2019年07月09日

カリンニコフ(3) 『管弦楽のための組曲』

 
 
 
§管弦楽のための組曲
 
作曲:1891-92年
初演:1892年11月21日、モスクワ
演奏時間:T 約10分、U 約5分、V 約19分、W 約6分 計 約40分
編成:フルートx2 (ピッコロ持ち替え)、オーボエx2、クラリネットx2、バスーンx2、ホルンx4、トランペットx2、トロンボーンx3、ティンパニ、トライアングル、シンバル、バスドラム、ハープ、弦五部
 
楽章構成:
第1楽章  Andante, 4/4(拍子), ロ短調
第2楽章  Allegro scherzando, 3/4, ニ長調 - Moderato, 2/4, ト短調
第3楽章  Adagio, 4/4, ニ短調 - Andante con moto, 2/4 , ニ短調
第4楽章  Allegro moderato, 2/4, 変ロ長調
 
 
カリンニコフ25-26歳頃の作品。
1892年、チャイコフスキーはモスクワ・マールイ劇場の指揮者として彼を推薦する。
しかし結果は虚しいものであった...選考委員会は彼の才能をはっきりと認めていたものの、最終的には経験不足が批判の対象となったのだ。
組曲の初演は同年11月、フィルハーモニー協会のシンフォニーコンサートにおいて。
各楽章とも熱狂的な喝采を受けたと伝えられる。
 
 
第1楽章では古い物語を訥々と語るような、懐かしさと哀愁を帯びた旋律が綿々とつづられてゆく。
のちの交響曲ほどの規模ではないが、すでにポリフォニックな展開を見せる部分もある...この時期においてすでに対位法的書法への志向が彼のトレードマークとして姿を現しているように思える。
 
第2楽章は (交響曲などにおける) 典型的なスケルツォ/三部形式的な快活な音楽。
中間部は第1交響曲第3楽章の同じ部分に楽想・雰囲気ともにそっくり...ロシアの土の香りが色濃く漂っている。
 
続く第3楽章は長大なエレジー。
これだけを独立した楽曲と見なしても良いほどだ。
この楽章も大まかに捉えると三部形式的であるが (この構成感覚もカリンニコフの特徴といえそうである)、第1および第3部に比べ中間部Andanteの規模が著しく大きい。
構成的にはかなり “緩く” 感じられるが、遺憾なく発揮されている彼のメロディメーカーとしての力量で終わりまで一気に聞かせてしまう、そんな印象である。
途中、第1交響曲第2楽章の主要主題を彷彿とさせる美しい旋律が姿を見せる。
 
第4楽章はふたたび明るさを取り戻し、快活な、それでいてややひなびた民謡風の楽想が繰り広げられる。
ここで特徴的なのが「音列のモティーフ」である...ざっと聞き取れただけでも次の3種類ほど。
“ソ-ファ-ミ-レ-ミ-ファ-ミ-レ-ド”
“ラ-↑ド-ド-レ-ミ-↑ラ”
“ド-シ-ラ-シ-ド-レ-↓ソ”
これらがさまざまなリズム構成で奏され、この楽章の主要な旋律線を描いている。
途中、第1楽章のメロディを再出させるなどしながらパレードの行列のように賑々しく曲が進むが、それが突然やむと第2楽章中間部の土臭いフレーズが静かに回想される。
しかしそれも長くは続かず、ふたたび曲頭の明るさがかえってくる。
そして第3楽章の短い回想を挟んで、バレエ音楽の大団円のように華やかに全曲を閉じる。
 
この終楽章、それ自体はもちろんとても魅力的であるのだが、第1/第3楽章に比べて掘り下げの浅いところがやや物足りない気もする。
加えて、ロ短調で始まりニ長調、ニ短調と進んできたのが最後に変ロ長調で終わるという (古典的組曲の視点からすると) 収まりの悪さも否めない。
〜これらの弱点は第1交響曲において見事に克服されることとなる〜
 
全編にわたって民謡風で素朴な息の長い旋律にあふれ、その一方でポリフォニックな書法にも目を向けている点、そして終楽章においてはそれまでに出てきた主要主題を回想的に再現する手法を用いるなど、カリンニコフの個性はこの時点ですでに確立されているように思われる。
posted by 小澤和也 at 09:06| Comment(0) | 音楽雑記帳
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