先日ようやくスコアを手に入れた、この曲を取り上げよう。
§Symfonisch gedicht voor fluit en orkest
(フルートと管弦楽のための交響詩)
・作曲/初演 1865年、ブリュッセル/1866年2月、アントウェルペン
・演奏時間 約20分
・編成 フルート独奏
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、バスーン2
ホルン4、トランペット2、ティンパニ、弦五部
「交響詩」とあるが、実質的には協奏曲である。
(当初のタイトルは「交響的協奏曲」だった)
3楽章形式で、各楽章に次のような標題が付けられている。
1.鬼火 2.哀愁 3.鬼火の踊り
こうした標題は、同じ時期に書かれた「ピアノと管弦楽のための交響詩」や、それ以前に作曲されたピアノ独奏曲「物語とバラッド集」(1861年)にも付加された。
それらは、ブノワの出生地に残る伝説から採られているのだそうだ。
この作品は、初演時のフルート奏者J.デュモンとその弟子T.アントーニに献呈された。
[第1楽章:鬼火]
スケルツォ・ヴィヴァーチェ、ホ短調、3/4拍子
展開部を欠いたソナタ形式。
冒頭、速い3拍子の激しいリズムに乗って、情熱的な第一主題がオーケストラによって呈示される。

これがいったん静まると、低弦のpp保続音(fis)上で独奏フルートがカデンツァ風に颯爽と登場する。
属調(ロ短調)で再度第一主題が力強く現れ、フルートのパッセージがそれに続く。
次いで、よりなだらかで表情豊かな第二主題(ト長調)がチェロで奏され、フルートがすぐにそれを受け継ぎ発展させてゆく。

やがてこの部分が静かに収まると、フルートが音量・テンポを自在に操りながら進む小結尾へ。
次第に盛り上がりつつ呈示部を終わる。
展開部の代わりの、ごく短いエピソード部分を経て、音楽はそのまま再現部へ入る。
第一主題が原調、次いでイ短調で奏でられた後はほぼ型通りに進み、第二主題および小結尾はホ長調で現れる。
コーダではテンポをさらに速める(Presto)。
オーケストラがエピソード部で見せたリズム音型で支える中、フルートが技巧的なフレーズを吹き続け、短いカデンツァと共に一気に楽章を閉じる。
(この項つづく)