2010年09月21日

ブノワ(18):レクイエム[3]

([ディエス イレ]つづき)

§第二部

Poco lento 変ホ長調 4/2拍子
前段までの劇的で不穏な音楽に代わり、合唱を中心とした穏やかな楽想が現れる。
主題は3つの楽節からなっている。
a)…ドーレー|ファーファー|ミーレー|ソーソー|
    ソードー|ファーファー|ミミミーレ|レーーー|〜
    (16小節)
b)…ソーラー|シ♭ーラソ|ファーミーレ|ミーラー|〜
    (16小節)
c)…・ドード|レ♭ーミ♭ー|ドドード|シ♭ードー|ラ♭ーーー|〜
    (14小節)

楽節a)は調性的にも安定している。
メロディラインだけを見ると非常に素朴な音の進行であるが、巧みな和声付けによって心の奥に沁みるコラールとなっている。
それに対して、b)およびc)は半音階的進行が多用され、フレーズの中で転調を繰り返してゆく。

まず、アカペラの混声合唱でa)が柔らかく歌われる。「思い出したまえ〜」
次いで弦楽を伴ってb)が現れ、属調である変ロ長調に移る。
「私を尋ね〜」
さらに、男声によってc)が力強く歌われる。
変ロ長調→変ホ短調→変イ短調と絶えず揺れ動き、ようやく変ト長調に落ち着く。「正しい審判者よ〜」
(スタート(変ホ長調)から見ると、短3度上行の転調となる)

音楽はa)に戻り、変ト長調で「私は嘆く〜」と大合唱が弱音で歌う。
それに対して小合唱が掛け合いのフレーズを、刻み込むようにfで響かせる。
以下、b)「マグダラのマリアを赦し〜」→c)「私の願いは〜」と続き、明るいイ長調の響きに到達すると、三たび楽節a)が現れる。
全合唱によって「羊の間に〜」と高らかに歌われ、祝福の鐘の音のような管楽器のシンコペーションがこれに寄り添う。

このように第二部は劇的な変化を持たず、一貫したテンポと拍子によってひたすらたおやかに、祈るように奏される。
しかし、音楽は再び厳しさを帯び、クライマックスのLacrimosa(涙の日)に向かって進んでゆくのである。

(第三部へつづく)
posted by 小澤和也 at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽雑記帳
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