ピアノ協奏曲変ロ長調第27番 K.595〜第2楽章
モーツァルトの死の年、1791年の作曲。
この静けさ、軽やかさ、そして響きの透明感は一体なんだろう…
それゆえにかえって、聴く者の心に痛いほどに迫ってくる。
例えは甚だ良くないが「半ば彼岸に到達してしまっているような」音楽である。
「〜もはやどんな野心や譲歩も入り込む余地はない。
モーツァルトは誰に聴かせるともなく、ひたすらに
純粋な諧音を響かせる」
(田辺秀樹氏の著作より)
第2楽章…ラルゲット 変ホ長調 2/2拍子
最晩年のモーツァルトにとって、この「変ホ長調」というのは正に特別な調性だったのではないか。
弦楽五重奏曲 K.614、歌曲「春への憧れ」 K.596、そしてフリーメイソンの聖数"3"が散りばめられた「魔笛」も変ホ長調を軸として書かれている。
(言うまでもなく、変ホ長調=♭3つである)
楽章冒頭、ピアノ独奏で、続いてオーケストラによって奏でられる主題。
すでに「天上の音楽」である。
さらに僕の心を震わすのが、33小節目(2分と少し進んだあたり)からのヴァイオリンのかすかなため息、そしてfでの啜り泣き。
ああ、まだモーツァルトは「こちら側」にいるのだ…
ギュッと胸を締め付けられる瞬間である。
中間部は天衣無縫、融通無碍の自由な世界。
変ロ長調→変ト長調→変ホ短調と、あたかも羽が生えたように飛びうつり、ほどなく主部へと回帰する。
ピアノの右手とフルート、ヴァイオリンで奏でられる再現主題のブレンドされた響きは、目に涙をいっぱいためながらも微笑んでいるモーツァルトの歌声のようだ。
カザドシュ独奏の盤でよく聴いている。
2011年03月25日
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