今夜は満月。 買い物の帰り、雲間に見え隠れする月を見上げながら、瀧廉太郎の『月』の旋律をふと思い出していた。 組歌「四季」の中の第3曲。 明治33年(廉太郎21歳)作曲、同年11月に出版。 作歌(作詞)も瀧廉太郎自身による。 (余談だが、誰もが知っている『花』《春のうらゝの隅田川...》はこの組歌の第1曲にあたる) のちに山田耕筰が独唱歌曲として編曲した『秋の月』が有名だが、僕が好きなのはオリジナルの無伴奏混声四部合唱のヴァージョンだ。 『月』 山田耕筰編曲『秋の月』 オリジナルはハ短調、一方の『秋の月』では半音下げてロ短調を採っているのが興味深い。 (僕の中ではロ短調のほうがより「人間の情に迫り来る」調性に思える) 山田耕筰が加えたピアノ伴奏も、聴くものの琴線により働きかけるものとなっている。 それに対しオリジナルの『月』では、淡々と静やかに、うっすらと蒼白い光そのものが描かれているようだ。 そして… 楽曲のラストに大きな違いがやってくる。 廉太郎のオリジナルでは、最後の和音が同主調の長調=ハ長調で終わるのだ。 対して山田耕筰はこの部分を主調=ロ短調のままで結ぶ。 これは単に様式の差異でもあろうし好みはそれぞれであろうから、どちらが正しいor正しくないという話ではもちろんない。 ただ… 廉太郎は長調で結んだのである。 瀧廉太郎、月、とくると必然的に『荒城の月』が連想されてしまうわけだが、こちらの『月』も響きの美しさでは負けていない。 (詩はさすがに土井晩翠のもののほうが格が上だろうけれども...) 『月』 作歌:瀧廉太郎 ひかりはいつも かはらぬものを ことさらあきの 月のかげは などか人に ものを思はする などかひとに ものを思はする あゝなくむしも おなじこゝろか あゝなく虫も おなじこゝろか こゑのかなしき |
2015年10月27日
瀧廉太郎の『月』
posted by 小澤和也 at 23:58| Comment(0)
| 日記
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