![]() (アルテヴェルデの霊魂のアリア) 【第2部・前半】 ここでの登場人物は非常に多岐にわたり、しかもそれらのほとんどが史実に基づいたものである。 よって、第2部のテキストを理解するには、フランデレンの歴史を知ることが大前提となるのだ。 12-13世紀頃、フランデレンの地は自治都市の集まりであり、商業・貿易の要として大いに栄えた。 これを狙ったのがフランスである。 1297年、フランデレン伯領はフランスに併合される。 しかしその後、民衆が蜂起しフランス軍を追い出した。[1302年、金拍車の戦い] このとき戦ったとされる『獅子爪党(フランデレン側)』と『百合党(フランス側)』、そして蜂起のリーダー『ニコラス・ザネキン』の霊魂がまず登場する。 2つの党は男声合唱で、ザネキンの霊魂はバスで歌われる。 詩人 「おお、美しいスヘルデの流れよ、 おまえは私の心の中に高潔な 我らの英雄たちの姿を呼び起こす 霊たちの行列がそこに現れる、 おまえの岸に、靄のように etc.」 獅子爪党 「もしスヘルデに自由がないのならば 墓の中より我らは叫ぶ、 "フランデレンの獅子!" と」 百合党 「我らはあいつらを滅ぼす、 野を駆ける者たちすべてを」 ザネキンの霊魂 「自由よ、 おまえは民を奮い立たせるだろう、 我らの種族は暴力を許さない!etc.」 百合党 「獅子爪よ、 もしお前たちが立ち向かうならば 我らはお前たちを怯えさせてやる」 フランデレンの人々 「フランデレンの獅子! 我らは決して奴隷にはならない!」 次いでフランデレンの政治家『ヤコブ・ファン・アルテヴェルデ』の霊魂が現れる。 彼はフランデレンの利権を巡りイギリス・フランス間で生じた百年戦争(1339-1453年)の時代における自治都市連合の指導者であった。 ここで彼(バリトン)の歌うアリアは全曲中の白眉といっても良いだろう。 (ただしテキストはやはり今ひとつ詩情に乏しい…) 「私は死の覆いを脱ぎ捨てる フランデレンは生命の証を再び与えるのだ! 人々は墓より立ち上がるー 彼らは敬虔な種族であり、 法を守り、 平和の中に活力を求め、 そして交易をより尊ぶ 武人のように争うのではなく!」 フランデレンの人々 「自由!交易! フランデレンの獅子!」 百合党 「我らは死んでゆく… 暗い墓よ、 我らの悲しみを和らげよ!」 ここで音楽は変わり、第1部で登場した二人の恋人のシーンとなる。 そして、自由を勝ち取るためのフランデレンのさらなる戦いの場面へと… この続きは改めて。 (つづく) |
2015年02月15日
ブノワ (32) : オラトリオ『スヘルデ』[2]
posted by 小澤和也 at 01:04| Comment(0)
| 音楽雑記帳
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