
(続き)
山枡信明さんのリサイタル、
後半のプログラムはまず、日本歌曲でスタート。
「箱根八里」が始まるとすぐに、客席の空気が一気に和んだ。
瀧廉太郎、山田耕筰、そして平井康三郎の作品から、
「荒城の月」「この道」「平城山」など、馴染み深い名曲の数々。
中でも山田耕筰の「野薔薇」に感動。
…何て美しい詩、そしてメロディ!
野ばら 野ばら かしこき野ばら
神の聖旨(みむね)を あやまたぬ
曠野(あらの)の花に 知る教え
かしこき野ばら
(三木露風作詩、上記は歌の二番)
そして平井康三郎の「平城山」と「九十九里浜」、
この2曲はいずれも、北見志保子の短歌に曲が付けられている。
聴きながら、平井秀明氏(お孫さん)の曲を思い出していた。
彼のオペラ『かぐや姫』『小野小町千年の恋』では、平安朝期に詠まれた短歌がアリアのテキストになっているのだ。
(あれはお祖父様譲りのスタイルだったのだな…)
さて、この日手にしたパンフレット、
山枡さんのこだわりが随所に見られる。
冊子の内容はテキストとその対訳が中心である。
開演前のアナウンスでも
「パンフレットをご覧になりながらお楽しみください」との案内が。
そう、山枡さんは「言葉を伝えること」に意を尽くしていらっしゃるのだ。
そして…
さらなるこだわりが、印刷のレイアウトと紙質。
曲の途中でページをめくる必要がほとんど無いように組まれている。
加えて、めくっても音が出にくい厚手の紙なのだ。
聴衆へのこうした細かい気配りが有り難い。
最後はブラームスの歌曲。
まず歌われた「ジプシーの歌」は、オリジナルが混声合唱曲である。
実は…僕はこの作品を大学の合唱団で歌っているのだ。
懐かしい気持ちでいっぱいになりながら聴く。
そして、トリは「郷愁 2」と「永遠の愛」。
名歌の夕べを締めるに相応しい、確信に満ちた歌唱であった。
アンコールは「椰子の実」と「楽に寄す」。
日本を離れてドイツで活動されている山枡さんの心境、
そして、親愛なる音楽への尽きぬ感謝の思いが溢れる二曲であった。
最後まで、品格のある素晴らしい選曲に感動…
終演後のロビーで、山枡さんと対面した。
初めてなのに…
なぜかお互いにガッチリと握手。
今宵の感謝の気持ちを伝え、会場を後にした。
(了)

