2016年03月31日

【中期のシューベルト4】ピアノソナタ イ長調

 
ピアノソナタ イ長調 D664
 
 
1819年夏、22歳のシューベルトは友人のバリトン歌手ミヒャエル・フォーグルとともに彼の故郷、上オーストリア州のシュタイヤーを訪れた。
美しい自然に恵まれたこの町の雰囲気は、シューベルトをこの上なく幸せな気分にさせたといわれている。
 
 
同地滞在中に作曲されたこのイ長調ソナタ、第1楽章Allegro moderatoは次のようなカンタービレな主題で始まる。
 
 
息の長いチャーミングな旋律がよどみなく、糸を紡いでゆくかのように生まれ出る、幸福感に溢れた楽章である。
(前に取り上げた嬰ハ短調ピアノソナタでの苦心の跡とは実に対照的だ)
展開部はいたってシンプル。
"無理をしていない" という印象。
 
 
第2楽章はAndanteの変奏曲。
ニ長調でありながらしっとりとした、夢みるような楽想が楽章全体を覆っている。
どことなく翳りを帯びた内声部の "綾" が美しい。
 
 
 
そして第3楽章。
最初の楽章と同様にソナタ形式をとる。
牧歌的な主題は次第に勢いを増し、ワルツにまで発展してゆく。
ここでシューベルトの筆は "有頂天" という言葉が当てはまるがごとく冴えわたっている。
 
 
 
前田昭雄氏はその著書の中で、シューベルト20歳代初め頃の充実ぶりを『若さの「完成」』という言葉で表現しているが、このイ長調ソナタはまさにその典型と呼んで差し支えないであろう。
 
 
【追記】
この曲の作曲年代については、1825年とする説もあるのだそうだ。
(シューベルトはこの年にもシュタイヤーへ赴いている)
 
 
 
posted by 小澤和也 at 22:58| Comment(0) | 音楽雑記帳
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