2026年01月06日

ブノワを知る10曲(7)

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《我が母国語》

完成: 1889年4月
初演: 1889年5月2日、アントウェルペン、ネーデルラント劇場、ヘンドリク・フォンテーヌ(バス)
出版:Röder社(ライプツィヒ)


§詩人グロートと低地ドイツ語
クラウス・グロート(1819–1899)はドイツ北部、ホルシュタイン地方に生まれた詩人です。生涯を通じて低地ドイツ語文学の発展に尽力し、地域の生活や自然・文化などを詩的に表現しました。
グロートは30歳代のはじめ頃、フェーマルン島での療養中に『クヴィックボルン』と題された詩集を編みました。「我が母国語」はその中に収められています。


§ブノワ歌曲の最高傑作
1889年5月、グロートの生誕70周年を記念した祝賀会がアントウェルペンにて催されました。この式典への協力を依頼されたブノワは即座にこれを引き受け、歌曲「我が母国語」を作曲します。
付曲に際してはフランデレンの作家コンスタント・ハンセンによるアルディーチ(中世オランダ語)訳詩が用いられました。歌はもちろんのこと、ハープと弦五部(ヴァイオリンx2、ヴィオラ・チェロおよびコントラバス)による伴奏も実に魅力的です。

フランデレンの作家で詩人のランブレヒト・ランブレヒツ(1865-1932)はこの曲について次のように書いています。
『その深い情感と詩的な内容、優雅にうねる旋律、そして完璧な形式美により、ペーテル・ブノワの歌はフランデレン精神の目覚めをもたらし、フランデレンにおいて古典的な意義を持つに至った。(...) 私たちがこの地で目にした、母国語を称賛する多くの作品の中でも、これに匹敵するものは一つもない。(...)ブノワが『我が母国語』以外の作品を何も作曲していなかったとしても、彼の名前は不滅のものだったであろう。』


§拙訳「我が母国語」

我が母国語、比類なく愛しきもの

その甘い響きは深く魂をふるわせる

私の心が鋼や石のようであるときも

あなたはその驕りをはらい去ってくれる


あなたは私のこわばった首をやさしく垂れさせる

母がその胸に抱くように

あなたが私の顔を優しく撫でるとき

すべての苦しみはしずまる


私は無邪気な子供のようだ

邪な世界はそこにはない

あなたが春風のように私を包みこむと

喜びがふたたび花開く


「さあ」そして老父はなおも言った

私の手を組ませ「祈りなさい」と

「父なる神よ」と私は始める

その昔にしたように


私は深く感じ そして理解する

真心がそのように語りかける

そして天上の平安が私へと吹き寄せ

すべてがふたたび幸福となる


清く公正なる我が母国語よ

古の民のことばの語り部よ

ただ口に「父よ」と発すれば

それは天使の歌声のように私に響く


これほどに私の心を優しく愛撫する歌はない

これほどに美しく歌う夜鶯はいない

そして涙が頬を伝ってゆく

谷間を流れる小川のように


 
§参考音源
レイチェル=アン・モーガン(メゾソプラノ&ハープ)
ユリウス・サッべによる現代オランダ語訳での歌唱です。
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posted by 小澤和也 at 01:23| Comment(0) | 音楽雑記帳
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