2023年08月20日

シャガールの版画展へ

image0.jpeg


「マルク・シャガール 版にしるした光の詩」(世田谷美術館) を鑑賞しました。

シャガールとの出会いは遥か遠い学生時代。
ようやく普及してきたCDでラヴェルのバレエ音楽『ダフニスとクロエ』を好んで聴いていた時期がありました。
同じ頃にシャガールの同名のリトグラフを、そしてこれらの原作である古代ギリシャの恋愛物語の存在を知って夢中になった記憶も。
自分の五感に新しく響いてくるものすべてが美しかった “佳き時代” でした。


初期のエッチング『ラ・フォンテーヌ寓話集』、木版による『ポエム』、リトグラフ『サーカス』などさまざまな手法を用いた興味深い作品の数々をゆったりとした気分で味わいました。
(入場者数を時間で区切ってコントロールする「日時指定」の方式は素晴らしいアイディアだと思います)
『〜寓話集』だけはあともう少し明るい照明のもとで観たかったかも。

圧巻はやはり『ダフニスとクロエ』でした。
全42点を通しで体験するのは初めて。
なんという色彩!
なんという幻想世界!
僕の中にある「官能のパレット」が掻き回され、調えられ、総取り替えされてゆくような不思議な感覚に誘われました。

会期は来週いっぱいですが、(もう一度観たい!) という衝動を抑えきれなくなりつつ今これを書いています。
posted by 小澤和也 at 09:22| Comment(0) | 日記

2023年08月18日

ペーテル・ブノワの誕生日に

image0.jpeg

きょう8月17日は
フランデレンの作曲家ペーテル・ブノワ (1834-1901) の誕生日。
〜といってもほとんどの方々には「ブノワって...誰?」という存在かと思います。
そこで、本国ベルギー以外ではほとんど知られていないこの人物について簡単にまとめてみました。


§ 1834年ベルギー・フランデレン地方の小都市ハレルベーケ生まれの作曲家・教師。ブリュッセル音楽院にて学ぶ。1857年カンタータ『アベルの殺害』でベルギー・ローマ賞受賞。ドイツおよびボヘミアに留学、そののちオペラ作曲家を志しパリへ出るも成功せず、ブリュッセルへと戻る。

§ 1867年アントウェルペンに音楽学校を設立。(当時国内で優位であったフランス語でなく) オランダ語による音楽教育の確立のために尽力する (1898年にこの学校は王立音楽院として認められる)。1893年フランデレン歌劇場を設立。1901年アントウェルペンにて死去。

§ ブノワはその後半生を母国語での音楽教育に捧げたため、没後はナショナリストのレッテルを貼られてしまう。また教育者としてのイメージが先行して、ベルギー国内でですら「誰もが名前は知っているけれど作品は知らない」という状況である。

§ 実際、彼の中期以降の作品には劇音楽『ヘントの講和』、カンタータ『フランデレン芸術の誇り』(別称: ルーベンスカンタータ) やいくつかの子供カンタータなど、啓蒙的・教育的な作品が多いのは確かである。ずばり『我が母国語』というタイトルの歌曲も。

§ しかしブノワの作品はそれだけではない。20-30歳代に書かれた『宗教曲四部作』、『フルートと管弦楽のための交響詩』、ピアノ曲集『物語とバラッド』などナショナリズムの色眼鏡にとらわれることなくもっと広く聴かれてよい佳品も多い。


とあるきっかけで『荘厳ミサ』(上記『四部作』の第二作) を知って以来、僕にとってブノワ研究はライフワークとなりました。
今年はさらに「一歩前進」の年にしたいと念じています。
みなさまにもペーテル・ブノワとその作品を知っていただけますよう願ってやみません。


〜9月23日に東京・立川にて『荘厳ミサ』を中心とした演奏会を開催します〜
↓リンクはこちら↓

みなさまのご来場を心よりお待ち申し上げます。
posted by 小澤和也 at 00:30| Comment(0) | 日記