レッスンからの帰り道。 某大手コーヒーショップでブレンドを啜りながら原稿のチェックをしていたところ、店員さんから優しく声をかけられた。 『こちらの限定販売豆の試飲をしていただいているのですが...いかがでしょうか?』 勧められるままに、小さな紙カップに注がれたゲイシャブレンドをいただく。 作業の手を止められてしまったことにほんの少し苛立ちを覚えながらも、その店員さんの落ち着いたたたずまいとやわらかな話しぶりにもやもやはほどなく消え、ごく自然な流れで始められたセールストークを伺うことに。 『お味はいかがでしたか』 「以前にパナマゲイシャのシングルオリジンを飲んだことがあるんですが...確かにあの独特の香りと舌触りがしますね」 『いつもブラックでお召し上がりになるのですか』 「はい」 『どんな種類の豆がお好きですか』 「エチオピアのモカ系などよく飲みますがマンデリンも好きですね」 『マンデリン、私も好きなんです』 etc. 店内飲食では比較的よく利用するのだが、実はこの店の豆を買ったことはない。 パッケージが200g入りであること、そして[賞味期限=12ヶ月]という点が残念ながら僕を「その気にさせない」のだ。 『他の豆よりはお高いのですが...本日はセール価格になっております。いかがですか』 我が家にはいま未開封の豆が100gあり、きょう持ち帰っても持て余してしまうことになるのでその旨を正直に伝える。 すると ─ 『きょうお求めいただいて後日またお持ちいただければその場でお挽きすることもできますよ(ニッコリ)』 (なるほど、そういうことか) 「私はいつも敢えて少量ずつ買って、一杯淹れるごとに自分で挽いて飲んでいるんですよ(ニッコリ)」 『そうでしたか!コーヒー、とてもお好きなのですね』 「ええ、まあ...」 もう二言三言を軽く交わしたのち、 店員さん、にこやかに退出。 何やら妙に“通”ぶっているイヤミな客だと思われてしまっただろうか(苦笑) 店員さんとのやり取りはとても楽しかった。 (あの物腰の柔らかさと専門知識の豊かさはどう考えてもアルバイトではないな...商品開発部門のベテラン社員さんかもな...) などとぐるぐる考えてしまった。 豆が100g売りで焙煎日が明記されていたならば(もちろん大手では難しいだろう)買っていたかもしれない。 |
2024年09月28日
コーヒーショップにて
posted by 小澤和也 at 10:35| Comment(0)
| 日記
2024年09月18日
【ペーテル・ブノワ試聴記】3つの無言歌より「舟歌」
ペーテル・ブノワ作品の新譜を聴く。 「月の光に」 〜フランダースのロマン派ピアノ曲集 川口成彦(pf)、他 2022年リリースのCD。 (いずれ手に入れよう...)とのんびり構えていたら2年近く経ってしまった。 ブノワの作品は次の3曲。 ・舟歌 op.2-2 ・幻想曲第3番 op.18 ・幻想曲第4番 op.20 このうち「舟歌」が初めて聴く曲だ。 「舟歌」は1858年9月(ブノワ24歳)、留学先のベルリンにて作曲された「3つの無言歌 op.2」の第2曲。 (他の2曲には標題は付けられていない) 題名からはメンデルスゾーンが連想されるのだが、果たしてその通りのこぢんまりとした性格的小品。 op.2として3曲通して聴けたならばまた違った感興が浮かぶかもしれない。 2つの「幻想曲」、殊に第3番 op.18はおそらくすべてのブノワ作品中もっとも有名なものだと思う。 ↓この曲についての少し詳しい解説へのリンク↓ http://kazuyaozawa.com/s/article/190768135.html (小澤和也 音楽ノート) この他にもブノワはそのキャリア最初期にマズルカ、カプリチオ、スケルツァンドなどのサロン風小品を多く手掛けた。 当時多くの作曲家がそうであったように、ブノワもパリでの成功を目指していたのだ。 川口成彦さんの流麗かつ鮮烈なフォルテピアノ演奏は実に美しく、聴く者の心を震わす。 ブノワの全ピアノ作品を録音してくださらないだろうかと真剣に願うものである。 幻想曲op.18の第二中間部で見せた即興的パッセージには思わず(おおっ!)と声が出た。 その他の収録曲は以下の通り。 ・C.L.ハンセンス(1802-71) ピアノフォルテのための協奏曲 (作曲者による六重奏編曲版) ・J.ファンデルヘイデン(1823-89) フランダースのロマンスによる奇想曲 op.4 ・P.ファンデン=ベルへ(1822-85) 月の光に(即興曲) op.17 シンプルな旋律 op.29 サロン風マズルカ op.30 ピエ=ララ 〜 17世紀フランダースの流行歌によるピアノのための幻想曲 op.24 3名ともブノワより前の世代の作曲家である。 ハンセンスはブノワが「彼から管弦楽法と指揮のレッスンを受けた」として伝記に名前の挙がるモネ劇場の指揮者...彼の楽曲は今回初めて知った。 ファンデルヘイデンはパリでグノー、フランクら作曲を学んでいるそう。歌曲やオペラ作品からのパラフレーズや変奏曲など、主にピアノ曲を作曲。 そしてファンデル=ベルへ。 「裕福な家庭に生まれたアマチュア音楽家、自費出版で作品を発表」などという経歴を見て驚いたが、ヒラー、タールベルク、シュルホフら著名な音楽家への師事歴もあってもう一度びっくり。 ここに聴く作品はどれも心地良い響きで気楽に楽しめるものばかり...素晴らしいピアノフォルテの響きを優れた録音で味わえる愉しいアルバムだった。 |
posted by 小澤和也 at 20:30| Comment(0)
| 日記