2015年02月11日

ブノワ (31) :オラトリオ『スヘルデ』[1]

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ペーテル・ブノワ『スヘルデ』
全三部からなる
ロマン的・歴史的オラトリオ

1868年完成、ブノワ34歳。
台本はエマニュエル・ヒールの作。
音楽はほんとうに素晴らしいのだが、歌詞がフラマン語であること、またテキストの内容も叙事詩的かつ啓蒙的で詩情に欠けること(有り体に言えば泥臭く、きな臭い)から、ベルギー国内ではまず演奏されにくい作品だ。

以下、その泥臭いテキストを抜粋して追ってみる。

【第1部】
主な登場人物…詩人、青年、少女、船乗り(たち)、農民たち

詩人は全三部を通し、各々の冒頭に登場する。
「おおスヘルデ、私はおまえの声を聞く
スヘルデは歌う、楽しげで優しい言葉を、
喜びと愛の言葉を!
また同時に深遠な和音を奏で、
その響きはあまねく伝わり、
そして心の中へ入り込んでゆく」

青年と少女(彼らも全三部に登場)はスヘルデを讃え、愛を歌う。
「歌え、美しいスヘルデよ、
眠っている恋人のために…
彼女が僕の夢を見ますように、
僕がおまえの岸辺の花を摘む間!」etc.
「歌って、美しいスヘルデよ、
私の心の安らぎのために!
私はおまえの岸辺で口づけされる、
愛の夢の中で!」etc.

〜とまあ、二人は終始こんな調子である。

そこへ船乗りの掛け声が。
「ホーイ、オー!
波が飛び跳ねている、
加わりたい者たちは皆、
出航せよ!」

続いて農民たちの歌。
「陽の光は傾き
そして穏やかに西へと沈む
入江の葦や小枝の中から
蛙やナイチンゲールたちの歌が
高まり始める」etc.

青年
「密やかな楽しい声が
僕をスヘルデへの船出に誘う」
少女
「豊かな魔法の歌が
私を船出への願望へと目覚めさせる」

このようなやり取りがしばらく続くと、

青年
「愛はすべての者を招き寄せる!」
「僕の腕の中に来て、
愛しい人!」
少女
「あなたの声は私の心を揺り動かす、
波のさざめきのように」
二人
「出航しよう!」
船乗りたち
「ホーイ、オー!
彼らは出航する!」

と、突然盛り上がって唐突に終わる。

この第1部は、ブノワ(と台本作者ヒール)による『フランデレン民族への励ましの呼びかけ』のようなものなのだと思う。
直情径行でかなり不器用ではあるが。

(つづく)


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posted by 小澤和也 at 20:31| Comment(0) | 音楽雑記帳
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