![]() (スコア最終ページ) 【第3部・後半】 オラトリオの第1部からここまでは "詩人" が語り手として、スヘルデの美しさやフランデレンの歴史、人のあるべき姿について歌い、語ってきた。 そして第3部の後半に至って "芸術家" が初めて登場する。 「ああ、私の努力はただの幻に過ぎぬのか? それは虚しい夢想のように消えてしまうのか? 自分の心に生まれ来る生命を私が感じるとき、 私にとって、宝のように注ぐスヘルデが至高の存在であった。 しかし、それは幻影であったのか、 この川が与えてくれた喜びのすべては… だが、それがどうしたというのだ! 私はその苦悩を癒すための何かを持っているのだ。 私は探し求める、純粋なる美の領域を。」 ブノワ研究者で王立フランデレン音楽院図書館長のJan Dewildeさんはフルスコアの序文の中で次のように述べている。 『この "詩人" と "芸術家"(後者は最後の部分にのみ登場する)は通常、1人のバリトン独唱で歌われる。これらの登場人物が二人の "作者" を描いていることは明らかである。』 彼の言う二人の作者とはもちろん、台本作者のエマニュエル・ヒールと作曲者ペーテル・ブノワのことであろう。 ここでまたも曲調がガラリと変わり、管楽器が晴れやかに鐘の音を響かせる。 アントウェルペン大聖堂のカリヨンだろうか。 そして少女と青年はじめ様々な人物たちが姿を現す。 少女と青年 「鐘が鳴っている、 私たちは町へ向かおう!」 船乗りたち 「鐘が鳴っている、 我らは町へ向かおう!」 少女 「祝祭、それは私の心を惹きつけます! はやく!急いで!」 二人 「さようなら、スヘルデ、愛の川、 歓喜の声が岸で私たちを呼ぶ」 農民たち、漁師たち 「我らは積荷をどっさりと載せて、 声をあげて市場へ向け航海するのだ!」 商人たち 「我らは悦びにひたる、 今日もよく働いた、と!」 到着する水夫たち 「私の天使に挨拶を! 祖国に挨拶を!」 全員 「鐘が鳴っている etc.」 するとスヘルデ和音が輝かしい金管楽器によってハ長調で奏でられ、芸術家が再び登場。 「スヘルデ、おまえの雄大な和音を 人々の歌に付け合わせよ、 言葉の中に魂が溢れ出るところ、 そこでは愛と美が支配しているのだ。」 そして大団円。 オラニエ公の主題が二重合唱によって朗々と歌われる。 全員 「さようなら、スヘルデ、愛の川、 歓喜の声が岸で私たちを呼ぶ、 くねりながら進め、皆の恩恵のために、 自由の祖国を貫き通って、 力強く、華麗なる祖国ネーデルラントを!」 (オラトリオ『スヘルデ』完) |
2015年06月24日
ブノワ (35):オラトリオ『スヘルデ』[5]
posted by 小澤和也 at 00:17| Comment(0)
| 音楽雑記帳
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