2017年04月23日

白秋の『白き花鳥図』〈4〉

 
『珠数かけ鳩』
 
    唐画
 
珠数かけ鳩はむきむきに
落ちし杏(あんず)をつつくなり。
 
しめりまだ乾(ひ)ぬ土のうへ、
杏(あんず)はあかし、そこここに。
 
珠数かけ鳩の虔(つつ)ましさ、
脚(あし)にひろひぬ。飛び飛びに。
 
空に杏(あんず)の葉はにほひ、
羽根に雫の色涼し。
 
珠数かけ鳩は行き過ぎて、
あかき杏(あんず)につまづきぬ。
 
 
『白き花鳥図』全18編中、12番めの詩。
題名の傍らにやや小さな活字で「唐画」と記されている。
 
 
 
本詩集の中にはこの『珠数かけ鳩』を含め、同じように副題が添えられているものがある。
 
『辛夷』唐画 (5)
『蓮の実』唐画 (10)
『鵲』唐画 (11)
『珠数かけ鳩』唐画 (12)
『鳩』元画 (13)
『黎明』印度画趣 (14)
(カッコ) 内の数字は収録順
 
『辛夷』とともに歌われているのは黄鳥 (コウライウグイス)、同様に『蓮の実』にカワセミ、『鵲』に車前草 (オオバコ)...
たしかに、大陸の趣を感じなくもないか。
 
珠数掛鳩はシラコバトの別称。
数羽の鳩たちが思い思いに、熟して落ちた杏の実をついばんでいるさまを愛らしく描く。
一貫した7+5文字のリズム、また "むきむきに" "そこここに" "飛び飛びに" といった弾むような語感も読んでいて心地よい。
 
"脚にひろひぬ"、意味を掴みづらいのだがおそらくは "拾い足" (道の比較的よい所を選んで歩くこと) を指すのだと思う。
杏の実を踏まぬよう慎重に脚を運ぶ珠数かけ鳩、それでもときおり歩幅を誤って躓いてしまう...
そんなユーモラスな情景が目に浮かぶようだ。
 
この詩は前述のように、組曲の第2曲として置かれている。
モティーフの繰り返しを多く用いるとともに、単語のイントネーションとそこに充てられた旋律線が美しく調和しており、素朴で温かみのある「語り」をゆったりと聴いているような気分を醸し出す。
 
 
(つづく)
 
 
posted by 小澤和也 at 12:00| Comment(0) | 音楽雑記帳
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。