2025年06月15日

ペーテル・ブノワ 小澤和也編「5つのモテット」についてのノート

ベルギーの作曲家ペーテル・ブノワ (1834-1901) はその青年期に数多くのモテットを書いています。1857年に「12のモテット集」、1868年には「20のモテット集」がそれぞれブリュッセルのショット兄弟社より出版されました。

「20のモテット集」の出版譜表紙には『同声合唱とオルガンまたはハルモニウム伴奏のための』と記されています。二部合唱あるいは三部合唱、そこに独唱が加わる形の曲もあります。またいくつかは斉唱 (あるいは独唱) のための作品です。若書きということもあってか、それらの中には比較的簡素な楽想、有り体に言ってしまえばやや深みに欠ける曲が含まれる一方で、美しいハーモニーに縁取られた魅力的な旋律をもつ佳品もあります。

最初に私の琴線に触れたのは第20曲 Ave Maria (アヴェ・マリア) でした。シンプルでありながら聴き手をうっとりとさせるたおやかなメロディ、それに寄り添う伴奏の繊細な色彩の明滅が静かな感動を呼び覚まします。そして...私の脳裡にはこのオルガンパートがコーラスのように響いたのでした。

(この曲をア・カペラで演奏できたならば...)
こうして出来上がったのが今回の混声合唱版「アヴェ・マリア」です。伴奏声部の器楽的な音の運びも感じられるよう意を用いました。

次に心惹かれたのが第7曲 Panis angelicus (天使の糧) です。原曲の編成は三部合唱+独唱、オルガンも独立した声部を持っています。かかる多層的・立体的なこの作品のアレンジには時に困難も伴いましたが、同時にペーテル・ブノワの「心」に近づくための深い思索の機会ともなりました。

楽想が実にオルガン的と言える第10曲 Regina coeli (天の元后)、そして今回収録は行いませんでしたが第16曲 Tota pulchra es (御身すべて美し、マリアよ)、および第15曲 Sub tuum (御身の庇護の下に) を加えた全5曲を無伴奏混声合唱のために編み、「ペーテル・ブノワ/5つのモテット」と題して曲集としました。本国ベルギー以外では未だほとんど知られていないペーテル・ブノワの素晴らしい音楽が日本で、そして世界で歌われ愛されるときが来ることを願ってやみません。


アヴェ・マリア Ave Maria
https://youtu.be/WfUMPG55Zw0
天使の糧 Panis angelicus
https://youtu.be/N1vCVVmaJzs
天の元后 Regina coeli
https://youtu.be/6q68YLNrgFQ

合唱: 東京農工大学グリークラブ
指揮: 小澤和也
posted by 小澤和也 at 12:14| Comment(0) | 音楽雑記帳
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