1889年(ブノワ55歳頃)の作品。
クラウス・グロートによるこの詩、オリジナルはドイツ語の一方言、いわゆる「低地ドイツ語」である。
言語こそ違え、マイノリティゆえの苦悩という点では両者に共通する心情があったことだろう。
この低地ドイツ語、文法的に中世オランダ語と非常に近いのだそうだ。
原曲は…独唱(低声)+ハープ&弦楽五重奏の編成だったとのこと。
この形では未だ出版されていないそうである。
(手元の楽譜ではピアノまたはハープの伴奏となっている)
僕の持っているCDは、ハープの弾き語りによるメゾソプラノ独唱、現代オランダ語訳による歌唱である。
歌い出しのメロディはこんな感じ。
「ソ-|ラミソ---ソ-|ラミソ---ソ-|ラ-ド-シ-ミ-|ファ-----…」
(移動ドによる表記。原曲は変ニ長調)
柔和で素朴な旋律、子守歌のような伴奏音型が絶妙の転調を交え淡々と進んでゆく。
間奏部分の音の連なりに、シューベルトの「楽に寄せて」を一瞬連想した。
原詩、上記オランダ語訳のほかに、いくつかの英訳も参考にしながら訳してみた。
日本語としては全然こなれていないが、できるだけダイレクトに置き換えてみたつもりである。
〜我が母国語〜
我が母国語よ そなたは何と美しく響く!
親愛なるそなたよ!
私の心が鋼や石のようであるときも
そなたはその驕りをはらってくれる
そなたは私の強情な首を軽く曲げる
母がその腕でしたように
そなたは私の顔に優しくささやく
すると全ての喧騒は静まる
私は小さな子供のようだ
全ての邪悪な世界は消えうせる
春風のようなそなたの息吹が
病める我が胸を健全にする
祖父は私の手を組んで
そして言った「祈りなさい!」と
「父なる神よ」と私は始める
その昔にしたように
深く感ぜよ そして理解するのだ
心がそう告げている
天上の平安が私を包む
そして再び全ては幸福となる
清らかで公正なる我が母国語よ
古人の有徳なる言葉よ!
「父よ」とその口が発すると
それは祈りの言葉のように私に響く
私をこれほどに愛撫する音楽は無い
これほどにさえずる夜鴬もいない
今にも涙が頬を伝って流れる
谷間を流れる小川のように
2010年09月05日
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