2011年04月17日

ブノワ(28):歌曲「デンデル川の歌」

先日入手したLPレコードに収められている歌曲である。
詳細は不明だが、おそらく1865〜70年頃(ブノワ30歳代前半)の作品だ。
この頃のブノワは、同じ年生まれの自由主義思想の詩人、エマヌエル・ヒールから影響を受け、彼の多くの詩に曲を付けた。
また、オラトリオ「リュシフェール」「スヘルデ川」など多くの作品で彼から台本の提供を受けている。


曲はハ長調、8分の6拍子。
テキストはもちろんフラマン語である。
さらさらと流れゆく川のイメージそのままの音楽だが、ところどころ立ち止まって考え、思い、悩む。
詩と曲想との対応がごく自然で美しい。
(ただ、最後はなぜか明るく終わってしまう…失恋の歌なのに…)
ちなみにこのデンデルは、ベルギー西部を流れる65kmほどの小さな川で、スヘルデ川の支流にあたる。


例によって、大いに想像力をふくらませ、訳してみた。

 〜デンデル川の歌〜

 谷間を抜けて楽しげに
 夏には音も立てずに進む
 清らかなデンデルの流れ
  野原や牧場に沿って波打ち
  花に口づけし岩をかすめる
  清らかなデンデルの流れ

 土手にはヨシが揺れ
 悲しげな歌をひそやかに口ずさむ
 冬、この川辺で
  鳥たちはすでに飛び去り
  不気味な叫びとともに凍りつく
  清らかなデンデルの流れ 

 夢見つつ 岸辺をさまよう
 かつて私は恋するひとの手をとった
 この清らかな川辺で
  夏は私のもとから去ってしまった!
  そして冬…私はひとり歌う
  この清らかな川辺で

 ("DENDERLIEDEKE" Tekst:Emmanuel Hiel)
posted by 小澤和也 at 19:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽雑記帳
この記事へのコメント
さすが!素敵な訳ですね。素晴らしいです(*^ ^*)
Posted by Kleintje at 2011年04月17日 22:54
Kleintjeさん、こんにちは。
お褒めのお言葉ありがとうございます。
フラマン語の芸術を普及させる、という使命を強く意識し始めた頃の気概と初々しさを感じる作品です。
他の歌曲も紹介したいと思います。

またいらしてくださいね。
Posted by ozawa at 2011年04月19日 01:30
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