
8月17日は、わがペーテル・ブノワの誕生日。
(177歳ということになる)
一日中彼の作品を聴き、スコアを読んで過ごす。
そして今日は、世界的にはほとんど知られていないこの愛すべき巨匠について、朝からツイッターでつれづれなるままに呟いてみた。
まずは、簡単なプロフィールから。
1)1834年ベルギー・ハレルベーケ(フランデレン)生まれの作曲家・
教師。ブリュッセル音楽院に学ぶ。1857年カンタータ「アベルの殺害」
でベルギー・ローマ大賞受賞。ドイツ、ボヘミアに留学。その後オペラ
作曲家を志しパリへ出るも成功せず、アントウェルペンへ戻る。
2)→1867年、アントウェルペンに音楽学校を設立。《当時国内で優位
であった仏語でなく》フラマン語による音楽教育の確立のために尽力す
る(1898年、この学校は王立フランデレン音楽院に昇格)。1893年、フ
ラームス歌劇場を設立。1901年、アントウェルペンにて死去。
3)ブノワはその後半生を母国語での音楽教育に捧げたため、没後はナ
ショナリストのレッテルを張られてしまうことになります。また教育者
としてのイメージが先行して、ベルギー国内ですら「誰もが名前は知っ
てるけど作品は知らない」という状況です。
4)→実際、彼の中〜後期作品にはオラトリオ「スヘルデ川」、劇音楽
「ヘントの講和」、カンタータ「フランデレン人の芸術の誇り」(副題
:ルーベンスカンタータ)や多くの子供カンタータなど、教育的・啓蒙
的な作品が多いのは確かです。ずばり「我が母国語」なんてタイトルの
歌曲もあります。
5)→しかし彼の作品はそれだけではありません。パリ時代を含む20〜
30代に書かれた「宗教曲四部作」や「フルートと管弦楽のための交響詩
」「ピアノと管弦楽のための交響詩」(いずれも実質は協奏曲)など、
ナショナリズムの色眼鏡にとらわれずにもっと広く聴かれていい佳品が
あるのです。
次に、現在聴くことのできる数少ない音源から、僕の好きな作品をいくつか紹介。
6)【ミサ・ソレムニス】1860年パリで作曲。宗教曲四部作の第2曲。
僕が初めて聴いたブノワ作品。最大の特徴は彼が好んで用いた大小の二
重合唱。全編美しい旋律と豊かなハーモニーに満ちた名作。ラハバリ指
揮BRTNフィル、ジョージ(T) ベルギーTALENT/DOM2910 88
7)【フルートと管弦楽のための交響詩】1865年作曲。生地ハレルベー
ケの古い伝説にインスパイアされた幻想的な響きと土の香り、華麗な技
巧。数少ないロマン派の管楽器協奏曲の名品。デフレーセ指揮王立フラ
ンダースフィル、ファン・リート(fl) MARCO POLO/8.223827
8)【ルーベンスカンタータ】1877年作曲。生誕300年を迎えた著名な
画家の名の下に、フランデレン芸術の偉大さを高らかに歌う。大衆のた
めの共同体芸術的大作。作風は平明。児童合唱の歌う「カリヨンの歌」
が感動的。デ・フォホト指揮王立オペラ管弦他 ベルギーEUFODA/1158
9)彼の作曲スタイルはその生涯の中で様々に変化を遂げる。初期のピ
アノ曲などはショパン風。充実期においてはメンデルスゾーンやヴェー
バーの影響を感じさせる。その後大胆な非古典的和声を多用する時期を
経て、啓蒙的でシンプルな作風に到達するのだ。先のミサや協奏曲は充
実期の作品だ。
10)そして彼には、ミサと同時期に書かれた「レクイエム」があります
。市販の音源は無く、本国でも数回しか演奏されていませんが、これが
とても美しい作品なのです。二重合唱+少年合唱の清澄な響き、神秘的
なホルンソロ…これらブノワ作品を日本で演奏したい〜これが僕のライ
フワークです。
ささやかなる拙文だが、これからブノワが少しずつでも知られていくようになればと願う。
いま、これを書きながら、彼の中期の大作、カンタータ「スヘルデ川」を聴いている。
テキストはもちろんフラマン(オランダ)語。
ドナウといい、ヴルタヴァ(モルダウ)といい、川というものはやはりアイデンティティの象徴なのだなと、改めて感じている。
Gefeliciteerd met je verjaardag, Peter!

