2022年02月06日

カヴァレリア・ルスティカーナの源流をたどる (3)



(2)の続き、第2場からです。

『カヴァレリア・ルスティカーナの源流をたどる』
(1) のリンクはこちら↓
(2) のリンクはこちら↓


[第2場]
【トゥリッドゥ、およびサントゥッツァ】
前景の登場人物たちがみな教会へと向かい、ひとりヌンツィアの家の前でトゥリッドゥを待つサントゥッツァ。
そこへトゥリッドゥが急いで登場、サントゥッツァの詰問から二人の言い争いへと展開してゆくところは戯曲とオペラとで同様であるが、サントゥッツァの言葉遣いに若干のニュアンスの違いがあることに気づいた。
例えば最初のやり取り。
オペラでは

Tu qui, Santuzza? (おまえ、ここに、サントゥッツァ?)
Qui t’aspettavo. (ここであんたを待ってたのよ)

と始まるのだが、一方戯曲では

Oh,Santuzza! … che fai tu? (おお、サントゥッツァ!...ここで何してるんだ?)
Vi aspettavo. (あなたを待っていたの)

tu(親称二人称) で言葉をかけるトゥリッドゥに対し、サントゥッツァはオペラでは対等にtuで、戯曲では敬称のvoiで返すのだ。
トゥリッドゥへの呼びかけもこの場面では“Compare Turiddu”( トゥリッドゥさん)である。

もう一点、戯曲を読むとトゥリッドゥの ”ダメンズ“ ぶりがいっそう際立っているように感じられるのだ。
フランコフォンテへ (ワインを仕入れに) 行っていたということが嘘であると見破られた後の台詞:
『俺は自分がいたいと思ったところにいたのさ』
「今あなたに捨てられたらわたしはどうすれば?」とすがるサントゥッツァに対しては
『俺はおまえを捨てたりしないさ、おまえが俺を追い詰めなければ。でも言ったろ、俺はやりたいと思ったことは自由にできる御主人様でいたいんだ』
そして最後には
『やりたいと思ったことができない男などと思われたくないんだ、そんなのはだめだ!』

二言目には “mi pare e piace”、
「俺がやりたいように」の一点張りなトゥリッドゥなのである。


[第3場]
【ローラ、トゥリッドゥ、およびサントゥッツァ】

ローラが登場。
(オペラでは『アイリスの花〜』と小唄を口ずさみながら姿を見せるが、戯曲にはこのストルネッロはない)
ローラの
『あら、トゥリッドゥさん、私の夫が教会へ行くのを見ませんでした?』
に始まる三者のやり取り、細部は異なるがその内容、そして発言の順序は戯曲とオペラとでほとんど全て同じである。

両者で唯一異なっているのが
トゥリッドゥ: 行こう、ローラさん、ここですることなんて何もない!
ローラ: 私に気を遣わないで、トゥリッドゥさん、道はわたしの足がよくわかってるから。それにあなた方の邪魔もしたくないですし。
〜の後に続くトゥリッドゥの一言、
Se vi dico che non abbiamo nulla da fare!
(何の用もない、って言ってるんだ!)
トゥリッドゥはローラに対してでさえとっさに癇癪を起こしているのだろうか...?
乏しい語学力ゆえ正確なニュアンスは分からないけれど...


[第4場]
【トゥリッドゥ、およびサントゥッツァ】
ローラが教会と去ってゆき、場面はふたたび二人きりとなる。
「すがるサントゥッツァとこの場から逃れようとするトゥリッドゥ」という構図は戯曲とオペラとでもちろん共通であるが、そのやり取りは戯曲のほうがかなり長く、また生々しさも数段すさまじく感じられる。
(ここではサントゥッツァもトゥリッドゥに対し “tu” で返している...第2場とは対照的なサントゥッツァの心情の変化を示していよう)

始まってすぐ、トゥリッドゥがサントゥッツァを罵る言葉:
オペラ: Ah! perdio! (ああ!畜生!)
戯曲: Ah! sangue di Giuda! (ああ!ユダのような奴め!)
直後のサントゥッツァ:
オペラ: Squarciami il petto… (わたしのこの胸を引き裂いて...)
戯曲: Ammazzami. (わたしを殺してちょうだい)

一方でオペラにおけるサントゥッツァの強烈な一言
Bada! (覚悟なさい!)
は戯曲中にはない。
サントゥッツァはひたすらトゥリッドゥにすがりつく。
『その足でわたしの顔を踏みつけていいのよ。でもあの女はだめ!』
『(...)彼女のせいであんたはわたしを捨てていくんだ』
『(...)このうえまたあの女の前でわたしを辱めるようなことはしないで』
サントゥッツァはトゥリッドゥと同じく、否、それ以上にローラのことが許せないのだ。

そして...第4場のラスト。
『もうたくさんだ!畜生!』
と彼女を振りほどいたトゥリッドゥに対するサントゥッツァの最後の台詞:
『トゥリッドゥ!聖体におわします神様、ローラのせいで彼がわたしを置いて行きませんように!』
(そしてトゥリッドゥが去ると)
『ああ!あんたに呪われた復活祭を!』

(つづく)


[参考資料]
カヴァレリーア・ルスティカーナ/河島英昭訳 (岩波文庫)
オペラ対訳ライブラリー カヴァレリア・ルスティカーナ/小瀬村幸子訳 (音楽之友社)
イタリアオペラを原語で読む カヴァレリア・ルスティカーナ/武田好 (小学館)
戯曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」翻訳/武田好 (星美学園短期大学研究論叢第40号)
Cavalleria rusticana/Giovanni Verga (OMBand Digital Editions)
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posted by 小澤和也 at 17:07| Comment(0) | 音楽雑記帳
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