12・24にちなんで、この曲を取り上げたいと思う。
原題は "Kerstmis"、オランダ語で「クリスマス」。
テノール独唱と混声合唱、管弦楽のための9分ほどの小品である。
この曲は「レクイエム」や「荘厳ミサ」で用いられた二重合唱ではなく、通常の混声四部のスタイルを採っている。
作曲は1858年。(このときブノワ24歳)
曲は、エピソードを挟んで3つの部分が鏡像のように現れる形(A-B-C-エピソード-C-B-A)で構成される。
1)部分A…Andantino pastorale 3/8拍子
オーボエとクラリネットによるハ長調の牧歌風なメロディに始まる。
やがて他の管楽器も加わり、羊飼い達と彼らの見張る羊の群れのいる情景を描き出す。
2)部分B…Allegro maestoso 4/4拍子
突然ホ長調に転じ、合唱が「天のいと高きところに神の栄光あれ」と歌う。
羊飼い達が聴く天上からのキャロルである。
天使の楽器ハープと、神の楽器オルガンがこれを支える。
3)部分C…Andantino poco allegretto 9/8拍子
弦楽器を主体とした伴奏に乗って、テノールソロが甘美なメロディを歌う。
羊飼い達を聖地ベツレヘムへと誘う妙なる歌声であろうか。
「信仰あつき人々よ、勝利を歓喜して 来たれベツレヘムへ。
天使がたたえる王が お生まれになったのを見よ」
4)エピソード Maestoso
合唱とテノールが各々のテキストを交互に歌う、短い挿入。
5)部分C(再)
上記3)と同じ楽想。
6)部分B(再)
上記2)をほぼ再現する形だが、管弦楽が伴奏に加わり色彩感を増す。
7)部分A(再)
冒頭で聴かれた牧歌が優しく奏でられ、ホルンのパッセージが残る中、弦のピツィカートによって曲が閉じられる。
後に作曲された「荘厳ミサ」や「レクイエム」のようなスケール感やドラマ性にはやや欠けるが、若さと創意、そして良い意味での朴訥さを感じることのできる作品だ。
この曲の音源は、おそらく市販されていないと思う。
僕が聴いているのは、アントワープのブノワ研究家、J.Dewilde さんからいただいた映像資料である。
2010年12月24日
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