2015年10月27日

瀧廉太郎の『月』

 
今夜は満月。
 
買い物の帰り、雲間に見え隠れする月を見上げながら、瀧廉太郎の『月』の旋律をふと思い出していた。
 
組歌「四季」の中の第3曲。
明治33年(廉太郎21歳)作曲、同年11月に出版。
作歌(作詞)も瀧廉太郎自身による。
(余談だが、誰もが知っている『花』《春のうらゝの隅田川...》はこの組歌の第1曲にあたる)
 
のちに山田耕筰が独唱歌曲として編曲した『秋の月』が有名だが、僕が好きなのはオリジナルの無伴奏混声四部合唱のヴァージョンだ。
 
『月』
 
山田耕筰編曲『秋の月』
 
オリジナルはハ短調、一方の『秋の月』では半音下げてロ短調を採っているのが興味深い。
(僕の中ではロ短調のほうがより「人間の情に迫り来る」調性に思える)
山田耕筰が加えたピアノ伴奏も、聴くものの琴線により働きかけるものとなっている。
それに対しオリジナルの『月』では、淡々と静やかに、うっすらと蒼白い光そのものが描かれているようだ。
そして…
楽曲のラストに大きな違いがやってくる。
廉太郎のオリジナルでは、最後の和音が同主調の長調=ハ長調で終わるのだ。
対して山田耕筰はこの部分を主調=ロ短調のままで結ぶ。
 
 
これは単に様式の差異でもあろうし好みはそれぞれであろうから、どちらが正しいor正しくないという話ではもちろんない。
ただ…
廉太郎は長調で結んだのである。
 
 
瀧廉太郎、月、とくると必然的に『荒城の月』が連想されてしまうわけだが、こちらの『月』も響きの美しさでは負けていない。
(詩はさすがに土井晩翠のもののほうが格が上だろうけれども...)
 
 
『月』    作歌:瀧廉太郎
 
ひかりはいつも かはらぬものを
ことさらあきの 月のかげは
などか人に ものを思はする
などかひとに ものを思はする
あゝなくむしも おなじこゝろか
あゝなく虫も おなじこゝろか
こゑのかなしき
 
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 23:58| Comment(0) | 日記
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