活祭を!』 (つづく) [参考資料] カヴァレリーア・ルスティカーナ/河島英昭訳 (岩波文庫) オペラ対訳ライブラリー カヴァレリア・ルスティカーナ/小瀬村幸子訳 (音楽之友社) イタリアオペラを原語で読む カヴァレリア・ルスティカーナ/武田好 (小学館) 戯曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」翻訳/武田好 (星美学園短期大学研究論叢第40号) Cavalleria rusticana/Giovanni Verga (OMBand Digital Editions) |
posted by 小澤和也 at 17:07| Comment(0)
| 音楽雑記帳
2022年02月03日
コンサートのごあんない
--> 長年ご一緒している立川市民オペラ。 今季は豪華ソリストが集結したガラコンサートを開催します。 合唱団も「カヴァレリア・ルスティカーナ」からのナンバーで彩りを添えます。 このような時期ではありますが、合唱団一同細心の注意をはらってプローベを重ねております。 みなさま、どうぞお運びください。 詳細はこちら↓ 【立川市民オペラ2022 スペシャルガラコンサート】 §日時: 2022年3月20日(日)、21日(月祝) ともに15時開演 §会場: たましんRISURUホール 大ホール §出演: 20日(日) 砂川涼子・山口安紀子(ソプラノ) 増田弥生(メゾソプラノ) 澤ア一了・角田和弘(テノール) 照屋博史・牧野正人(バリトン) 21日(月祝) 鈴木麻里子・山口佳子(ソプラノ) 鳥木弥生(メゾソプラノ) 大澤一彰・又吉秀樹・吉田連(テノール) 清水勇磨・森口賢二(バリトン)
越前皓也・冨田優・清水新(ピアノ) 立川市民オペラ合唱団、古谷誠一(指揮) §チケット: SS 5000円、S 4000円、A 3000円 |
posted by 小澤和也 at 10:41| Comment(0)
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