2015年02月15日

ブノワ (32) : オラトリオ『スヘルデ』[2]

 
(アルテヴェルデの霊魂のアリア)
 
【第2部・前半】
ここでの登場人物は非常に多岐にわたり、しかもそれらのほとんどが史実に基づいたものである。
よって、第2部のテキストを理解するには、フランデレンの歴史を知ることが大前提となるのだ。
 
12-13世紀頃、フランデレンの地は自治都市の集まりであり、商業・貿易の要として大いに栄えた。
これを狙ったのがフランスである。
1297年、フランデレン伯領はフランスに併合される。
しかしその後、民衆が蜂起しフランス軍を追い出した。[1302年、金拍車の戦い]
このとき戦ったとされる『獅子爪党(フランデレン側)』と『百合党(フランス側)』、そして蜂起のリーダー『ニコラス・ザネキン』の霊魂がまず登場する。
2つの党は男声合唱で、ザネキンの霊魂はバスで歌われる。
 
詩人
「おお、美しいスヘルデの流れよ、
おまえは私の心の中に高潔な
我らの英雄たちの姿を呼び起こす
霊たちの行列がそこに現れる、
おまえの岸に、靄のように etc.」
獅子爪党
「もしスヘルデに自由がないのならば
墓の中より我らは叫ぶ、
"フランデレンの獅子!" と」
百合党
「我らはあいつらを滅ぼす、
野を駆ける者たちすべてを」
ザネキンの霊魂
「自由よ、
おまえは民を奮い立たせるだろう、
我らの種族は暴力を許さない!etc.」
百合党
「獅子爪よ、
もしお前たちが立ち向かうならば
我らはお前たちを怯えさせてやる」
フランデレンの人々
「フランデレンの獅子!
我らは決して奴隷にはならない!」
 
次いでフランデレンの政治家『ヤコブ・ファン・アルテヴェルデ』の霊魂が現れる。
彼はフランデレンの利権を巡りイギリス・フランス間で生じた百年戦争(1339-1453年)の時代における自治都市連合の指導者であった。
 
ここで彼(バリトン)の歌うアリアは全曲中の白眉といっても良いだろう。
(ただしテキストはやはり今ひとつ詩情に乏しい…)
「私は死の覆いを脱ぎ捨てる
フランデレンは生命の証を再び与えるのだ!
人々は墓より立ち上がるー
彼らは敬虔な種族であり、
法を守り、
平和の中に活力を求め、
そして交易をより尊ぶ
武人のように争うのではなく!」
 
フランデレンの人々
「自由!交易!
フランデレンの獅子!」
百合党
「我らは死んでゆく…
暗い墓よ、
我らの悲しみを和らげよ!」
 
ここで音楽は変わり、第1部で登場した二人の恋人のシーンとなる。
そして、自由を勝ち取るためのフランデレンのさらなる戦いの場面へと…
 
この続きは改めて。
 
(つづく)
 
posted by 小澤和也 at 01:04| Comment(0) | 音楽雑記帳
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